日本の昔話 5 より 『竜宮女房』 神さまはいつでも見ている
2019.08.25 Sunday
むかし、ある海辺の村に、年をとった父親と息子が住んでいました。
年の暮れになったのに、何も食べるものがないので、息子は裏山の木を切って、大みそかの街に売りに行きました。
けれども乾いていない生木なのでちっとも売れません。息子が途方に暮れて歩いていると、向こうから魚売りが来ました。
魚売りは息子の青い顔を見てわけを聞くと、息子は、正月の買い物をしようとたきぎを売りに来たのに、一本も売れないのだと事情を話しました。
すると魚売りは、それなら自分の魚と取り換えてやるといいます。息子はやれやれ助かったと胸をなだめおろしました。
息子は魚を担いで家に帰ろうとしました。ところが途中で背中の魚が騒ぎ出しました。あんまり騒ぐので、とうとう息子は魚を海に逃がしてやりました。
家では年とった父親が火をおこして息子の帰りを待っていました。しかし息子は手ぶらです。息子は父親に、魚を逃がしてやったとわけを話しました。父親は少しも怒らず、それはよかったといいました。
その晩のことです父親と息子が何も食べるものもなく黙って火にあたっていると、トントンと戸をたたく音がして、美しい若い女の人が入ってきました。そして「どうぞわたしをここの嫁にしてください」といいました。
むすこは「うちは貧しくて、正月の用意もできないくらいだから、とても嫁を迎えることなんてできない」と断りました。
ところがその若い女の人は手を三べん打ちました。すると外には米俵三俵が積んであって、これで正月の米ができてしまいました。父親と息子は、大喜びでその女の人を嫁に迎えました。
やがて、このことは、殿さまの耳にも入りました。殿さまは息子を呼び出して「この国で、誰も織ったことがないような布を、おまえの嫁に織らせてみろ」といいました。それを聞いた嫁はたちまち見事な反物を出しました。
殿さまは、その見事な布を見て、何としても布を織った人に会いたくなり、父親と息子と嫁を呼び出しました。
すると殿さまは、今まで見たこともないほど美しい嫁を見て、どうしても自分の嫁にしたくなり、息子に向かっていいました。「この女は私がもらう。もし嫌なら直ちに千俵の米俵を積め」といいます
息子と父親が困っていると、嫁は手を三べん打って、たちまち千俵の米俵を積み上げました。
殿さまは、それを見て、なおのこと息子の嫁が欲しくなり、「嫁を差し出すのが嫌なら、この世にないものを持って来い」と息子にいいました。
すると嫁は手を三べん打って、たちまち鼻の長い化けものや、一つ目の化けものををぞろぞろ出して、殿さまを家来ものとも飲み込んでしまいました。
その女の人は、息子が助けた魚のお礼に、竜宮の神様がよこされたお使いだったということです、と物語は結ばれます。
昔話や伝説によくある、謎の俯瞰者が登場するお話しの類型といえるでしょう。主人公はずっと試されているのです。
息子はよい行いをして福を得ました。一方、殿さまは、その強欲から化けものに飲み込まれてしまいました。
神さまは、我々の行いを、いつも見ているといったところでしょうか。
年の暮れになったのに、何も食べるものがないので、息子は裏山の木を切って、大みそかの街に売りに行きました。
けれども乾いていない生木なのでちっとも売れません。息子が途方に暮れて歩いていると、向こうから魚売りが来ました。
魚売りは息子の青い顔を見てわけを聞くと、息子は、正月の買い物をしようとたきぎを売りに来たのに、一本も売れないのだと事情を話しました。
すると魚売りは、それなら自分の魚と取り換えてやるといいます。息子はやれやれ助かったと胸をなだめおろしました。
息子は魚を担いで家に帰ろうとしました。ところが途中で背中の魚が騒ぎ出しました。あんまり騒ぐので、とうとう息子は魚を海に逃がしてやりました。
家では年とった父親が火をおこして息子の帰りを待っていました。しかし息子は手ぶらです。息子は父親に、魚を逃がしてやったとわけを話しました。父親は少しも怒らず、それはよかったといいました。
その晩のことです父親と息子が何も食べるものもなく黙って火にあたっていると、トントンと戸をたたく音がして、美しい若い女の人が入ってきました。そして「どうぞわたしをここの嫁にしてください」といいました。
むすこは「うちは貧しくて、正月の用意もできないくらいだから、とても嫁を迎えることなんてできない」と断りました。
ところがその若い女の人は手を三べん打ちました。すると外には米俵三俵が積んであって、これで正月の米ができてしまいました。父親と息子は、大喜びでその女の人を嫁に迎えました。
やがて、このことは、殿さまの耳にも入りました。殿さまは息子を呼び出して「この国で、誰も織ったことがないような布を、おまえの嫁に織らせてみろ」といいました。それを聞いた嫁はたちまち見事な反物を出しました。
殿さまは、その見事な布を見て、何としても布を織った人に会いたくなり、父親と息子と嫁を呼び出しました。
すると殿さまは、今まで見たこともないほど美しい嫁を見て、どうしても自分の嫁にしたくなり、息子に向かっていいました。「この女は私がもらう。もし嫌なら直ちに千俵の米俵を積め」といいます
息子と父親が困っていると、嫁は手を三べん打って、たちまち千俵の米俵を積み上げました。
殿さまは、それを見て、なおのこと息子の嫁が欲しくなり、「嫁を差し出すのが嫌なら、この世にないものを持って来い」と息子にいいました。
すると嫁は手を三べん打って、たちまち鼻の長い化けものや、一つ目の化けものををぞろぞろ出して、殿さまを家来ものとも飲み込んでしまいました。
その女の人は、息子が助けた魚のお礼に、竜宮の神様がよこされたお使いだったということです、と物語は結ばれます。
昔話や伝説によくある、謎の俯瞰者が登場するお話しの類型といえるでしょう。主人公はずっと試されているのです。
息子はよい行いをして福を得ました。一方、殿さまは、その強欲から化けものに飲み込まれてしまいました。
神さまは、我々の行いを、いつも見ているといったところでしょうか。
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