子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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日本の昔話 5 より 『西の狩人と東の狩人』
むかし、土佐の国の、西と東に狩りの名人がいました。

ある日、西の狩りの名人が、東の狩りの名人を訪ねていき、狩りに誘いました。東の狩りの名人は早速誘いに乗りました。そして、いつも泊まる寝床である岩屋に泊りました。

東の狩人は西の狩人に、遠くからやってきたのだからさぞ疲れただろうといって、西の狩人を先に寝かせました。西の狩人は寝たふりをして様子を見ていました。

東の狩人は、火にあたりながら、たばこを吸っています。そのうち岩屋の入り口に、女の帯のようなものがするするとおりてきます。東の狩人は、たばこの煙を、岩屋のふちに吐き出すと、長いものはあがっていきました。

長い帯のようなものは、あがったり下りたりを繰り返します。やがて夜明けが近づいて、長い帯のようなものはおりてこなくなりました。

まもなく、東の狩人が西の狩人を起こし、真夜中に何やら奇妙なものが岩屋の入り口に下りてきたが、あれは何だと尋ねましたが、東の狩人は答えませんでした。

ふたりは一日獲物を追いました。ふたりとも名人だけあって、たくさんの獲物をしとめました。西の狩人は、もう帰らなければならないといいました。そして来年の十二月の中ごろにまた来ると約束をし帰っていきました。



さて、次の年の十二月になりました。東の狩人は約束の日が近づいたので、ひとりで山に入り岩屋で待ちました。西の狩人は二日遅れていきましたが、東の狩人はいませんでした。

あたりを探し回ったところ、岩屋の奥からかすかに人の声がします。耳を澄ますと声はこういっています。

「西の名人よ遅かったな。おれは大蛇に飲まれてしまった。おれの仇を討ってくれ。この岩屋から一町(約100m)ほど下ると別の岩屋がある。大蛇はそこにいるから俺がおういといったら、岩屋の中に一発ぶち込んでくれ」

西の狩人はいわれた通りに下の岩屋に行って鉄砲に弾を込めて待ち構えました。そして「おうい」という声がしたのでずどんと一発岩屋に打ち込みました。

山が割れるような音がして何か大きなものが谷へ転がり落ちていきました。

西の狩人が後を追うと谷底には大きな大蛇が死んでいます。西の狩人は仇を打ち終わると、さっき鉄砲を撃った岩屋に戻りました。

すると岩谷の中からひそひそ声が聞こえてきます。死んだ大蛇の声のようです。

「わたしは西の狩人に命をとられた。おまえたち子ども二人でかたきを討ってくれ。まず巡礼に化けて、大みそかの晩に西の狩人の家にいき、『宿を貸してくれ』といって泊まり、すきを見て仇を討つのだ」と子供に言い聞かせているところでした。

西の狩人は急いで山を下り、東の狩人の家により、東の狩人の女房にありのままを伝え、自分の家に帰りました。



さて大晦日になりました。西の狩人は女房子供を親の里に逃がし、それから家の周りに干し草を積み、戸は全部釘付けにし、入り口だけを開けて待っていました。

日が暮れると、ふたり連れの巡礼がやってきました。巡礼は「旅の者ですが、暗くなって先へ行くことができません。今夜は大晦日なので、どこへ行っても泊めてもらえません。どうか、ひと晩泊めてください」と宿をたのむと、西の狩人は二人を中へ入れました。

囲炉裏に薪をくべて、どんどん火をおこし、ごちそうを食べさせ、よもやま話をしていると、夜も次第に更けてまいりました。そこで西の狩人は二人を寝かせました。

ふたりは寝床で何かひそひそ話をしています。西の狩人がわざと二人に聞こえるように「夜遅くなって寒くなるかもしれん。たきぎをとってこよう」と独り言をいうと家を出ました。外へ出るとすぐに入り口を釘付けにして、家の周りの干し草に火を放ちました。火はたちまち広がって大火事になりました。

村の人が集まってきて火を消そうとします。しかし西の狩人は、考えがあるから消さないでくれとたのみました。家はみるみるうちに丸焼けになりました。

西の狩人は村人にわけを話すために寝床の辺りの灰をかき分けました。そこには大蛇の骨が二つ並んで残っていたということです、と物語は結ばれます。



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正直言ってこの物語よくわかりませんでした。お話し序盤、東の狩人が岩屋の入り口を上り下りする女の帯のようなものとは大蛇の化身なのでしょうか。

果たして大蛇とするなら大蛇と東の狩人との関係はいかに。そこの辺りのことが書かれていません。とりあえず物語のアウトラインを記すことだけにとどめます。



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18:15 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
日本の昔話 5 より 『猫と鉄びんのふた』 化け猫のお話し
むかし、ある村に、古くから名の知れた旧家がありました。この家には三代の主人にかわいがられてきた年寄りの三毛猫がいました。

今の主人は、狩りが好きで、村から谷を七つ、山を八つも超えた遠くの山までよく出かけて、鹿狩りや猪狩りをしました。



ある晩遅く、主人は、一人で囲炉裏端に座り、あした鹿狩りに使う、矢の矢じりを研いでいました。

するといつの間に来たのか、三毛猫がそばにうずくまり、矢を研ぐのにじっと見ていました。そして矢を一本研ぎ終わるたびに、こっくりとうなずきました。

「おかしな猫だな」主人はそう思いながら矢を十二本研ぎ終わりました。「さあ、これで全部済んだ」主人がそう言うと、猫はのっそりと土間に下り、外へ出ていきました。

猫が出ていくと、主人はもう一本隠し矢を取り出して、研ぎ澄まし、それを十二本の矢と一緒に矢袋におさめました。



次の朝、主人はまだ夜の明けきらないうちに、ただ一人で家を出て山奥へ狩りに出かけました。しかしその日はどうしたわけか一匹の獲物にも出会いません。とうとう日が暮れてきたので山小屋に泊まることにしました。

ところが夜中に小屋の戸をどんどんどんどんたたく音で目が覚めました。戸を開けると、長年、自分の家で雇っているばあさんが立っています。

「なんだ、ばあさんか。今頃何の用だ」主人は尋ねました。ばあさんは「奥さまが夕方からひどい熱でお苦しみじゃ。奥さまの言いつけで旦那様を迎えに来た」といいました。

「そうか、ご苦労だったな。ではこれからすぐ帰ることにしよう」主人はそう言って山小屋を出ましたが、どうも腑に落ちません。この真夜中にばあさんひとりでこんな山奥に来るなんて…。

そこで主人はばあさんに「おまえ、わしの前を歩いてくれ」といいました。するとばあさんは「いえいえ旦那さまが先に」というではないですか。それでも主人は嫌がるばあさんを先に歩かせました。



道々主人は、何かおかしい、「これは何者かがばあさんに化けて、わしの命を狙っているに違いない」と思いました。そこで思い切ってばあさんの後ろから矢を射かけてみました。

矢はばあさんにあたりましたがカァーンと音を立てて跳ね返されてしまいました。主人は矢を次々に放ちました。そして十二本の矢が跳ね返されたとき、ばあさんは大きな三毛猫の化けものになって主人に襲い掛かってきます。

主人は素早く身をかわし、隠し矢を取り出すと化け猫の心臓めがけて矢を放ちました。「ぎゃあっ」化け猫はすさまじい叫び声をあげて、闇の中に姿を消しました。主人があたりの草むらを見渡すと、古びた鉄瓶の蓋がひとつ転がっていました。

主人は「なるほど、化け猫め、この鉄瓶の蓋で矢を受け止めていたのか」といまさらながら驚きました。そして化け猫の息の根を止めなくては安心できないと思って、血の跡をたどって山を下りました。

血の跡は点々と続き、自分の家の門を入って行きます。なおもたどっていくと、血の跡は裏の縁の下に続いていました。

そこをのぞいてみると何と人の骨が山と積まれ、そのうえで長年飼っていた年寄りの三毛猫が、矢に胸を射抜かれて死んでいました。

このことがあってから「猫は三代飼わぬもの」といわれるようになったとさ、と物語は結ばれます。



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猫はペットとしておなじみですが、猫を異界の存在とする物語は洋の東西を問わずあります。化け猫は日本の妖怪の一種ですね。不思議と同じくペットでおなじみの犬に関しては、そのような物語は見かけません。

物語の形式は言い伝えというか伝説になるのでしょうか



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19:41 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
日本の昔話 5 より 『炭焼き小屋のあねさま』 つい気を許すものには注意せよ
短いお話です。



むかし、炭を作るため、若い男十人に、年寄りが二人がついて一緒に山に入りました。男たちは六人ずつに分かれ、それぞれの炭焼き小屋で、何日も炭焼きの仕事を続けました。



ある晩、仕事が済んだ後、片方の小屋の男たちが酒を飲んでいると、外から、「もし、わたしにもお酌をさせてください」という女の声がしました。

戸を開けてみると、あねさまが一人立っていました。若い男たちは喜んで、「さあ、入れ入れ。入って酌をしてくれ、あねさま」といいました。

それを見た年寄りの男は、「いまどき若い女がひとりで来るのは腑に落ちない。こいつはあやしいやつに違いねえ」と思ったので、若い男たちに、「おまえたち、やめろやめろ」といいました。けれども、誰も年寄りのいうことに耳をかしません。女を中に入れ、酒の酌をさせました。



やがて夜も更ける頃、若い男たちはみんな、酒に酔いつぶれて、眠ってしまいました。年寄りの男も横になっていたのですが、女一人起きている様子なので、眠ったふりをしていました。

そのうち女は、戸口に一番近いところに寝ている若い男の上に覆いかぶさると、男の口に自分の口を押し付けました。そのとたん男は苦しそうにうめきましたが、すぐにそのうめき声もやみました。

女は二番目の男にも同じことをしました。この男も苦しそうにうめきましたが、すぐに静かになってしまいました。

さてはあいつ、若い衆たちの舌をかみ切って殺したな。年寄りの男はまさかりの柄を握りしめて、「おれのところに来たらぶち殺してやる」と待ち構えました。

女は、次々に五人の男たちの舌をかみ切って、年寄りの男に近づいてきます。いよいよ自分にのしかかろうとしたとき、年寄りの男は、まさかりで力任せに女の脳天をたたきつけました。

「ぎゃあっ」女はものすごい叫び声をあげて、戸口から飛び出していきました。



年寄りの男は、夜が明けるのを待って、急いでもう一つの炭焼き小屋の男たちをよびに行き、一緒にあたりを探してみました。すると小屋の近くの草むらに、大きな狸が、頭をざっくり割られて死んでいましたとさ、と物語は結ばれます。



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たぬきは世界的に生息域が狭いので日本の昔話に特有の動物です。そして人を良くだまします。

つい、気を許すものには注意せよ、といったところでしょうか。



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18:20 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
日本の昔話 5 より 『猟師とせんぐり食い』 山じいのお話し
むかし、あるところにひとりの猟師がいました。



ある日のこと、猟師は鉄砲を担いで山奥に入り、いのししの通う道で待ち伏せをしていました。

やがて日が暮れて辺りがすっかり暗くなると物干しざお位もある太いミミズがにょろりとはい出しました。

「おや」

猟師は見ているとみみずの後ろから畳一枚もありそうな大きなガマガエルがのっそりあらわれて、みみずを飲み込んでしまいました。


「おやおや」

猟師は目を見張ると、今度は胴回りが一抱えもあるような大蛇が、ぬうっと出てきて、ガマガエルを飲み込んでしまいました。

「不思議なことがあるものだ」

猟師がそう思ったところに、小山のようないのししが飛びだしてきて、大蛇を食ってしまいました。

猟師はいのししを見て、「こいつはいい獲物だ」と鉄砲をかまえました。けれどもすぐに思いとどまりました。

「こいつは、弱い順に食われていく先繰り食いなのだ。すると俺がいのししをを殺せば、次にはおれが何者かに殺されるに違いない」猟師は鉄砲を下ろしました。

その時どこからか、「鉄砲打ち、良い分別」という声がしました。気が付くと、いつの間にか夜が明けていました。



それから何日かたって、猟師はまた山に入りました。山であやしいものが出たときの用心に、くろがね弾という、お経の字を鋳込んだ特別な弾を鉄砲に込めていきました。そうして夜っぴでいのししを待ち伏せていると、山じいが現れました。

山じいは、「鉄砲打ち。何かいい獲物はないか」といって、大きな口をあんぐり開けました。その声はこの間どこからか聞こえた声と同じでした。

猟師は考えました。「山じいは、おれが何も獲物はないと答えれば、おれをとって食うに違いない」

そこで猟師は、すかさず山じいの口の中に、くろがね弾をずどんと打ち込みました。山じいは、「わっ」と叫ぶと、口から血を吐きながら山奥に逃げていきました。



猟師は山じいのあとをつけていくと、大きな洞穴があり、中から話し声が聞こえてきました。

「わしはもう駄目だ。あの鉄砲打ちをとって食おうとしたが、反対にくろがね弾を打ち込まれた。もう助からん」すると別の山じいの声が、「おれがきっとかたきを討ってやる」といいました。

猟師はそれを聞くとすぐ家に取って返し、女房と子供を逃がしてやりました。そしてひとりで山じいを待ちかまえました。



まもなく、美しいあねさまが訪ねてきました。あねさまは、「わたしをあなたの嫁にしてください」といいました。

猟師は「そうか、それはありがたい。だが、おれの女房になるものは、この家のことを良く知っておいてほしいので、家の周りを三べんまわってもらいたい」といって、あねさまに家の周りを三べんまわらせました。

そして三べん目にあねさまをくろがね弾で狙い撃ちしてみると、倒れたあねさまはみるみると正体をあらわして、山じいになったということです、と物語は結ばれます。



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主人公の猟師は知恵者です。山じいは昔話を読み始めてから、3回目の登場です。”山じい”でブログ内検索してみてください。いずれも猟師を主人公としたお話です。

山じいは山姥の男版といったところでしょうか。ウィキを読んでみると(山爺)その存在の輪郭がよく知れるでしょう。



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19:14 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
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