日本の昔話 3 より 『傘屋の天のぼり』 由来譚の存在理由
2017.08.31 Thursday
むかし、あるところに、傘屋の息子で怠け者の若者がいました。
ある天気のよい日、若者は、皆が仕事に精を出す中、干してあるたくさんの傘の影で寝転んで、本など読んでいました。
すると、突然冷たい風が吹き出し、若者は、干してある傘が飛ばないように柄を握ると、風はますます強くなり、若者は、傘ごと吹き飛ばされてしまいました。天のてっぺんまで吹き上げられた若者は、一面の雲の上をうろつきます。
すると雲の中から、人間の匂いを感じて、白髪頭を振り乱した、しわだらけの恐ろしい婆さんが現れて、若者を見つけると、驚いて、ここは人間の来るところではないといい、自分は雨降りばばあだと名乗ります。
そして今は忙しくて、若者の話を聞いている暇はないから、雷が来たら相談してみるといいと言って、大きなじょうろで雨を降らしながら去っていきました。
若者が取り残されてまごまごしていると、やがてごろごろと音がして稲光がし、恐ろしい形相の雷がやってきます。そしてやはり、ここは人間の来るところではないと言うので、若者は飛ばされてきた経緯を話しました。
雷はさては風の神の仕業だなと言うと、仕方ないからしばらく置いてやるといい、その代わりに、下界のいたずら者や、雨の降る日に裸でいる子どもがいたら、俺に知らせろといいました。どうやらへそを取ってしまうようです。
そして、腹が減ったらこれを食え、と言って重箱をくれました。それから青い窓があるから、そこを覗くなと注意して遠くの方へ行ってしまいました。
若者は、やれやれと一安心したところで腹が減ったので、重箱を開けてみます。中に入っていたのはへその佃煮でした。とても気持ち悪くて食べられません。
若者は、その重箱を置いて、あたりを見回すと、青い窓があります。雷に覗くなと言われましたが、つい覗いてしまいました。そこは雲の切れ間でした。若者は真っ逆さまに地上に落ちていきます。
しかし、地べたに叩きつけられるところを、うまい具合に桑の木に引っかかって命拾いします。
そこへさっきの雷が現れて、桑の木に引っかかっている若者を見つけると、さては青い窓を覗いて落ちたなと言うと、こいつは見逃してやろうと、へそを取らずに、またどこかへ行ってしまいました。
それで今でも雷が鳴るときには、桑の木を軒先に挿して、雷よけにするのだそうです、と物語は結ばれます。
傘屋の息子の冒険と、雷よけの桑の木に関する由来が語られる、由来譚になっています。
これまでも、日本の昔話では、多くの由来端に触れてきました。初めのうちは、これらの由来を伝えるべき理由を探していましたが、どうも伝えること自体が目的であり、それ自体に大きな理由があるのだなという結論に至っています。
ある天気のよい日、若者は、皆が仕事に精を出す中、干してあるたくさんの傘の影で寝転んで、本など読んでいました。
すると、突然冷たい風が吹き出し、若者は、干してある傘が飛ばないように柄を握ると、風はますます強くなり、若者は、傘ごと吹き飛ばされてしまいました。天のてっぺんまで吹き上げられた若者は、一面の雲の上をうろつきます。
すると雲の中から、人間の匂いを感じて、白髪頭を振り乱した、しわだらけの恐ろしい婆さんが現れて、若者を見つけると、驚いて、ここは人間の来るところではないといい、自分は雨降りばばあだと名乗ります。
そして今は忙しくて、若者の話を聞いている暇はないから、雷が来たら相談してみるといいと言って、大きなじょうろで雨を降らしながら去っていきました。
若者が取り残されてまごまごしていると、やがてごろごろと音がして稲光がし、恐ろしい形相の雷がやってきます。そしてやはり、ここは人間の来るところではないと言うので、若者は飛ばされてきた経緯を話しました。
雷はさては風の神の仕業だなと言うと、仕方ないからしばらく置いてやるといい、その代わりに、下界のいたずら者や、雨の降る日に裸でいる子どもがいたら、俺に知らせろといいました。どうやらへそを取ってしまうようです。
そして、腹が減ったらこれを食え、と言って重箱をくれました。それから青い窓があるから、そこを覗くなと注意して遠くの方へ行ってしまいました。
若者は、やれやれと一安心したところで腹が減ったので、重箱を開けてみます。中に入っていたのはへその佃煮でした。とても気持ち悪くて食べられません。
若者は、その重箱を置いて、あたりを見回すと、青い窓があります。雷に覗くなと言われましたが、つい覗いてしまいました。そこは雲の切れ間でした。若者は真っ逆さまに地上に落ちていきます。
しかし、地べたに叩きつけられるところを、うまい具合に桑の木に引っかかって命拾いします。
そこへさっきの雷が現れて、桑の木に引っかかっている若者を見つけると、さては青い窓を覗いて落ちたなと言うと、こいつは見逃してやろうと、へそを取らずに、またどこかへ行ってしまいました。
それで今でも雷が鳴るときには、桑の木を軒先に挿して、雷よけにするのだそうです、と物語は結ばれます。
傘屋の息子の冒険と、雷よけの桑の木に関する由来が語られる、由来譚になっています。
これまでも、日本の昔話では、多くの由来端に触れてきました。初めのうちは、これらの由来を伝えるべき理由を探していましたが、どうも伝えること自体が目的であり、それ自体に大きな理由があるのだなという結論に至っています。
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