日本の昔話 5 より 『岩くだき堂せおい知恵もん』 なぜ鬼は最終的に退治されないのか
2019.04.28 Sunday
むかし、ある山に、おそろしく大きな鬼がいました。鬼は毎晩のように人里に下りてきて、子どもをさらっていきました。
村人たちは、今日こそは我が子がさらわれるんじゃないかと心配していました。そこで、隣村の、岩くだきと、堂せおいと、知恵もんの三人の男にたのんで、鬼退治をしてもらおうということになりました。
岩くだきは、げんこつで岩を砕く腕っぷしの強い男です。堂せおいは、お堂を軽々と背負って歩く力持ちです。知衛もんは力も強いが知恵のある男です。三人は鬼退治をたのまれると、さっそく相談を始めました。
知恵もんは「鬼の通り道に鉄の門をこしらえて、その上に大きな石を乗せ、鬼が門を破ろうものなら石が鬼の上にら落ちるようにして、鬼が弱ったところを三人でやっつけたらどうだろう」と提案しました。
しかし岩くだきも堂せおいも「石などいらん。おれが門が中にいてひとりでやっつけてやる」と意地を張りました。そこで知恵もんは、鬼の通り道に三つの門をこしらえることにしました。
一の門には岩くだきが構え、二の門には堂せおいが構え、三の門には知恵もんが門に石を乗せ自慢の刀を構えて鬼を待ちました
夜になるとやっぱり鬼がやってきました。鬼は一の門の前に来ると大きな声で、「おれが通るのを邪魔するやつは誰だ」と怒鳴りました。そして鉄の門を押し開け、中にいた岩くだきをわしずかみにして丸のみにしてしまいました。
鬼はすぐに二の門のまで来ると大きな声で、「おれが通るのを邪魔するやつは誰だ」と怒鳴りました。そして鉄の門を押し開けて、中にいた堂せおいをわしずかみにして丸のみしてしまいました。
それから鬼は三の門まで来ると大きな声で、「おれが通るのを邪魔するやつは誰だ」と怒鳴りました。そして鉄の門を押し開けようとしますが、とたんに大きな石が鬼の上に落ちてきました。鬼は石につぶされて血だらけになって逃げだしました。
知恵もんは刀を振り上げて追いかけました。けれども道が二股に分かれるところでとうとう見失ってしまいます。知恵もんは鬼がたらした血の後をたどっていきました。
鬼は沼のほとりで頭を抱えて座り込んでいました。知恵もんは、この時とばかりに鬼を刀でひと突きにしようとすると、鬼は「これからは悪いことをしないから、どうか命ばかりは助けてくれ」と何度もたのみます。
知恵もんは「それなら岩くだきと堂せおいを返すか」というと鬼はグーッと息を吸い込んでガーッと岩くだきと堂せおいを吐き出しました。そして命からがら山の奥に逃げていきました。
それからというもの鬼は人里にあらわれなくなったので、村の人々は安心して暮らすことができました、と物語は結ばれます。
昔話というものは、三という数字を大切にします。三番目の登場者、あるいは三人兄弟の末っ子など。この物語では、知恵もんがこれにあたります。知恵もんは鬼退治において三番目の登場者であり、主役です。
また鬼という存在は日本の昔話において特別な存在です。西洋なら悪魔がこれに近いのでしょうか。
鬼でも悪魔でも、基本的には人間に害をもたらす存在ですが、民話全体の個々のお話を俯瞰してみると、時々善悪両方の属性を持った両義的存在として描かれることもあります。
こういったことをベースにして鬼や悪魔の登場する物語を読むと、深読みができて物語にも厚みが生まれます。
例えばこの物語では積極的な鬼の善行は見られませんが、最終的には鬼を完全に退治されず、逃がしてもらっています。
なぜ鬼を逃がしてしまうのか。それに対する答えを考えてみました。知恵もんは民話の中での鬼に対するイメージを完全に体現していて、鬼にも善にくみする存在意義を与えているのではないかと思いました。
確かに知恵もんの知恵に耳を貸さなかった岩くだきと堂せおいは、鬼がいましめたことになっています。
村人たちは、今日こそは我が子がさらわれるんじゃないかと心配していました。そこで、隣村の、岩くだきと、堂せおいと、知恵もんの三人の男にたのんで、鬼退治をしてもらおうということになりました。
岩くだきは、げんこつで岩を砕く腕っぷしの強い男です。堂せおいは、お堂を軽々と背負って歩く力持ちです。知衛もんは力も強いが知恵のある男です。三人は鬼退治をたのまれると、さっそく相談を始めました。
知恵もんは「鬼の通り道に鉄の門をこしらえて、その上に大きな石を乗せ、鬼が門を破ろうものなら石が鬼の上にら落ちるようにして、鬼が弱ったところを三人でやっつけたらどうだろう」と提案しました。
しかし岩くだきも堂せおいも「石などいらん。おれが門が中にいてひとりでやっつけてやる」と意地を張りました。そこで知恵もんは、鬼の通り道に三つの門をこしらえることにしました。
一の門には岩くだきが構え、二の門には堂せおいが構え、三の門には知恵もんが門に石を乗せ自慢の刀を構えて鬼を待ちました
夜になるとやっぱり鬼がやってきました。鬼は一の門の前に来ると大きな声で、「おれが通るのを邪魔するやつは誰だ」と怒鳴りました。そして鉄の門を押し開け、中にいた岩くだきをわしずかみにして丸のみにしてしまいました。
鬼はすぐに二の門のまで来ると大きな声で、「おれが通るのを邪魔するやつは誰だ」と怒鳴りました。そして鉄の門を押し開けて、中にいた堂せおいをわしずかみにして丸のみしてしまいました。
それから鬼は三の門まで来ると大きな声で、「おれが通るのを邪魔するやつは誰だ」と怒鳴りました。そして鉄の門を押し開けようとしますが、とたんに大きな石が鬼の上に落ちてきました。鬼は石につぶされて血だらけになって逃げだしました。
知恵もんは刀を振り上げて追いかけました。けれども道が二股に分かれるところでとうとう見失ってしまいます。知恵もんは鬼がたらした血の後をたどっていきました。
鬼は沼のほとりで頭を抱えて座り込んでいました。知恵もんは、この時とばかりに鬼を刀でひと突きにしようとすると、鬼は「これからは悪いことをしないから、どうか命ばかりは助けてくれ」と何度もたのみます。
知恵もんは「それなら岩くだきと堂せおいを返すか」というと鬼はグーッと息を吸い込んでガーッと岩くだきと堂せおいを吐き出しました。そして命からがら山の奥に逃げていきました。
それからというもの鬼は人里にあらわれなくなったので、村の人々は安心して暮らすことができました、と物語は結ばれます。
昔話というものは、三という数字を大切にします。三番目の登場者、あるいは三人兄弟の末っ子など。この物語では、知恵もんがこれにあたります。知恵もんは鬼退治において三番目の登場者であり、主役です。
また鬼という存在は日本の昔話において特別な存在です。西洋なら悪魔がこれに近いのでしょうか。
鬼でも悪魔でも、基本的には人間に害をもたらす存在ですが、民話全体の個々のお話を俯瞰してみると、時々善悪両方の属性を持った両義的存在として描かれることもあります。
こういったことをベースにして鬼や悪魔の登場する物語を読むと、深読みができて物語にも厚みが生まれます。
例えばこの物語では積極的な鬼の善行は見られませんが、最終的には鬼を完全に退治されず、逃がしてもらっています。
なぜ鬼を逃がしてしまうのか。それに対する答えを考えてみました。知恵もんは民話の中での鬼に対するイメージを完全に体現していて、鬼にも善にくみする存在意義を与えているのではないかと思いました。
確かに知恵もんの知恵に耳を貸さなかった岩くだきと堂せおいは、鬼がいましめたことになっています。
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