日本の昔話 5 より 『蛇の泊まり』 見るなの禁の物語の一類型,
2019.08.11 Sunday
むかし、あるところに、ばあさんがひとり住んでいました。ばあさんはひどい貧乏暮らしで、その日食べるものにも事欠く有様でした。
ある日の夕方ばあさんは、畑仕事を終えて家に帰り、囲炉裏にあたっていました。そこへ綺麗なあねさまがやってきて、ひと晩の宿をたのむなり、戸口に座り込んでしまいました。
ばあさんは、「泊めてやることはたやすいが、御覧の通りのあばら家で、人様を泊めるどころじゃない。それに食べるものなくてな。だからすまないが、どこかよそで泊まっておくれ」といって断りました。
けれどもあねさまは、「いえいえ、それなら心配いりません。わたしは食べるものを持っていますから、どこか雨露をしのげればいいのです」といいました。
いくらばあさんが断っても、あねさまは泊めてくださいというので、ばあさんは仕方なく泊めてやることにしました。
あねさまは家にあがると、「お腹はすいていませんから晩御飯入りません」といって囲炉裏にあたります。ばあさんは「それならもう寝るがいい。床を敷いてあげるから、こっちへおいで」とあねさまを隣の部屋に通しました。
するとあねさまは、「この部屋は畳何畳じきですか」と聞きました。ばあさんは「十二畳じきだよ」と答えると、あねさまは、「では、今夜この部屋を全部使わせてもらってもいいでしょうか」と聞くのでばあさまは、「ああ、かまわないとも。この家はわたしのほかには誰もいないもの。好きなようにつかっていいよと」答えました。ばあさんはそう言って囲炉裏の部屋に戻りました。
しばらくしてばあさんはあねさまのいったことが気になりました。「十二畳全部使っていいかと聞いたな。いったいどうやって寝るのだろう」
ばあさんはそっと立って戸の隙間から隣の部屋をのぞくと腰を抜かさんばかりに驚きました。大きな蛇が部屋いっぱいにとぐろを巻いて寝ているではありませんか。
ばあさんは、「わしの命も今夜限りだわい」と観念して、震えながら寝床に入り、まんじりともせず夜が明けるのを待ちました。
朝になりました。ばあさんが恐る恐る起きてきたあねさまを見たところ、ゆうべここに来た時と変わらない、きれいなあねさまぶりです。
やがてあねさまは朝ご飯を済ませると、いとまごいをして戸口へ出ました。そして、ばあさんに、「わたしの寝姿を見られたのはつらいけれど、宿を貸してくれたお礼に一生の宝物をあげましょう」といって桐の箱をくれました。
あねさまは「でもそれは決して開けてみないでくださいね」といって、どこかへ行ってしまいました。ばあさんはいわれた通り桐の箱を一度もあけず棚にあげておきました。
それからというもの、ばあさんの暮らしはだんだん良くなってきました。それに一生懸命働いたのでお金も着物もできて、米俵も天井までつかえるほど積みあがります。
こうしてばあさんは、一生安楽に暮らしたそうです、と物語は結ばれます。

純粋に見るなの禁の物語ですね。日本型の見るなの禁の物語は『つる女房』に代表されるように、たいてい異類婚姻譚の物語とセットですが、この物語は異類の者は登場するものの、同性故に婚姻はなされず、あるいは一夜限りの泊まりという筋書きで、純粋に見るなの禁の物語となっています。
しかも禁は二段階に分かれ一度の禁を破ってしまっても即座に異類の者は去っていかず、二度目の禁を守ることによって主人公のばあさんは福を得ます。
もっとも『つる女房』にしても、よく考えると禁は二段階に分かれ、初めの禁を守ったことにより高価な反物を得ていると考えれば、婚姻関係はなされるものの、結果的には同じ筋の物語ともいえます。
まあ、日本の見るなの禁の物語はバリエーションが多く、多様性があります。『魚の嫁さん』はちょっと残念な結末でした。

ある日の夕方ばあさんは、畑仕事を終えて家に帰り、囲炉裏にあたっていました。そこへ綺麗なあねさまがやってきて、ひと晩の宿をたのむなり、戸口に座り込んでしまいました。
ばあさんは、「泊めてやることはたやすいが、御覧の通りのあばら家で、人様を泊めるどころじゃない。それに食べるものなくてな。だからすまないが、どこかよそで泊まっておくれ」といって断りました。
けれどもあねさまは、「いえいえ、それなら心配いりません。わたしは食べるものを持っていますから、どこか雨露をしのげればいいのです」といいました。
いくらばあさんが断っても、あねさまは泊めてくださいというので、ばあさんは仕方なく泊めてやることにしました。
あねさまは家にあがると、「お腹はすいていませんから晩御飯入りません」といって囲炉裏にあたります。ばあさんは「それならもう寝るがいい。床を敷いてあげるから、こっちへおいで」とあねさまを隣の部屋に通しました。
するとあねさまは、「この部屋は畳何畳じきですか」と聞きました。ばあさんは「十二畳じきだよ」と答えると、あねさまは、「では、今夜この部屋を全部使わせてもらってもいいでしょうか」と聞くのでばあさまは、「ああ、かまわないとも。この家はわたしのほかには誰もいないもの。好きなようにつかっていいよと」答えました。ばあさんはそう言って囲炉裏の部屋に戻りました。
しばらくしてばあさんはあねさまのいったことが気になりました。「十二畳全部使っていいかと聞いたな。いったいどうやって寝るのだろう」
ばあさんはそっと立って戸の隙間から隣の部屋をのぞくと腰を抜かさんばかりに驚きました。大きな蛇が部屋いっぱいにとぐろを巻いて寝ているではありませんか。
ばあさんは、「わしの命も今夜限りだわい」と観念して、震えながら寝床に入り、まんじりともせず夜が明けるのを待ちました。
朝になりました。ばあさんが恐る恐る起きてきたあねさまを見たところ、ゆうべここに来た時と変わらない、きれいなあねさまぶりです。
やがてあねさまは朝ご飯を済ませると、いとまごいをして戸口へ出ました。そして、ばあさんに、「わたしの寝姿を見られたのはつらいけれど、宿を貸してくれたお礼に一生の宝物をあげましょう」といって桐の箱をくれました。
あねさまは「でもそれは決して開けてみないでくださいね」といって、どこかへ行ってしまいました。ばあさんはいわれた通り桐の箱を一度もあけず棚にあげておきました。
それからというもの、ばあさんの暮らしはだんだん良くなってきました。それに一生懸命働いたのでお金も着物もできて、米俵も天井までつかえるほど積みあがります。
こうしてばあさんは、一生安楽に暮らしたそうです、と物語は結ばれます。
純粋に見るなの禁の物語ですね。日本型の見るなの禁の物語は『つる女房』に代表されるように、たいてい異類婚姻譚の物語とセットですが、この物語は異類の者は登場するものの、同性故に婚姻はなされず、あるいは一夜限りの泊まりという筋書きで、純粋に見るなの禁の物語となっています。
しかも禁は二段階に分かれ一度の禁を破ってしまっても即座に異類の者は去っていかず、二度目の禁を守ることによって主人公のばあさんは福を得ます。
もっとも『つる女房』にしても、よく考えると禁は二段階に分かれ、初めの禁を守ったことにより高価な反物を得ていると考えれば、婚姻関係はなされるものの、結果的には同じ筋の物語ともいえます。
まあ、日本の見るなの禁の物語はバリエーションが多く、多様性があります。『魚の嫁さん』はちょっと残念な結末でした。
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