日本の昔話 5 より 『灰坊』 灰かぶり(シンデレラ)との類似性
2019.01.31 Thursday
むかしオームラの国の殿さまと奥方の間に男の子が生まれました。殿さまはたいそう喜んで、その子を「マミチガネ」と名付けました。けれどもマミチガネが三つの時、奥方が亡くなり、殿さまは新しい奥方を迎えました。
マミチガネが九つになった時、殿さまは、三月の間、江戸に行くことになりました。殿さまは奥方に「留守の間何もしなくていいが、マミチガネの髪だけは毎日すいてやってくれ」といって旅に出かけました。
奥方は殿さまを見送って帰ってくると、今までとは打って変わり、マミチガネにつらく当たりました。マミチガネを毎日休みなく働かせて、髪など一度もすいてやりませんでした。マミチガネの頭にはしらみがいっぱいたかりました。
やがて三月経って殿さまの船が帰る日になりました。マミチガネは奥方に、「お母さん御父さんの船を迎えに行きましょう」といいました。
けれども奥方は「おまえは先に行きなさい。わたしは髪を結って、あとから行きます」と答えました。そしてマミチガネが出かけると奥方はカミソリで自分の顔に傷をつけ、布団をかぶって寝てしまいました。
いくら待っても奥方は船を迎えに来ませんでした。そこでふたりは家に帰ることにしました。家に着くと奥方は寝ていました。
殿さまは奥方にわけを聞くと、「あなたの子供がカミソリで傷をつける。こんな顔では人に見られるのがつらくて、あなたの船を迎えに行けなかったのです」と答えました。
殿さまはこれを聞くと、マミチガネにわけも聞かず、「おまえのような親不孝者はどこへでも落ちていけ」といい、せんべつに三頭の馬のうちから一番良い馬を選び、江戸土産の四枚の美しい着物を与え、家から追い出しました。マミチガネは美しい着物を着て馬に乗り、南のほうへ向かいました。
いくつかの障害も何のその、マミチガネの馬は鞭を当てると飛び越えていきました。そしてとあるおじいさんが粟の草刈りをしているところにでると、この村に雇ってくれるところはないかと尋ねました。
すると西の長者に聞いてみよとのことです。しかしその立派ないでたちでは雇ってはくれないだろうとおじいさんはいいました。
そこでマミチガネはおじいさんに自分の一枚の着物と野良着を交換してもらい、残りの着物と馬の鞍を入れるための唐櫃(からびつ)を貸してもらい、そこに品をおさめ、そして馬は、一回り一里もある広い竹山に放しました。
そしておじいさんにつれられて、西の長者に雇い口を頼むと長者はすぐに雇ってくれました。マミチガネはよく働きました。特に飯炊きの仕事に才を発揮しました。
やがてお祭りの日がやってきました。長者は灰坊(マミチガネ)にあした芝居を見に行くから、早めの朝食と弁当を作るように言いつけて、祭りには供をするように言いつけました。
けれども当日、灰坊は、「きょうは死んだ母親の命日だから喜びの場所には行けない」と断るのでした。長者は灰坊に留守番を頼むと、家中のものを引き連れて祭りに出かけました。
灰坊はみんなが出かけると野良着を脱ぎ、お風呂に入って体を洗い、あのおじいさんの家に行って、預けておいた美しい着物を着て、立派な足駄を履き、竹山の馬を呼んで鞍をかけ、それに乗って芝居に出かけました。
そして、芝居の北側に立つと、「マミチガネの馬の飛ぶのを見よ」と叫んで、馬に一鞭当てました。馬は飛んで芝居の南側に降り立ちました。
さあ芝居を見ていた人々は驚きました。「天の神様が来られた。みんな立って拝め」と大騒ぎです。みんなして灰坊を拝みました。
ところが長者の一人娘だけが「あれはうちの灰坊ですよ」といいました。長者はそれを聞いて「なんと無礼な。早く拝みなさい」とたしなめました。娘はくすくす笑いながら拝みました。
灰坊はみんなより先に帰って元のいでたちに戻り、火ふき竹を枕に寝ていました。
やがて長者が帰ってきて灰坊に門を開けさせて、「おまえもつれていけばよかった。今日は天の神様が芝居の場に来られたので、みんなで拝んだんだ」といいました。
灰坊は「そんなことがあったのですか。それなら私もつれていっていただければよかったですね」と答えると、長者は、「あさってまた芝居がある。おまえも供をせよ」といいました。
しかし、またしても 灰坊はその当日「きょうはわたしの死んだじいさんの命日だから、喜びの場所には行けない」と答えました。長者は灰坊を一人残し家中のものを引き連れて出かけました。
すると灰坊は、この前と同じように着替えて芝居に出かけようとしますが、長者の一人娘が草履を忘れたといって戻ってきたので、仕方なく彼女も馬に乗せて芝居に向かいました。
そして芝居の東側に立つと、「マミチガネの馬の飛ぶのを見よ」と叫んで馬に一鞭当てると馬は飛んで芝居の西側に降り立ちました。
芝居を見ていた人々はみんな立ち上がり「きょうは神様が夫婦でおいでになったぞ」と喜び拝みました。
そして灰坊と長者の娘はみんなより先に帰りました。灰坊はまた同じように寝ていました。長者の娘は腰が痛むといって奥座敷にこもりました。
長者は帰ってくると、娘の様子を案じて、医者を呼ぼうとしますが、娘は巫女を呼んでくれといいます。やってきた巫女は「雇人の中に娘と縁があっての病です。その男に出会えば娘さんの病は治るでしょう」と答えました。
長者は、汚らしい灰坊以外の男を娘と合わせますが、誰も娘の病を治すことができませんでした。
そこへ、ただ一人残った灰坊は、自分の美しい着物を着ると娘に会いに行きました。すると娘の病はたちまち治ってしまいます。長者は自分の人を見る目のなさを詫び、マミチガネを一人娘の婿に請いました。こうしてマミチガネと長者の娘の祝言が行われました。
やがてマミチガネは馬に乗って結婚を知らせに親見舞いに出かけます。妻は「馬の鞍に桑の実が落ちてくるけれど、どんなにのどが渇いても決して桑の実を食べてはいけない。食べてしまえばもうお互いに見ることはできなくなる」とマミチガネに注意します。しかし、マミチガネは、どうしてものどの渇きを我慢できず桑の実を食べて死んでしまいます。
馬は、マミチガネを乗せたまま、生まれ育ったオームラの殿さまの家にたどり着きました。馬は三度いななきます。
殿さまは、それを聞いて、あれはマミチガネの馬だと気づき、奥方を見に行かせると馬は奥方を食い殺してしまいました。
マミチガネの妻は、夫が帰ってこないので、きっと桑の実を食べて死んでしまったのだろうと思い、死者を生き返らせる「しじゅるの水」を三合買うと、夫を探しに出かけました。
妻は夫の家にたどり着くと夫をしじゅるの水で拭いて生き返らせました。ふたりはそろって、西の長者の家にかえりました。そして今が今でもよい暮らしをしている、と物語は結ばれます。
あらすじだいぶ端折ってます。興味がある方はオリジナルをどうぞ。
細部は異なるものの、広い地域で、古くから伝えられる民話群の一つです。有名なものには、グリム童話(KHM21)『灰かぶり』(シンデレラ)があります。これらの物語群はグリム兄弟以前にもパターンを少しづつ変えながら採録されています。
シンデレラの日本版男性編といえばわかりやすいでしょうか。悪い継母に、継母の言いなりの父親が登場しおなじみの展開を見せます。この日本版シンデレラの主人公は、自分の運命を切り開く態度において、より積極的です。
マミチガネが九つになった時、殿さまは、三月の間、江戸に行くことになりました。殿さまは奥方に「留守の間何もしなくていいが、マミチガネの髪だけは毎日すいてやってくれ」といって旅に出かけました。
奥方は殿さまを見送って帰ってくると、今までとは打って変わり、マミチガネにつらく当たりました。マミチガネを毎日休みなく働かせて、髪など一度もすいてやりませんでした。マミチガネの頭にはしらみがいっぱいたかりました。
やがて三月経って殿さまの船が帰る日になりました。マミチガネは奥方に、「お母さん御父さんの船を迎えに行きましょう」といいました。
けれども奥方は「おまえは先に行きなさい。わたしは髪を結って、あとから行きます」と答えました。そしてマミチガネが出かけると奥方はカミソリで自分の顔に傷をつけ、布団をかぶって寝てしまいました。
いくら待っても奥方は船を迎えに来ませんでした。そこでふたりは家に帰ることにしました。家に着くと奥方は寝ていました。
殿さまは奥方にわけを聞くと、「あなたの子供がカミソリで傷をつける。こんな顔では人に見られるのがつらくて、あなたの船を迎えに行けなかったのです」と答えました。
殿さまはこれを聞くと、マミチガネにわけも聞かず、「おまえのような親不孝者はどこへでも落ちていけ」といい、せんべつに三頭の馬のうちから一番良い馬を選び、江戸土産の四枚の美しい着物を与え、家から追い出しました。マミチガネは美しい着物を着て馬に乗り、南のほうへ向かいました。
いくつかの障害も何のその、マミチガネの馬は鞭を当てると飛び越えていきました。そしてとあるおじいさんが粟の草刈りをしているところにでると、この村に雇ってくれるところはないかと尋ねました。
すると西の長者に聞いてみよとのことです。しかしその立派ないでたちでは雇ってはくれないだろうとおじいさんはいいました。
そこでマミチガネはおじいさんに自分の一枚の着物と野良着を交換してもらい、残りの着物と馬の鞍を入れるための唐櫃(からびつ)を貸してもらい、そこに品をおさめ、そして馬は、一回り一里もある広い竹山に放しました。
そしておじいさんにつれられて、西の長者に雇い口を頼むと長者はすぐに雇ってくれました。マミチガネはよく働きました。特に飯炊きの仕事に才を発揮しました。
やがてお祭りの日がやってきました。長者は灰坊(マミチガネ)にあした芝居を見に行くから、早めの朝食と弁当を作るように言いつけて、祭りには供をするように言いつけました。
けれども当日、灰坊は、「きょうは死んだ母親の命日だから喜びの場所には行けない」と断るのでした。長者は灰坊に留守番を頼むと、家中のものを引き連れて祭りに出かけました。
灰坊はみんなが出かけると野良着を脱ぎ、お風呂に入って体を洗い、あのおじいさんの家に行って、預けておいた美しい着物を着て、立派な足駄を履き、竹山の馬を呼んで鞍をかけ、それに乗って芝居に出かけました。
そして、芝居の北側に立つと、「マミチガネの馬の飛ぶのを見よ」と叫んで、馬に一鞭当てました。馬は飛んで芝居の南側に降り立ちました。
さあ芝居を見ていた人々は驚きました。「天の神様が来られた。みんな立って拝め」と大騒ぎです。みんなして灰坊を拝みました。
ところが長者の一人娘だけが「あれはうちの灰坊ですよ」といいました。長者はそれを聞いて「なんと無礼な。早く拝みなさい」とたしなめました。娘はくすくす笑いながら拝みました。
灰坊はみんなより先に帰って元のいでたちに戻り、火ふき竹を枕に寝ていました。
やがて長者が帰ってきて灰坊に門を開けさせて、「おまえもつれていけばよかった。今日は天の神様が芝居の場に来られたので、みんなで拝んだんだ」といいました。
灰坊は「そんなことがあったのですか。それなら私もつれていっていただければよかったですね」と答えると、長者は、「あさってまた芝居がある。おまえも供をせよ」といいました。
しかし、またしても 灰坊はその当日「きょうはわたしの死んだじいさんの命日だから、喜びの場所には行けない」と答えました。長者は灰坊を一人残し家中のものを引き連れて出かけました。
すると灰坊は、この前と同じように着替えて芝居に出かけようとしますが、長者の一人娘が草履を忘れたといって戻ってきたので、仕方なく彼女も馬に乗せて芝居に向かいました。
そして芝居の東側に立つと、「マミチガネの馬の飛ぶのを見よ」と叫んで馬に一鞭当てると馬は飛んで芝居の西側に降り立ちました。
芝居を見ていた人々はみんな立ち上がり「きょうは神様が夫婦でおいでになったぞ」と喜び拝みました。
そして灰坊と長者の娘はみんなより先に帰りました。灰坊はまた同じように寝ていました。長者の娘は腰が痛むといって奥座敷にこもりました。
長者は帰ってくると、娘の様子を案じて、医者を呼ぼうとしますが、娘は巫女を呼んでくれといいます。やってきた巫女は「雇人の中に娘と縁があっての病です。その男に出会えば娘さんの病は治るでしょう」と答えました。
長者は、汚らしい灰坊以外の男を娘と合わせますが、誰も娘の病を治すことができませんでした。
そこへ、ただ一人残った灰坊は、自分の美しい着物を着ると娘に会いに行きました。すると娘の病はたちまち治ってしまいます。長者は自分の人を見る目のなさを詫び、マミチガネを一人娘の婿に請いました。こうしてマミチガネと長者の娘の祝言が行われました。
やがてマミチガネは馬に乗って結婚を知らせに親見舞いに出かけます。妻は「馬の鞍に桑の実が落ちてくるけれど、どんなにのどが渇いても決して桑の実を食べてはいけない。食べてしまえばもうお互いに見ることはできなくなる」とマミチガネに注意します。しかし、マミチガネは、どうしてものどの渇きを我慢できず桑の実を食べて死んでしまいます。
馬は、マミチガネを乗せたまま、生まれ育ったオームラの殿さまの家にたどり着きました。馬は三度いななきます。
殿さまは、それを聞いて、あれはマミチガネの馬だと気づき、奥方を見に行かせると馬は奥方を食い殺してしまいました。
マミチガネの妻は、夫が帰ってこないので、きっと桑の実を食べて死んでしまったのだろうと思い、死者を生き返らせる「しじゅるの水」を三合買うと、夫を探しに出かけました。
妻は夫の家にたどり着くと夫をしじゅるの水で拭いて生き返らせました。ふたりはそろって、西の長者の家にかえりました。そして今が今でもよい暮らしをしている、と物語は結ばれます。
あらすじだいぶ端折ってます。興味がある方はオリジナルをどうぞ。
細部は異なるものの、広い地域で、古くから伝えられる民話群の一つです。有名なものには、グリム童話(KHM21)『灰かぶり』(シンデレラ)があります。これらの物語群はグリム兄弟以前にもパターンを少しづつ変えながら採録されています。
シンデレラの日本版男性編といえばわかりやすいでしょうか。悪い継母に、継母の言いなりの父親が登場しおなじみの展開を見せます。この日本版シンデレラの主人公は、自分の運命を切り開く態度において、より積極的です。
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