子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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日本の昔話 5 より 『灰坊』 灰かぶり(シンデレラ)との類似性
むかしオームラの国の殿さまと奥方の間に男の子が生まれました。殿さまはたいそう喜んで、その子を「マミチガネ」と名付けました。けれどもマミチガネが三つの時、奥方が亡くなり、殿さまは新しい奥方を迎えました。

マミチガネが九つになった時、殿さまは、三月の間、江戸に行くことになりました。殿さまは奥方に「留守の間何もしなくていいが、マミチガネの髪だけは毎日すいてやってくれ」といって旅に出かけました。

奥方は殿さまを見送って帰ってくると、今までとは打って変わり、マミチガネにつらく当たりました。マミチガネを毎日休みなく働かせて、髪など一度もすいてやりませんでした。マミチガネの頭にはしらみがいっぱいたかりました。



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やがて三月経って殿さまの船が帰る日になりました。マミチガネは奥方に、「お母さん御父さんの船を迎えに行きましょう」といいました。

けれども奥方は「おまえは先に行きなさい。わたしは髪を結って、あとから行きます」と答えました。そしてマミチガネが出かけると奥方はカミソリで自分の顔に傷をつけ、布団をかぶって寝てしまいました。



いくら待っても奥方は船を迎えに来ませんでした。そこでふたりは家に帰ることにしました。家に着くと奥方は寝ていました。

殿さまは奥方にわけを聞くと、「あなたの子供がカミソリで傷をつける。こんな顔では人に見られるのがつらくて、あなたの船を迎えに行けなかったのです」と答えました。

殿さまはこれを聞くと、マミチガネにわけも聞かず、「おまえのような親不孝者はどこへでも落ちていけ」といい、せんべつに三頭の馬のうちから一番良い馬を選び、江戸土産の四枚の美しい着物を与え、家から追い出しました。マミチガネは美しい着物を着て馬に乗り、南のほうへ向かいました。



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いくつかの障害も何のその、マミチガネの馬は鞭を当てると飛び越えていきました。そしてとあるおじいさんが粟の草刈りをしているところにでると、この村に雇ってくれるところはないかと尋ねました。

すると西の長者に聞いてみよとのことです。しかしその立派ないでたちでは雇ってはくれないだろうとおじいさんはいいました。

そこでマミチガネはおじいさんに自分の一枚の着物と野良着を交換してもらい、残りの着物と馬の鞍を入れるための唐櫃(からびつ)を貸してもらい、そこに品をおさめ、そして馬は、一回り一里もある広い竹山に放しました。

そしておじいさんにつれられて、西の長者に雇い口を頼むと長者はすぐに雇ってくれました。マミチガネはよく働きました。特に飯炊きの仕事に才を発揮しました。



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やがてお祭りの日がやってきました。長者は灰坊(マミチガネ)にあした芝居を見に行くから、早めの朝食と弁当を作るように言いつけて、祭りには供をするように言いつけました。

けれども当日、灰坊は、「きょうは死んだ母親の命日だから喜びの場所には行けない」と断るのでした。長者は灰坊に留守番を頼むと、家中のものを引き連れて祭りに出かけました。

灰坊はみんなが出かけると野良着を脱ぎ、お風呂に入って体を洗い、あのおじいさんの家に行って、預けておいた美しい着物を着て、立派な足駄を履き、竹山の馬を呼んで鞍をかけ、それに乗って芝居に出かけました。



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そして、芝居の北側に立つと、「マミチガネの馬の飛ぶのを見よ」と叫んで、馬に一鞭当てました。馬は飛んで芝居の南側に降り立ちました。

さあ芝居を見ていた人々は驚きました。「天の神様が来られた。みんな立って拝め」と大騒ぎです。みんなして灰坊を拝みました。

ところが長者の一人娘だけが「あれはうちの灰坊ですよ」といいました。長者はそれを聞いて「なんと無礼な。早く拝みなさい」とたしなめました。娘はくすくす笑いながら拝みました。

灰坊はみんなより先に帰って元のいでたちに戻り、火ふき竹を枕に寝ていました。

やがて長者が帰ってきて灰坊に門を開けさせて、「おまえもつれていけばよかった。今日は天の神様が芝居の場に来られたので、みんなで拝んだんだ」といいました。

灰坊は「そんなことがあったのですか。それなら私もつれていっていただければよかったですね」と答えると、長者は、「あさってまた芝居がある。おまえも供をせよ」といいました。



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しかし、またしても 灰坊はその当日「きょうはわたしの死んだじいさんの命日だから、喜びの場所には行けない」と答えました。長者は灰坊を一人残し家中のものを引き連れて出かけました。

すると灰坊は、この前と同じように着替えて芝居に出かけようとしますが、長者の一人娘が草履を忘れたといって戻ってきたので、仕方なく彼女も馬に乗せて芝居に向かいました。

そして芝居の東側に立つと、「マミチガネの馬の飛ぶのを見よ」と叫んで馬に一鞭当てると馬は飛んで芝居の西側に降り立ちました。

芝居を見ていた人々はみんな立ち上がり「きょうは神様が夫婦でおいでになったぞ」と喜び拝みました。

そして灰坊と長者の娘はみんなより先に帰りました。灰坊はまた同じように寝ていました。長者の娘は腰が痛むといって奥座敷にこもりました。



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長者は帰ってくると、娘の様子を案じて、医者を呼ぼうとしますが、娘は巫女を呼んでくれといいます。やってきた巫女は「雇人の中に娘と縁があっての病です。その男に出会えば娘さんの病は治るでしょう」と答えました。

長者は、汚らしい灰坊以外の男を娘と合わせますが、誰も娘の病を治すことができませんでした。

そこへ、ただ一人残った灰坊は、自分の美しい着物を着ると娘に会いに行きました。すると娘の病はたちまち治ってしまいます。長者は自分の人を見る目のなさを詫び、マミチガネを一人娘の婿に請いました。こうしてマミチガネと長者の娘の祝言が行われました。



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やがてマミチガネは馬に乗って結婚を知らせに親見舞いに出かけます。妻は「馬の鞍に桑の実が落ちてくるけれど、どんなにのどが渇いても決して桑の実を食べてはいけない。食べてしまえばもうお互いに見ることはできなくなる」とマミチガネに注意します。しかし、マミチガネは、どうしてものどの渇きを我慢できず桑の実を食べて死んでしまいます。

馬は、マミチガネを乗せたまま、生まれ育ったオームラの殿さまの家にたどり着きました。馬は三度いななきます。

殿さまは、それを聞いて、あれはマミチガネの馬だと気づき、奥方を見に行かせると馬は奥方を食い殺してしまいました。



マミチガネの妻は、夫が帰ってこないので、きっと桑の実を食べて死んでしまったのだろうと思い、死者を生き返らせる「しじゅるの水」を三合買うと、夫を探しに出かけました。

妻は夫の家にたどり着くと夫をしじゅるの水で拭いて生き返らせました。ふたりはそろって、西の長者の家にかえりました。そして今が今でもよい暮らしをしている、と物語は結ばれます。



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あらすじだいぶ端折ってます。興味がある方はオリジナルをどうぞ。

細部は異なるものの、広い地域で、古くから伝えられる民話群の一つです。有名なものには、グリム童話(KHM21)『灰かぶり』(シンデレラ)があります。これらの物語群はグリム兄弟以前にもパターンを少しづつ変えながら採録されています。

シンデレラの日本版男性編といえばわかりやすいでしょうか。悪い継母に、継母の言いなりの父親が登場しおなじみの展開を見せます。この日本版シンデレラの主人公は、自分の運命を切り開く態度において、より積極的です。



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19:25 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
日本の昔話 5 より 『仙人のおしえ』 与えた善行は巡り巡って自分に返ってくる
むかし、あるところに、ひとりの若者が、目の見えない母親と暮らしていました。息子は毎日、草鞋を作っては、それを売り、母親に好きなものを買っていきました。

母親は「こんな孝行息子は、世界中探しても、そういないだろう。わたしは幸せ者だ。しかし、ただひとつ、目の見えないことが悲しい」といっていました。

息子は、何とかして母親の目が見えるようにしてやりたいと思って、一生懸命神仏に祈りました。するとある夜、「山に仙人世界がある。そこへ行って仙人にお願いしてみよ」との夢のお告げがありました。

息子は次の朝、早く起きて、「仙人はどこにいるのでしょう」と近所の人たちに聞いて回りましたが、誰も知りません。

それでも息子は「海に竜宮世界があるのだから、山に仙人世界があっても不思議でない。とにかくいってきます」と母親にいい、仙人世界を探しに出かけました。



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家を出てからしばらく行くと、村一番の長者に出会いました。長者が「こんな朝早くどこへ行くのだ」というので、息子はわけを話しました。

すると長者は、「わしの娘が、もう指折り数えて三年三月、重い病で寝ている。何とか直してやりたいのだが、おまえ仙人に聞いてきてはくれないか」といいました。息子はそれを引き受けて長者と別れ、また道を急ぎました。



歩いているうちに日が暮れたので、息子はお百姓さんの家に泊めてもらいました。その晩主人は「見れば、遠くに行く旅のようだがどこへ行くんだね」と聞くので、息子はわけを話しました。

すると主人は、「うちの庭にみかんの木が三本あるんだが、三年このかたひとつも実がならん、どうしてならないのか、おまえ仙人に聞いてきてはくれないか」といいました。息子はそれを引き受けました



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さて息子は、次の朝早く起きて、また出かけました。それから七谷八谷千谷万谷を越えて、山の奥へ奥へと分け入りました。しまいにはもうこれ以上あがれない滝の下に出ました。

息子は困り果てていると、滝の上の穴から、大蛇が鎌首を持ち上げ、角を振り立てて、大きな目でこちらをにらんでいます。そして恐ろしい声で、「おまえどこに行く」と聞きました。

息子は逃げることもできず、わけを話し、これ以上、道がなくなってしまい困っていることを話しました。

すると大蛇は、「心配することはない。わしがお前を上にあげてやるから、その代わりにたのみを聞いてくれ」といました。大蛇は「わしは海に千年、川に千年、山に千年修業したが、どうしても天に登れない。なぜなのか仙人に聞いてきてはくれないか」といいました。息子はそれを引き受ける代わりに滝の上にあげてもらいました。



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それから道は、ますます険しくなり、息子は、谷を下り、尾根を這い上がり、木にしがみつき、藁にとりついて進みました。もう天竺に近いと思われるところまで来ると小さな家が一軒ありました。

家の中には一人のおじいさんが座っています。尋ねると彼が仙人でした。仙人は、頭に霜をおき、額には海の波打つ、おそろしく年取ったおじいさんでした。

息子は座敷に上がり、「仙人さま、わたしは草鞋を作ってその日その日をくらしておりますが、この度、お尋ねしたいことがあって、ここにまいりました。どうぞ教えてください」とたのみました。

すると仙人は囲炉裏にあたりながら「よろしい。ただし三つだけだ。そのつもりで話しなさい」といいました。

聞きたいことは四つあるのに、三つしか聞いてくれないとのことで、息子は困ってしまいましたが、母親のことは、また次の機会にすることにして、道中でたのまれた三つのことを聞くことにしました。



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息子は、「仙人さま。わたしの村の長者の娘が床について、三年三月患っていますが、どうしたら直るでしょう」と尋ねました。

すると仙人は「それは心配いらん。今度初めて顔を合わせた男を婿にすれば、病はたちまち治る」といいました。

そこで息子は二番目に、「それでは仙人さまここへ来る途中、泊めてもらったお百姓さんの家で、三年続けてみかんの木に実がならないのはどういうわけでしょう」と尋ねました。

すると仙人は、「それは実のならない木の根元に、千両箱がいけてあるからだろう。その金の毒気で実がならんのじゃ。千両箱をほりだしたら、年嫌いせず、実がなるようになる」といいました。

息子は最後に、「それでは仙人さま、ふもとの滝に住む大蛇が、いくら修行しても天に登れないといっています。そのわけを教えてください」と尋ねました。

すると仙人は「それは大蛇の頭に、じゃこつ石という石の玉がある。その玉をとって捨てたら願いが叶うだろう」といいました。



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息子は、仙人に深くお辞儀をして帰ることにしました。帰り道、約束通り、引き受けた相手のたのまれごとに答えていきます。すると問題は解決していきます。

そしてその過程で、大蛇からはじゃこつ石を、百姓からは三つの千両箱の内のひとつをもらい受けました。

そして村に帰ると、長者の家に立ち寄ります。すると長者の娘が出てきて、息子の顔を見ると、娘の病はたちまち治ってしまいました。息子は仙人のいっていた初めて顔を合わせた男だったのです。息子は長者に娘婿にとせがまれました。しかし息子は、「母親を一人にすることはできないので、帰って相談します」といいました。

家に帰ると息子は、母親のたのみごとを聞くことができなかったことを彼女に詫び、また出かけますからと約束しました。そして道中での話を聞かせながら大蛇のじゃこつ石を取り出しました。そして母親がその石の玉に触るのですが、なんとたちまち彼女の目が見えるようになりました。

それから息子は長者の娘婿になり、みんな長生きをして幸せに暮らしました、と物語は結ばれます。



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あらすじはだいぶ端折っています。興味がある方はオリジナルをどうぞ。

仙人のおしえが三つしか聞けないのに対して、行きがかり上、若者の望みは四つになってしまいます。しかしこの若者は誠実で、自分の望みは後回しにしました。

ところが、巡り巡っていくつもの幸せが主人公の若者にもたらされます。若者の幸せは仙人からもたらされる直接のおしえという範疇を超え、巡り合わせから生じることとなります。若者の願いは間接的にかなってしまいました。

仙人のおしえはきっかけを作ったことにすぎなくなります。しかしこれは、より高い視点から見れば仙人のおしえの本質であるのかもしれません。



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18:19 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
日本の昔話 5 より 『やまんばとくし』 合理に対するアンチテーゼ
むかし、ある山のふもとに、きこりとその女房が住んでいました。きこりは毎日、山へ木を切りに行きました。、女房のおみるは家で機織りをしていました。麻の皮を細かく裂いて唾をつけながら糸に紡ぎ、桶に入れていっぱいになると、それで布を織るのでした。



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ある日のことです。やまんばがやってきて、「わしは年寄りだが、糸をつむぐくらいなら手伝ってやる」といって、糸をつむいでは、おけにいっぱいにしてくれました。おみるは喜んでやまんばに飯を炊いて食べさせました。

やまんばはそれから毎日やってきて、糸を紡いで飯を食べて帰るようになりました。おみるは、お手伝いができたとたいへん喜びました。



そうしているうちに、ある日、やまんばが、「毎度、飯を食わせてもらているお返しだ」といって、つげの櫛をくれました。おみるはそれを大切に棚に上げておきました。

さて、その晩、山から戻ってきたきこりは、おみるの話を聞いて、「どうも合点がいかん。やまんばの紡いだ糸の撚り目に血がついている。しまいには、かかよ、おまえも食われてしまうぞ」と心配しました。



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次の日、きこりは、やまんばからおみるを隠しておこうと思って、大きなからつ(箱)におみるを入れて、つし(天井裏)の梁に吊り上げました。

そしておみるに「いいか。おれが戻るまで誰が来ても出るんじゃないぞ」といって山仕事に出かけていきました。



しばらくするとやまんばがやってきました。けれどもおみるはきこりにいわれた通り、からつの中でじっと黙っていました。

やまんばは「おのれ、隠れたか。それともおやじが隠したか」といってそこらじゅうを探しまわりました。

やまんばは「履物があるからうちにいるに違いない。そうだあの櫛に告げさせよう」といって棚の上の櫛を探し出し、それを囲炉裏の火にくべました。

櫛は「かか、つし、からつ」と告げました。そこでつし(天井裏)を見上げると、大きなからつ(箱)がぶら下がっています。そう、やまんばはおみるの居場所を探し当てました。

やまんばは、包丁をもって天井裏にあがるなり、縄を切って、からつを下に落としました。おみるは逃げ出す暇もなく、やまんばに引き裂かれ、瞬く間に食べられてしまいました。

やまんばは、おみるのけつっぺただけを残し、それを囲炉裏の灰の中に埋めて、山へ帰っていきました。



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やがて日が暮れて、きこりが山仕事から帰ってきましたが、おみるの返事がありません。見ると、おみるを隠して天井裏に吊るしていたからつが下に落ちていて、中は空っぽでした。

きこりは「こりゃあ、やまんばの仕業に違いない。隠しておいたのに何で見つかってしまったのやら。情けないことになった」といって泣きだしました。



そのうち、夜が更けて、だんだん寒くなってきたので、火でもたいてあたろうと思い、囲炉裏の灰を掘り返しました。するといきなりボーンとはじけて、けつっぺたがきこりのほっぺたに飛びつきました。

きこりは女房には死なれるし、恐ろしい顔になってしまうし、なんとも悲しい気持ちになりました。そこで町へ行って、やけ酒の一杯ひっかけてこようと出かけていきました。



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ところが飲み屋に入って酒を飲もうとすると、「へへらも一杯」と突然ほっぺたが言いました。きこりはびっくりして「何でこんなものがしゃべるんだ。不思議なことがあるもんだ」と思いました。

そこできこりは、ほっぺたに飲み残しの酒を注いでやると、飲んでいる様子もないのに酒はなくなっていきました。

きこりは「こりゃあ、合点がいかん。おれもこうなってはおしまいだ」といって家に帰りました。



きこりは家に帰ると、腹がすいたので、ご飯を食べ始めました。すると、またしてもほっぺたが「へへらも一杯」といいました。

きこりがほっぺたに飯を近づけてやると、食べる様子もないのに飯はなくなっていきました。



きこりは「ああ、こんな顔じゃ世間も歩けないし、今から嫁を探すにしても誰も来てはくれないだろう。おれもこれまでだ」といいました。

きこりは家を出て、崖っぷちから本当に海に飛び込んで死んでしまいました、と物語は結ばれます。



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やまんばからもらったつげの櫛がおみるの隠れた居場所を告げるという駄洒落になっているのでしょうか。

またやまんばがおみるにつげの櫛を与えたのは初めからこうした事態に備えてなのかはわかりません。



やまんばの昔話は日本でおなじみですね。ブログ内検索で『やまんば』で引いてみてください。

昔話のやまんばは恐ろしい存在ですが、うまく付き合えば福として働くこともあります。このお話しでも、初めのうちやまんばは福をもたらします。

しかしきこりの余計なはからいで、やまんばとのの友好的な関係は解消してしまいます。やまんばは人食いになってしまいます。おみるは食べられてしまいました。そればかりではありません。やまんばの細工はきこりの命まで奪うように作用します。

このお話しのように、いくつかのやまんばの昔話では、その存在が福となるか災いととなるか両義的に描かれます。

また、きこりが、始終合点がいかないといっていたのが印象に残ります。やまんばの存在は合理に対するアンチテーゼなのではないでしょうか。



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18:24 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
日本の昔話 5 より 『片子』 鬼と人間の間の子、節分の由来譚、昔話という媒体
むかし、あるところに、男が女房とふたりで暮らしていました。男は、毎日、山にたきぎを取りに行っては町で売り、その日ぐらしをしていました。



ある日、男が、山で一生懸命たきぎを集めていると、後ろからいきなり、「おまえ、あんころ餅、好きか」と声を掛けられたので、びっくりして振り返ると、そこには鬼が立っていました。鬼は大きな重箱を抱えています。

男はふざけて「ああ、あんころ餅なら、かかあと取り換えてもいいぐらい好きだ」と答えました。すると鬼は「そんなら食え」といって、あんころ餅のいっぱい詰まった重箱をくれました。

男は、とても腹がすいていたので、夢中であんころ餅を食べました。そのうちに鬼はどこかへいなくなってしまいました。男はおなかがいっぱいとなり、力が出たので、いつもの倍の仕事をすることができました。



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夕方、男は、たきぎをたくさんしょって帰りました。そして家の戸口に着くと、「かかあよ、今帰ったぞ」といいましたが、返事がありません。それどころか、家は荒らされて、女房はどこにもいませんでした。

男は、「さてはあの鬼のやつめ、あんころ餅の代わりに女房をさらっていったな」と思いました。男はいてもたってもいられなくなり、次の日には家をたたんで、女房探しの旅にでました。



男は鬼の住みそうな山を訪ねましたが鬼は見つかりません。探し回っているうちに十年の月日が経ちました。

男は今度は海辺を訪ね歩きました。そしてある時、はたと気づきました。「そうだ鬼ヶ島だ。かかあは鬼が島へつれていかれたのだ」と思い、早速舟をこいで鬼ヶ島にわたりました。



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男が、鬼が島に渡ると、浜で、体の右半分が鬼、左半分が人間の、十ぐらいの男の子がひとりで遊んでいました。

男は、「おまえは誰だ」と声をかけると、男の子は、「おれは片子なんだ。父さんは鬼のかしらで、母さんは人間さ。母さんは毎日『国へ帰りたい、国へ帰りたい』といって海ばかり眺めているよ」と答えました。

男はそれを聞くと、「片子の母親はかかあに違いない」と思いました。そこで片子に、「おれは国からおまえの母さんを訪ねてきたものだ。母さんに合わせてくれ」とたのみました

片子は、男を鬼の家につれていってくれました。片子の母親はやはり女房でした。ふたりは再開すると泣いて喜びました。

ふたりは夢中で、これまでの苦労話をしましたが、そのうち女房ははたと気づいて、男が鬼に見つからないように、押し入れにかくしました。

まもなく鬼が帰ってきて異変に気付きます。人間の匂いに感ずいたのです。しばらくは、女房の機転でやり過ごすことができましたが、とうとうある日、隠し切れなくなりました。女房は鬼に、亭主が訪ねてきたことを正直に打ち明けます。そして鬼と男の勝負が始まります。



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勝負は、餅の食い比べ、木の切り比べと続きますが、いずれもこっそりと男に片子が加担して男の勝ちとなりました。

最後に酒の飲み比べとなります。鬼は「負けられねえ、負けられねえ」といいながら一升ますでがぶがぶと飲みました。あまり立て続けに飲んだので酔いつぶれてしまいます。

女房は、「さあいまのうちに皆で逃げよう」といって、三人は逃げ出しました。すると、船に乗って海へ漕ぎだしたところに、鬼が追いかけてきました。

鬼は三人が舟をこいで逃げていくのを見ると岸に両手をついて四つん這いとなり、海の水をどっくどっくと飲み始めました。こちらへ引き寄せようという魂胆です。

そこで男は、鬼に向かってぺろっと舌を出しました。片子は、あかんべえをしました。女房は後ろ向きになり、腰巻をまくると尻をべたべたたたきました。

三人の様子があまりに可笑しかったので、鬼はとうとう大笑いして、飲んだ水を全部吐き出してしまいました。その勢いで船は一気に沖まで進み、三人は無事国へ帰ることができました。



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けれども、男と女房は鬼がいつまた追いかけてくるかと、毎日、心配しながら暮らしていました。片子は片子でみんなから「鬼の子、鬼の子」といわれてのけ者にされました

そこで片子は、ある日、母さんに、「おれが死んだら鬼のほうの体を細かく刻んで串刺しにし戸口にさしてね。そうすれば鬼の父さんは追いかけてきても家の中には入れないよ。それでも入ってきたら、父さんの目ん玉めがけて、石つぶてを投げつけるといいよ」といいました。

そして片子は、高い欅の木のてっぺんまで駆け登り、あっという間に飛び降りて死んでしまいました。女房はおんおん泣きながらも、片子にいわれたとおりにしました。



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ある日とうとう鬼がやってきました。鬼は戸口を見て、「自分の子供を串刺しにするなんて、人間の女はなんてにひどい奴だ」と地団駄を踏んで悔しがりますが、家の中には入ることができません。そこで鬼は裏口を壊して押し入ってきました。

男と女房は片子にいわれた通り用意していた石つぶてを、「鬼め、出ていけ。鬼め、出ていけ」と鬼の目ん玉めがけて、ばらばらと投げつけました。鬼はこらえきれず「わあーっ」といって逃げ出し、それっきりやってくることはありませんでした。



それから二月三日の節分になると、片子の代わりに、ごまめをこしらえて串にさし、「福は内、、鬼は外、天打ち、地打ち、四方打ち、鬼の目ん玉、ぶっつぶせ」といって石のつぶての代わりに豆をまくようになりました、と物語は結ばれます。



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節分に関する由来譚ですね。

過去にも同じく、鬼と人間の間の子が、犠牲になって人間を救う、『鬼の婿どの』という、お正月の門松と節分に関する由来譚を記事にしました。

片子は、半分が鬼の子であるにもかかわらず、自らの命を顧みず、人間のために最善を尽くしました。その健気な在り方は、涙を誘います。どうしても片子は、救われなかったのでしょうか。切ないですね。



昔話というものは、わりと短いお話の中に、笑いあり、涙あり、その他にも、いろいろな感情を表現する媒体です。

短かいゆえに手軽ですが、なぜか繰り返し読んでも色あせず、かえって心に焼き付きます。遠いむかしから、伝承されてきたという強みでしょうか。



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18:17 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
日本の昔話 5 より 『馬方やまんば』 かたき討ちのお話の類型
むかし、あるところに、ひとりの馬方がおりました。ある日のこと、馬方は、浜でたくさんの魚を仕入れ、馬の背に振り分けて積み、山道を登っていきました。

日が暮れて峠に差し掛かると、松に木の陰から、やまんばがぬうっと出てきて、「これまて。その魚、置いてけ」としわがれた声でいいました。

馬方は怖くなって、片荷の魚を、後ろにぶん投げ、馬を引っ張ってわらわら逃げていきました。

やまんばは魚をばりばり食うと「これまて。その魚全部置いてけ、おかざあ、おまえをとって食うぞ」と追いかけてきました。馬方は残りの片荷も後ろにぶん投げて、裸の馬に飛び乗って逃げていきました。

やまんばは魚をばりばり食うとまた、「馬の足を一本おいていけ。おかざあ、おまえを取って食うぞ」と追いかけてきました。

馬方は馬の足を一本ぶった切って後ろに投げますが切りがありません。やまんばは残りの馬の足を要求します。とうとう二本足になった馬を捨てて池のそばの木にわらわら登っていきました。

やまんばは馬を丸ごと食ってしまうと、また追いかけてきました。そして池にうつった馬方の姿を見つけると池に飛び込みました。

馬方は、そのあいだに木から降りて、夢中で藪をこいで逃げていきました。すると一軒家がありました。馬方はそこへ急いで逃げ込みました。



馬方が、天井の梁へ登り、ほっと一息ついていると、ずぶ濡れのやまんばが「寒い、寒い」といって入って行きました。

「ああ、今日はうまいものをいっぱい食った。どれ、甘酒でも沸かして飲むか」とやまんばは、囲炉裏の火をおこし甘酒を温め始めました。そしてくるりと後ろを向いて背あぶりをしていましたがやがて居眠りを始めました。

これを見た馬方は、屋根から萱を一本抜いて、梁の上から甘酒をつっぱつっぱと吸い上げました。するとやまんばは目を覚まして、「おれの甘酒飲んだやつは誰だ」と怒鳴りました。

馬方は「火の神、火の神」とささやくと、やまんばは「それじゃあしかたねえ。そんなら餅でも焼いて食うか」といいました。

ところが、やまんばは、もちを焼きながら背あぶりをしていると、またしても居眠りを始めました。

やがて餅が膨らんでくると馬方は、先ほどの萱で餅を吊り上げて、みんな食べてしまいました。するとやまんばは目を覚まして、「おれの餅を食ったやつは誰だ」といいました。

馬方は「火の神、火の神」とささやくと、やまんばは「それじゃあしかたねえ。そんなら寝ることにしよう。石のからと(箱)に入って寝ようか、木の唐戸に入って寝ようか」とひとりごとをいいました。

馬方が「木のからと、木のからと」とささやくとやまんばは、「火の神さんが言うんじゃ仕方ない。木のからとにしよう」といって木のからとに入って寝ました。



そこで馬方は、梁から降りてきて湯を沸かしました。そして、からとに錐できりきりきりきり穴をあけ始めました。

するとからとの中のやまんばは、「きりきり虫が鳴いてらあ。あしたは天気だな」といいました。

穴が開くと馬方はぐらぐら煮立った湯をもってきて穴に注ぎ込みました。やまんばは初めのうちこそ「ねずみのやろう、しょんべん引っ掛けやがった」といったものの、次第に熱くなって、からとの中で暴れだしました。

けれども馬方は「大事な馬まで食われたかたきだ」といって煮え湯をどんどんつぎ込んだのでとうとうやまんばは死んでしまいました、と物語は結ばれます。



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前半は、やまんばという恐ろしい存在が主人公を追い詰めます。主人公の馬方は、やまんばから逃れるために逃走します。

しかし、後半、やまんばの存在は、恐ろしいというよりもユーモラスです。そう、前話『化けものをひと口』の化けもの同様、どこか間の抜けた存在として描かれています。

そして民話的なハッピーエンドの展開をたどり、結果、主人公の馬方の、かたき討ちのお話となりました。

ブログ内検索で『かたき』を検索すると、いくつか出てきます。かたき討ちのお話しの類型ですね。



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18:30 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
日本の昔話 5 より 『化けものをひと口』 間の抜けたお化けのお話し
むかし、ある村で、山に化けものが出るというので、村の人はみんな怖がっていました。何しろ山へ行けば、化けものに食われてしまって、戻ってきた人はいないというのです。



ある日のこと、村に、目の見えない座頭さんがまわってきました。座頭さんは、この話を聞いて化けもの退治を志願します。

村人は、食われてしまうからやめておけと、座頭さんを止めますが、彼は是非にというので、村の人々は山へ案内して逃げ帰ってきました。



山の中にひとり残った座頭さんは、あたりが暗くなると琵琶を弾き始めました。すると琵琶の音にひかれるように化けものが姿を現しました。

化けものは「おれのようなものが出ても怖くないのか」と尋ねますが、座頭は「いいやひとつも怖くない」と答えました。

すると化け物は、姿を変え怖がらせようとします。しかし座頭は一向に怖がりませんでした。

化けものは飽きれて「おれはこうして化けることができるが、おまえは琵琶のほかに何か芸ができるのか」と尋ねました。すると座頭は琵琶を弾きながら歌い始めました。

化け物は感心し、それなら奥の手の芸を見せてやるといって、山中いっぱいになるくらいの大きなものに化けました。

しかし座頭は一向に怖がらず、それほど大きなものに化けられるのなら、小さなものにも化けられるだろうと尋ね返す始末です。

化けものは小さな金柑に化けました。すると座頭はこれはうまそうな金柑だといってつまんでほうばり、力いっぱい噛み、ぺっと吐き出しました。

いくら化けものであってもたまりません。地鳴りをさせて、大きな山が転がるほどうなって、化けものは伸びてしまいました。



夜が明けると村の人たちは、昨夜の地鳴りに話を咲かせ、座頭さんは化けものに食われてしまっただろうといいながら山へ様子を見に行きました。

ところが座頭は昨日と同じようにちゃんとそこへすわっているので村の人はびっくりしました。

座頭は昨夜の出来事を話すと「どこかそこらに化けものが死んでいないか」と尋ねます。村の人はあたりを探すと大きな蛇が死んでいました、と物語は結ばれます。



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目の見えない座頭とは琵琶法師のことですね。
座頭を主人公とする昔話はこれまでもいくつかありました。ブログ内検索で『座頭』を引いてみてください。

目の見えないものは、心眼で冷静に物事を見るので、慌てません。頭を使って対処します。

化けものの頭がどこか抜けているのは、ある意味民話の定石です。グリム童話なら『瓶につめられたおばけ』をあげることができます。化けものの描写がユーモラスに語られます。



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18:13 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
『人魚姫』 H.C.アンデルセン 若き日のアンデルセンの恋愛観
おなじみの物語です

はるか沖へ出ると、海の水は青みの一番強いヤグルマソウくらいに青く、また一番透明な水晶に負けないくらい澄み切っています。

でも沖はとても深く、深さを測ろうにも測れません。人魚が住んでいるのは、そんな海の底です。



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人魚の王様はずいぶん前にお妃さまをなくされましたが身の回りのことは年老いた母親に見てもらっていました。

この母親は褒められてよい方でした。とりわけ孫娘にあたる小さな人魚の姫さま方を心からいつくしんでおいででした。

姫さま方は六人で、いずれ劣らぬ美しい方ばかりでしたが、中でも末娘のお姫さまが一番きれいでした。この末の姫さまは好奇心の強く物静かで考え深い子でありました。

おばあさんは「おまえたちが十五になって一人前になったら、海の上に浮かび上がって海の上の世界を見ることができますからね」といいました。

一番上の姫さまは次の年の春に十五になります。でもあとの姫さま方は年がひとつずつ離れていたので、末の姫さまにいたっては、まださらに五年も先のことでした。



こうしてそれぞれ姉さまたちは初めて海の上に浮かんだ時の素晴らしいものや美しいものに心奪われました。

でも一人前になってどこへでも好きなところへ泳いでいけるようになると、みんな海の上のことには無関心になりました。

そういうわけで、もののひと月も経たないうちに、皆、「やっぱりおうちが一番ね、海の底が一番住みよいわ」と言い出す始末でした。



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とうとう末の姫さまの十五の誕生日がやってきました。姫さまは水の中を浮き上がっていきました。

海面に顔を出すと遥か彼方に三本マストの帆船が浮かんでいます。やがてあたりが暗くなると、派手な色のランタンが何百も点され万国旗のようです。

人魚の姫さまは船室のすぐそばまで泳いでいきました。船室には美しい服を羽織った人々が大勢います。中でも若々しい王子に見とれて恋をしてしまいました。

しかし、夜が更けると天候が変わり嵐に見舞われます。そしてとうとう船は二つにさけてしまいました。その瞬間姫さまは、自らの危険も顧みず王子を救いました。



やがて明け方になり嵐が去ると陸が見えてきて、そこにある教会のような大きな建物の前に姫さまは王子を運び、どうか死にませんようにと祈りました。

ちょうどその大きな建物から鐘の音がして若い娘たちがぞろぞろ庭に出てきました。人魚の姫さまは王子のもとを離れて身を隠し、だれか王子を拾ってくれないかと様子を見ていました。

いくらもしないうちにひとりの若い娘が近づいてきてびっくりし、ほかの人を呼びました。そこで王子は目を覚まします。王子は本当の命の恩人である人魚の姫さまを知ることができませんでした。

それは、人魚の姫さまにすれば悲しい出来事でした。姫さまは海の底のお父さまのお城へ帰っていきました。



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それから姫さまは夜となく朝となく王子と別れた海辺に出かけました。姫さまはもうこれ以上我慢がならず、姉さまのうちの一人に苦しい胸の内を打ち明けました。

すると瞬く間にその話は、ほかの姉さま方と、仲のいい何人かの人魚の娘に伝わってしまいます。しかし、大事な問題だから、打ち明けてもいい人を、みんなしっかり選んでくれていたのが幸いでした。

でも不思議なめぐりあわせというのでしょうか、仲のいい人魚の娘の一人が王子を知っていて、居場所もわかるというのです。

「さあ行きましょう。小さい妹よ」と姉さま方はいいました。そしてみんなで腕と肩を組みあい長く列を作るようにして王子のいる城があるという海辺まで浮かび上がっていきました。

こうして王子の住む場所が確かめられると姫さまは何度も通い海の上から王子を眺めました。



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姫さまは人間についてまだまだ多くのことを知りたがりましたが姉さま方は知りません。そこでおばあさまに聞いてみることにしました。すると人間には人魚の三百年に比べ、はるかに短い寿命があることを知り悲しみます。

しかし人間は死んでも人魚のように泡になることはなく、天国に行って、いつまでたっても滅びない魂があることを知ります。姫さまは魂を持つことに憧れました。

姫さまはおばあさんに「人魚には魂を持つことはできないのでしょうか?」と聞きました おばあさまはたった一つだけ方法があるといいました。

「人間の誰かがあなたのことを、あなたがその人を愛するより深く愛してくれるなら、それは可能なの。でも考えてみるとそれも無理ね。なぜならあなたが持っているその魚のしっぽは、あなたの一番きれいなところなのに、人間の世界ではとても見にくいものなのだから」

「陸でとてもきれいといわれるには、二本の棒のような足と呼ばれるものを持たなければならないの」とおばあさんはいいました。

姫さまは「そうだ。海の魔女のところへ行こう。いつもとても怖いと思っているおばあさんだけれども、たぶん良い知恵と力を貸してくださるに違いないわ」と思いました。



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姫さまは魔女のもとに向かいました。到着すると、魔女はすでに姫さまの願いを知っていました。

魔女のおばあさんは「若い王子があんたを好きになったら、王子と共に、死なない魂を手に入れようという魂胆だ。よしよしでは飲み薬をこしらえてやろう」

「あんたがそれをもってお日さまが登らないうちに陸地にあがって薬を飲めば望み通り尻尾はみるみるうちにの足というやつに代わるだろう」

「でも、痛くてつらいよ。まるで鋭い剣先で刺されているようなものだからね。それでもいいというのなら力を貸してやろう。ただ一度でも人間の姿になれば、もはや人魚の姿には戻れなくなってしまうのだよ」

「それに王子がほかの娘と結婚しようものなら、次の朝あなたの心臓は破裂して海の泡となってしまうのさ」といいました。人魚の姫さまは「それでもいいわ」といいました。

「おっと、それから代金の支払いも忘れずに」と魔女はいいました。魔女は姫さまの声を欲しがりました。魔女は代金として姫さまは舌を切りとってしまいました。もう声が出せません。魔女は薬の調合をしました。



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魔女の家からの帰り道、お父さまの城が見えてきました。しかし明かりは消えています。もうみんな眠ってしまったのでしょう。

姫さまは人々に顔を合わせるつもりはありませんでした。もうものをいうことができないし、今夜限りで、お城とはお別れしようと思っていたからです。悲しくて悲しくて心が張り裂ける思いでした。姫さまは青い海の中を浮き上がっていきました。



まだ夜が明けないうちに、姫さまは王子の城に着くと、魔女からもらった、燃えるようにツンと鼻に来る薬を飲み干しました。まるで両刃の剣でその細い体を突きさされるような気分でした。急に気が遠くなり死んだようにその場に倒れこみました。



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まもなくしてお日さまが登ってくると姫さまは正気を取り戻しました。ふと見上げるとそこにはあのりりしい若い王子が立っていました。

そして驚いたことに魚のしっぽがいつの間にかなくなっていて、その代わりに愛らしい、人間の娘だけにふさわしい、とてもきれいな小さな白い足が二本あるではないですか。

王子は人魚に、名前とここへやってきた理由を尋ねますが、姫さまは話せません。王子は姫さまの手を取ってお城の中へつれていきました

姫さまは得意の歌をうたうことができませんでしたが、上手に踊りました。王子はすっかり姫さまを気に入って、これからはいつもそばにいてほしいといいました。

一日経つごとに王子はより深く姫さまを愛するようになりました。しかしそれは小さな幼子を愛するようにでした。だから王子は姫様をお妃にしようとは考えてもいませんでした。

また、王子がこの世の中で一番愛しているのは、嵐で船が沈んだ時に助けてくれた教会の若い娘だといいました。

「娘はあの教会で一生をお勤めするはずだから、きっと幸運が娘に生き写しのおまえを連れてきたのだろう」ともいいました。本当の命の恩人は姫さまであることも知らずに。



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やがて王子に結婚の話が持ち上がりました。隣国の美しい姫君がそのお相手でした。王子は隣国に発ちました。そしてその姫君にあって驚きます。姫君はあの教会の娘であったのだから。

姫さまは悲しみでいっぱいになりました。教会という教会が鐘を鳴らし役人が町の中を駆け巡って婚約が成立したことを人々に知らせました。王子は姫君をお妃として迎え入れました。



小さな人魚の姫さまは明るく染まっている東の空を眺めました。お日さまの光が差し始めればその最後の光を浴びて自分は死んで海の泡になるのだ。

するとその時、姉さま方が海面に現れました見ると姉さま方は長くて美しい髪を根元から切ってしまわれていました。姉さま方は「わたしたちは、海の魔女に髪の毛をあげてしまったわ。あなたが死なないようにあのおばあさんに助けを求めたの。そしたらナイフをくれたわ。」

そして姉さま方は「お日さまが登らないうちにこのナイフで王子の心臓を突きなさい。王子の心臓から流れ出た血があなたの足にしたたれば元のしっぽが代わりに生えてくるでしょう。そうすればまた元の人魚に戻れるのです」といいました。



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しかし姫さまは王子を殺すことができませんでした。姫さまはナイフを海中に投げ捨て自分も海に飛び込みました。姫さまは自分が泡になっていくのを感じました。しかし自分が死んだという実感はありませんでした。

姫さまは泡を抜け出して天上へ登っていくのを感じました。姫さまは空気の精になったのです。魂の世界の声が聞こえてきました。「天上の世界で善い行いをすれば、やがて魂を授かるでしょう。」



小さな人魚の姫さまは初めて涙というものを流しました。下を見ると王子が美しい花嫁と一緒に人魚の姫を探し回っていました。ふたりは姫さまが波間に身を投げたことを知っているかのように悲しげに海を見つめていました。



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もう目には見えなくなった人魚の姫さまは花嫁の額にやさしく口づけし王子には微笑みかけました。



姫さまは「三百年の後に天国へ漂っていけるのね」といいました。すると誰かが「いやもっと早く行けるかもしれません」ささやきました。

「わたしたちは人間に見られることなく、子供のいる人間の家に忍び込み、毎日お父さんやお母さんを喜ばせる子供を探すことで、天国に行く時期を短くできるのです。しかしそれと反対に、行儀が悪くていたずらばかりする子に出会うと、私たちは悲しくなってつい涙を流してしまうのです。すると、涙を一度こぼすたびに、一日ずつ天国に行くまでの試練の時間は伸びていくのです」と物語は結ばれます。

-1837年-



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アンデルセン28歳の時の作品です。彼の作品のモチーフは、割と多く、彼自身の失恋と結び付けられます。この物語もその一つです。この物語の失恋して傷心の人魚の姫さまは、明らかにアンデルセン自身を投影しています。

この物語は、まだアンデルセンが若い時の作品なので、傷心の人魚の姫さまは、前向きに気持ちを切り替えて、結ばれた王子さまと姫君の結婚を祝福するように物語は展開し、自身は未来への自分の活路を(天国へ至る道)見出して物語は結ばれます。

それに比べて、すでに紹介したアンデルセン晩年の作品、『』(55歳の時の作品)では、物語はややシニカルに自嘲を込めて結ばれるのが気になりました。アンデルセンの心情の変遷がうかがい知れます。



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18:05 : アンデルセン童話集〈下〉 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
日本の昔話 5 より 『鬼退治』 榊が神事に用いられるようになったことを語る由来譚
むかし、ある村に、元気のいい若者がおりました。

あるとき、なぜか、だれひとり村を訪れるものがいなくなりました。若者はこれはきっと峠に化けものが出るからに違いないと思い。家に代々伝わるやすりをもって化けもの退治に出かけました。



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山道の途中、若者は火をあかあかとたいて背あぶりをしている老人に出会いました。老人は若者が右にへよけようとすると右へ寄り、左によけようとすると左に寄り、通りすがろうとするのを邪魔しました。若者は腹を立てて老人を足で蹴飛ばしました。

すると老人は「おお、これはこれは、威勢のいい若者よ。実はわしには娘が三人おり、おまえのような元気のいい若者を婿に探していたところだ。おまえ娘を嫁にもらってくれまいか」といいました。若者は気を良くし、「もらいましょう」といって老人の家についていきました。



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老人の家は立派な構えの家でした。ところが若者が門に入ると、かたっ、と音がしてかんぬきが閉まってしまいました。次の門に入ると、またその門も、かたっ、と音がしてかんぬきが閉まってしまいました。若者はひょっとするとこの家は鬼の家かもしれないと怪しみました。

若者は老人についていくと、家の前には一番馬と二番馬がつながれていました。家の裏には、人間おしゃれこうべが石垣のように積まれています。

老人は若者を座敷に招き入れました。すると三人の娘が、入れ代わり立ち代わり、たくさんのごちそうをもってきて、もてなしてくれました。



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さて夜になると老人は「娘三人のうち、誰を嫁にするのかね」と聞くので若者は、「それじゃあ、末の娘さんをください」と答えました。

老人は「ああいいとも。では奥へ行って休むがいい。ただし布団は別々にしなさい」といって二人を奥へつれていきました。そして娘には赤い星模様の布団を、若者には白い星模様の布団を用意してくれました。

なぜ老人がこのような分別をするのか、若者は用心して、娘が眠ってしまうと、たがいにかけている色違いの布団を交換し、寝たふりをしました。



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真夜中になるとさっきの老人が鬼になって、槍をきらきらさせながらやってきました。そして白い星模様の布団を槍でずぶりと刺すと、「うまくやったわい。料理は明日の朝にしよう」といって去っていきました。

若者は「さあ今のうちに逃げ出そう」と思ってそっと起き上がり外に出ようとしますが、戸口にはしっかりかんぬきがかかっています。

そこで若者は、家から持ってきたやすりを戸の隙間に入れ、かんぬきをこすってみました。するとかんぬきは外れます。二つの門のかんぬきもやすりで外します。それから若者は二番馬に飛び乗って逃げ出しました。



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その音を聞いて鬼は目を覚まし、部屋をのぞいてみると、娘が槍に刺されて死んでいます。「ちくしょう、だまされたか」鬼は一番馬に飛び乗って「待てー、待てー」と叫びながら若者を追いかけました。若者の二番馬より、鬼の一番馬のほうが速く、若者はたちまち追いつかれそうになりました。

その時来た時にはなかった大木が倒れており、若者の二番馬はそれを飛び越えることができましたが、鬼の一番馬は大木に足をひかっけ、鬼もろとも下の滝に落ちていきました。

若者は倒れていた大木を見るとそれは榊の木でした。若者は無事帰ることができました。それからは神様に拝む時には榊を使うようになった、と物語は結ばれます。



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タイトル通り、鬼退治の物語です。昔話の鬼は、英雄譚の中で、懲らしめられる悪の権化であることが多く、そのイメージが現代の鬼という言葉のイメージに、そのままつながっているのでしょう。

また、この物語、榊が、神棚や祭壇に供えるなど、神道の神事にも用いられるようになった由来が語られる、由来譚にもなっています。



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19:37 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
日本の昔話 5 より 『鮭の大助』 怪魚”鮭の大助”の伝承
むかしある村に八兵衛という男がいました。八兵衛はいつも川にやな(梁)をかけて魚を捕るので「やなかけ八兵衛」と呼ばれていました。



ある年の五月の節句のこと、八兵衛は大事な牛の子を川できれいに洗っていたところ、大鷲が舞い降りてきて、山のほうへ牛の子をさらって飛んでいきました。

八兵衛は「大鷲の奴め、いっぺん味をしめたからにはまた来るだろう」と思い、いったん家に帰ると、大鷲をおびき寄せるために、自ら牛の皮をまとい、川岸で待ち伏せをしました。

はたして、またあの大鷲はやってきました。そして、牛の皮をかぶった八兵衛をつかんで舞い上がると、山奥へとさらっていきました。

途中、八兵衛は足に木の枝が触るのを知ると、とっさの機転で枝にしがみついたので、大鷲は八兵衛を残してどこかへ去っていきました。



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八兵衛は、とにかく木を下りました。しかし、ここがどこなのか、とんと見当がつきません。沢を下っていくと、日が暮れてきます。しかし向こうに小さな明かりが見つけると、そこを頼りに戸をたたき、ひと晩の宿を求めました

すると中から若い女が出てきて話になり、その女が、以前八兵衛に買われていた猫の生まれ変わりだということがわかります。さらに、若い女の亭主が、以前八兵衛に買われていた犬の生まれ変わりだということも知れます。

さらにその亭主が、今は狩人をしていますが、むかし犬だったころ、八兵衛に、にわとりを取ったといわれ、鉈を投げつけられ、足を一本だめにされていたので、熊撃ちも狸撃ちも仲間に負けると、八兵衛に恨みを持っていることも知れます。

「でもまあ、わたしがうまい具合にいいますから上がってください」と若い女はいいました。



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さて、八兵衛がご飯を済ませ、隣の部屋に隠れていると、遅くなって、亭主が帰ってきました。そしてどうやら、また狩りで仲間に負けたようです「しゃくだしゃくだ腹が立つ。八兵衛に会ったらぶっ殺してやると」とわめいています。

女房は亭主にご飯を食べさせると、「おまえさん、何といっても八兵衛さんは、元はわたしらの主人で、ご飯を食べさせてくれました。それでも八兵衛さんに会ったら殺すというのかい」と尋ねました。

亭主は「うん殺す。生かしちゃおけない」といいました。すると女房は「実はねえ、おまえさん。今、八兵衛さんは大鷲にさらわれたとかで、うちに泊まっているのさ。どうしても八兵衛さんを殺すというのなら、まずわたしを殺してからにしておくれ」といいました。

亭主は女房にこういわれては仕方ありません。「そうかそんなら殺さねえから八兵衛を連れてこい」といいました

八兵衛が出てきてあいさつすると、亭主は、「ほう八兵衛さんか。こんなところまで来てしまってはどうしたってひとりじゃ帰れねえよ。無事帰りたければ十二月まで待つしかねえ。師走の七日の晩に鮭の大助(おおすけ)が川を下っていくからそれに乗っていけばいい」といいました。

そして、「八兵衛さん。おまえは川にやなをかけて、鮭の大助の子も孫も殺してきた。だから鮭の大助はお前をひとのみにしてくれようと待ち構えている。命が欲しければもう二度と殺生はしないと謝って乗せてもらえ」といいました。



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そうこうしている間に木の葉は赤くなり寒くなって師走の七日の晩になりました。八兵衛が川のほとりで待っていると鮭の大助が下ってきます。

八兵衛が鮭の大助を呼ぶと、鮭の大助は、「やなかけ八兵衛なら人のみにしてくれる」と大口を開けたので、八兵衛は「二度と川の魚は取らないから許しておくれ。おれは大鷲にさらわれて、うちに帰れないから、どうか背に乗せてつれていってくれ」と頼みました。

鮭の大助は川の魚を取らないという八兵衛の言葉に念を押すと背に乗せてくれました。そして、
「鮭の大助、いまくだる、
 鮭の大助、いまくだる」
と大声で叫ぶと、山を下り、野を下ると最上川に出て、またもや下ると村につきました。

村の人々は「鮭の大助、いまくだる」という声を聴くと、お米の出来が悪くなるといわれているので、聞こえないように餅をついたりして騒ぎました。そこへ八兵衛がひょこり帰ってきたので驚くやら喜ぶやら。

さて、それからというもの、八兵衛はやなをかけて魚を取るのはきっぱりやめ、家に飼っている犬や猫を大事にしたということです、と物語は結ばれます。



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”鮭の大助”とは東北地方を中心とする東日本で伝承される怪魚のことで、この怪魚の声を聴くとよくないことが起こるといわれてきたようです。

そのため、このお話しのように、餅をついたりして騒ぎ(耳塞ぎ餅)、鮭の大助の声を聴かないようにしたというもののようです。

しかしこのお話しでは主人公がすくわれています。よってこのお話しのバリエーションでは、必ずしも恐れるものではないということが語られているのかもしれません。



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19:16 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : チキチト :
日本の昔話 5 より 『雪おなご』 雪女の伝承
短いお話しです。

むかし、あるところに、父親と男の子が暮らしていました。



冬のうんと寒い日、父親は男の子を連れて、雪の降る山へ木を切りに行きました。ふたりが木を切っている間にも、雪はしんしんと降り、夕方帰るころには、もう山を下りられないほど積もりました。

ふたりは仕方なく山小屋に泊まりまることにしました。しかし山小屋といっても、食べ物も布団もありません。とにかく火をたいて湯を沸かしました。

外は吹雪になり、風が山小屋の入り口のむしろに噴き上がり、そのたびに雪が入り込んできます。ふたりは黙って火にあたっていました。

そうしているうちに夜が更けてきて、吹雪はますますひどくなりました。不意に強い風が吹いたかと思うと、何か雪の塊のようなものが吹き込んできました。それは真っ白い着物を着た、美しい女でした。

女は父親に息を吹きかけると、父親はたちまち凍ってしまいました。男の子が恐ろしさのあまり声も出せずにいると、女は、「今見たことを誰にもいうな。もしも誰かにしゃべったらおまえの命はない」といってすうっと出ていきました。



それから何年も経ちました。男の子は大人になり、美しい女房をもらいました。やがて子供が三人生まれ、貧しいながらも家族仲良く幸せに暮らしていました。

さて、ある冬のうんと寒い晩のことです。外では雪がしんしんと降っていました。子供たちは囲炉裏のこっち側で遊び、女房は向こう側で火にあたっていました。その時、男は、ふとあの山小屋での出来事を思い出しました。

男はその出来事を話し出すと女房の顔つきがにわかに変わります。女房は立ち上がると「お前さん。あれほどしゃべるなと言ったのに、とうとういってしまったね」と低い声でいうではないですか。

そして女房は、「こうなったらおまえの命を取らなければならない。でも、この子たちがかわいそうだ。命をとるのはやめておこう。しかし、わたしは、もうここにいることはできない。どうか子どもたちを丈夫に育てておくれ」というと、すうっと外に出てゆき、そのまま雪の中に姿を消しました。女房は雪おなごだったのです、と物語は結ばれます。



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恐怖話です。雪女のお話のバリエーションの一つですね。雪女の伝承は古く、いまから700年ばかり前の室町時代にはすでにあったとされます。

このお話しでは、主人公の親子が、雪女にとりつかれてしまいます。父親は命をとられてしまいました。息子も雪女との間に子供をもうけていなければ父親と同じ運命を歩んでいたことでしょう。そう、息子は、行きがかり上、命拾いしました。



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