子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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日本の昔話 4 より 『蛇島』 民衆の切実な思いを乗せる昔話という媒体
むかし、あるところに、仲のいい漁師が五人いました。ある日のこと五人は、天気がいいので魚がたくさん取れそうだといって、船に乗り海に出ました。

とてもいい日和で、波も静かでした。ところがどうしたことか魚は一匹も取れませんでした。そればかりか船はどんどん沖へ流されていくのです。五人は、かわるがわる、力いっぱい櫓をこぎましたが無駄でした。

五人は、妻にも子どもにも会えなくなると思って、おいおい泣き出しました。

ところが五人のうちの一人が、ふと頭を上げて叫びました。「おうい、みんな、島が見えるぞ」あるはずのない島が漁師たちの目の前に現れたのです。

漁師たちの船は、どんどん島のほうへ流されていき、ついには島に打ち上げられました。五人はとりあえず島にあがって、家に帰る機会をうかがうことにしました。



ところで島にあがってみると、美味しそうな実のなる木がたくさんありました。腹を減らしていた漁師たちは、その実を食べてみると、それは何ともいえないおいしいものでした。

漁師たちはだんだん島の奥へ入っていきました。島の奥に入れば入るほどおいしい木の実はたくさんなっていました。

漁師たちは、この島に人がいれば、この実を放っておくはずがない。ここは無人島だろうと話し合いました。しかし、そこにひとりの男が現れます。



男は、漁師たちをここに招いたのは自分だといい、おなかがすいているだろうからご飯を食べてくれといいます。

漁師たちは、木の実は食べたが、ご飯ならよばれたいというと、男は島の奥に向かって怒鳴りました。「おういご飯を持ってこい」

するとすぐに、ごはんやお酒が運ばれてきました。漁師たちは、食べたり飲んだり、たらふくごちそうになりました。

そのうちに男が頼みごとがある言いました。男は「実は、わしは人間ではない。この島の主の大蛇なのだ。向こうの島に大きなむかでがいて、わしの命を狙っている。これまでは海で戦ってきたが、今度は陸の上での戦いになるであろう。陸で戦ったら今度は負るかもしれない。その時は、あんたたちが代わりにむかでと戦ってほしい」といいました。

そして男は漁師たちを崖の上まで連れていき、大きな岩を砕いてたくさんの石を作り、「もしわしが負けそうになったら、合図をするから、これをむかでにぶつけてくれ」といいました。



そうしてるうちに、遠くの島から黒い山のようなむかでが海を渡ってきました。ようく見ると、頭はもうこっちの島にあがっているのに、尾はまだ遠くの島に続いていました。

島の主は大蛇の姿になって、大むかでと戦い始めました。大蛇は大むかでに攻め込まれて、ついに漁師たちに合図を送りました。

五人の漁師は、ここぞとばかりに大きな石を次々に投げつけ、とうとうむかでを退治してしまいました。



島の主は大喜びして「お礼に島をやる。田んぼも畑も全部お前たちのものだ」といいました。漁師たちは、「そんなことをいっても、畑を耕す鍬もなければまく種もない」というと島の主は「それなら今から村に帰って、連れ合いや子供を連れてきたらいい」といいました。

漁師たちが舟をこぎだすと、今度はたちまち元の港について、村に帰ることができました。五人の漁師は種や畑を耕す道具を船に積み込み、妻や子供を連れて島に戻りました。そして幸せに暮らしたということです。

その島が、どこにあるのか誰も知りませんが、「蛇島」という島があるそうです、と物語は結ばれます。



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昔話はハッピーエンディングを目指します。話始めこそ、主人公たちは、途方に暮れてしまうような展開を見せますが、実はファンタジーの入り口に立たされたのです。そして物語終盤は、幸せの島、蛇島は、どこにあるのか知れませんが、どこかに確かにあるという設定です。

昔話の語り部である民衆が、それを聞く民衆に、夢を与える話ですね。確かにある幸せの島を思い描くと、普段は苦しいであろう生活に、活力を見いだせたのではないでしょうか。昔話は、民衆の切実な思いを乗せています。



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19:01 : 日本の昔話 4 秋 : comments(0) : trackbacks(0) : かがりん :
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