子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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日本の昔話 4 より 『話ずきな殿さま』 昔話のフォーマットを誇張した笑い話
むかし、あるところに、たいそう昔話の好きな殿さまがいました。殿さまは、毎晩、家来を呼んで、昔話を語らせました。

家来たちは、かわるがわる、たくさんの昔話を語りましたが、殿さまは、決して飽きるということがありませんでした。

そのうち、とうとう話の種が尽きてしまい、家来たちは困ってしまいました。そこで相談したあげく、あちこちに立札を立てました。

「殿さまに、『もうたくさんじゃ。昔話は飽きた』といわせた者には、望み通りの褒美を与える」

これを見た町の人々は我も我もと、大勢申し出ました。そして、殿さまの前で、昔話を語りました。

けれども、殿さまは、話がひとつ終わるとすぐ、「もっと別の話を聞かせろ」というので、誰も彼も、話の種が尽きてしまいました。

そのため、町の人々は、殿さまから、「なんだ、それでおしまいか」と、怒られて、すごすごと引き上げていきました。



ある日のこと、ひとりの娘がやってきて、「わたしに、昔話を語らせてください」と、申し出ました。

殿さまは「おまえ、本当にわたしを飽きさせるまで、昔話を語れるか」と、むっつりした顔で聞きました。

娘は「はい、大丈夫でございます」と、答えました。そして、昔話を始める前に殿さまにこう言いました。

「わたしが話を始めたら、一息入れるごとに、『おーやれや、ずんどへいへい』と、あいづちを打ってください。そうでないと話が先に進まないのです」

殿さまは、「ああ、よしよし。何べんでもあいづちを打ってやる」と、引き受けました。そこで娘は語り始めました。



「むかし、あるところに、大きな柳の木があったとさ」「うん、それからどうした」殿さまがそう答えると、娘は、「そうじゃありません。『おーやれや、ずんどへいへい』とあいづちを打ってください」といいました。

殿さまは仕方なく、「おーやれや、ずんどへいへい」といいました。そこで娘は話を続けました。

「その柳の木の根っこの洞穴に、ねずみが子っこを産んだとさ」
「おーやれや、ずんどへいへい」

殿さまがあいづちを打つと、娘は、「そうです、そうです」といって、また話を続けました。

「そのネズミの子っこが大きくなって前の橋を渡りだしたとさ」
「おーやれや、ずんどへいへい」

「まず、大きなねずみが、『ちゅうちゅう、ちゅうちゅう』と橋を渡って、『ちゅっちゅっ、ちゅっちゅっ』と、向こう側へ行ったとさ」
「おーやれや、ずんどへいへい」



「するとまた、次のねずみが、『ちゅうちゅう、ちゅうちゅう』と橋を渡って、『ちゅっちゅっ、ちゅっちゅっ』と、向こう側へ行ったとさ」
「おーやれや、ずんどへいへい」

「するとまた、次のねずみが、『ちゅうちゅう、ちゅうちゅう』と橋を渡って、『ちゅっちゅっ、ちゅっちゅっ』と、向こう側へ行ったとさ」
「おーやれや、ずんどへいへい」

「するとまた、次のねずみが、『ちゅうちゅう、ちゅうちゅう』と橋を渡って、『ちゅっちゅっ、ちゅっちゅっ』と、向こう側へ行ったとさ」

娘は、このくだりを百ぺん繰り返しました。殿さまはそのたびに「おーやれや、ずんどへいへい」とあいづちを打ちました。しかし、さすがの殿さまも飽きてきて、しまいには、あいづちを打つのをやめてしまいました。

そして、「もうたくさんじゃ。昔話は飽きた」といって、奥へ引っ込んでしまいました。そこで娘は、望み通りにほうびをたくさんもらって帰った、と物語は結ばれます。



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昔話のフォーマットとして同じ状況を繰り返し説明するというのがあります。しかし、それは、たいていは三回です。この昔話でも、それは守られています。

ところが、この昔話の中の昔話では、百ぺん繰り返されます。娘の口車に乗せられて、殿さまは嫌というほど、同じあいづちを打たなければならなくなります。昔話はいつの間にか拷問になっていました。

しかし昔話好きの殿さまを黙らすには、こうするしかありませんでした。まあ笑い話ですね。昔話好きとしては、殿さまへの同情の念がわきました。



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