子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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日本の昔話 5 より 『おわれ化けもの』 受け入れる勇気をくれる物語
むかし、あるところに、何事も人に逆らわない質の男がいました。男はやがて女房をもらい、その日暮らしの貧乏な生活を送っていました。



ある年の大みそかの晩、女房は亭主にいいました。「きょうはひとつ頼みがあります。どこを歩いても、破れないわらじを二足作ってください」

亭主は、大みそかの晩だというのに、そんなわらじがなぜ必要なのか疑問に思いましたが、女房がわけを聞かずにどうしてもというので、何事も人に逆らわない質の亭主は、いわれるままわらじをつくりました。

すると女房は、亭主に、わらじを履いて一緒に出かけようといいます。なんでも女房の十四、五歳のころからの思いがとげられるというのです。十四、五歳といえば十年がかりの思いです。亭主は、そんな大ごとなら、聞いてやらないわけにはいくまいと、わらじを履きました。

さらに女房は亭主に鍬を持たせ、自分は提灯をともして先導しました。



ふたりは、真っ暗な道を歩いて山奥に来ました。そこには少しばかりの平地があって大きな立派な木が立っていました。

女房は、「さあ鍬でこの木の根っこを掘ってください」というと、亭主はいう通りに堀始めました。

すると、たった今こしらえたような、真新しい石のお棺が出てきました。女房は、これを担いでうちまで運べといいます。亭主は人に逆らわない質ですから言われた通りお棺を担ぎました。

すると女房は、一足先に帰って、熱いおもちが食べられるように支度をするからと、先にさっさと帰ってしまいました。

亭主はわけもわからず、重たい石のお棺をしょって、山を下りていきました。



亭主は、かれこれ十町か二十町ほど行ったところで、ひょいと後ろを振り向いて驚きました。担いだお棺の中から、朝日のようなまなこをした鬼が、顔を出してぎろりとこちらをにらんでいるのです。

亭主は大慌てで、背中のお棺を岩にぶつけたり、木にこすりつけたりして振り落とそうとしましたが、ぴったりくっついて落ちません。



亭主はお棺を担いだまま、やっとのことで家までたどり着きました。そして裏座敷にあがろうとしましたが、女房が、「いえいえ、どうか表座敷から上がってください」といって亭主を止めました。

亭主は「これはいったいどういうことなんだ」というと女房は「十四、五歳のころからの思いが今とげられるのです」というばかりです。

亭主はいわれた通り表座敷から上がって、お棺を下ろそうとすると、お棺はひとりでに落ちました。

女房は、亭主に、「ご苦労様でした」といって、熱い餅を食べさせ、床をとって休ませました。

そのうち夜なかになると何やら表座敷ではガラドン、ガラガラドンとものすごい騒ぎになりました。



明けて元旦の朝になりました。亭主は起きて表座敷のふすまを開けようとしますがびくともしません。なんと表座敷は畳から天井までぎっしりと大判小判で詰まっているのです。

女房はそこで亭主に初めてわけを話しました。女房は十四、五歳の時に、昨夜の出来事を果たしてお金持ちになる正月二日の初夢を見たというのです。それが今かなったというのです。

女房はこれまで七人の男の女房になったけれども、大みそかの晩に夫にわらじをつくってくれというと「大みそかの晩に何事だ」と叱られて相手にされず、それがもとで夫婦の縁を切られてきました。

しかし、七人目のあなただけが、わたしのいう通りにしてくれたので宝を得たのだといいました。こうして二人は一生富栄えて暮らした、と物語は結ばれます。



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この物語の亭主は争いごとの嫌いな、気の弱い男だったかもしれません。一般的に弱いと呼ばれる人に、強さを強いても困難ですし、受け入れていくしか、ほぼほぼ処世していく手立てはないでしょう。

この物語は欠点を含めたありのままの自分を受け入れて処世し成功した男の物語ともいえます。しかし、欠点と呼ばれることを受け入れるのには勇気が必要です。

この物語を読むと、弱い者は、そんな勇気がもらえます。そう欠点と思われたところは逆に長所となるのですから。欠点と長所は紙一重なのかもしれません。そう彼の特質は富を得るきっかけになっています。



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18:09 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : かがりん :
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