子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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日本の昔話 4 より 『とら猫と和尚さん』 猫の恩返し
むかし、あるところに、ひどく貧乏なお寺がありました。お寺には檀家がおらず、和尚さんにお経を頼みに来る人もいませんでした。

和尚さんは、することもなし、お金もなし、囲炉裏にあたって、がくらー、がくらーと、居眠りばかりしていました。そこで村の人たちは、和尚さんのことを、「居眠り寺の和尚さま」と呼んでいました。

和尚さんは猫を一匹飼っていました。猫は「とら」という名のとら猫でした。和尚さんは粗末な夕ごはんが済むといつも「とら、とら、さあ寝よう。おいで、おいで」といいました。

するととらは、ひょいひょいひょいと、先に立って寝床に入り、和尚さんと一緒に、頭を並べて寝ました。



ある朝のこと、和尚さんは起きてみると、台所に、米だの味噌だの大根などがおいてあり、そのうえ魚まであるのです。

和尚さんは、おかしなこともあるものだ思いましたけれど、せっかくなので、それでごちそうを作り、とらと一緒に食べました。

ところが次の朝も、また次の朝も、起きてみると台所には、それらの食べ物がおいてあるのです。和尚さんはどうもおかしい、ひょっとすると、とらの仕業かもしれないと思い、ある日とうとう確かめてみることにしました。



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晩になって和尚さんはいつものようにとらと一緒に寝床に入りました。そしていびきをかいて寝たふりをしていると、案の定とらはこっそり寝床を抜け出して台所にいきます。

そしてとらは、手ぬぐいでほっかむりをすると、裏口の障子をそろそろっと開けて、外へ出ていきました。和尚さんはとらの後をつけました。

とらは、山のほうへ、ひぃひょいひょいと登っていきました。和尚さんも気づかれないように登っていくと、なんだかおかしな声がしてきます。



和尚さんは近づいてみると、大勢の猫が車座になって「とら殿御座ねば、とんと調子合わぬ。とら殿御座ねば、とんと調子合わぬ」と歌っているのでした。

和尚さんは木の陰からそっと見ていると、とらは、「やあやあやあ、遅くなって申し訳ない。今夜は和尚さまが、なかなか寝つかなくてな」と言い訳をして輪の中に入り、「さあさあ、踊ろう、踊ろう」と声をかけました。

とらが踊りだすと、他の猫たちも踊り始めました。とらは踊りの名人で集まった猫たちに踊りを教えていたのです。

踊りの稽古が終わると、猫たちは皆お礼に、米だの味噌だの大根だの魚だのを、とらの前に置きました。これらが、毎朝台所にある食べ物の正体だったのです。



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さてしばらくして、ある夜のこと和尚さんはとらの夢を見ました。とらは「和尚さま和尚さま。おれは今まで和尚さまに世話になってきたが、もう年取って長くは生きられない。でも生きているうちにもういっぺん、和尚さまに花を咲かせたい。おれの話をよく聞いてほしい」といって話し始めました。

「あと三、四日すると、長者のひとり娘が死んで葬式がある。お墓にお棺を埋める時、おれがお棺を宙吊りにして、誰にも降ろさせないようにするから、その時、和尚さまが、おれの名前を呼んでくれ。そうしたらお棺をお墓の中におろすから」といいました。

和尚さんはおかしな夢を見たものだと思いましたが、四日ほどすると、本当に長者のひとり娘が死にました。



長者の家では偉い和尚さまが大勢呼ばれ、立派なお葬式が行われました。ところがいざお棺をお墓に埋めようものの、お棺はスッスッスッスッと宙に浮いてしまい、どの偉い和尚さまがお経を上げてもお墓に納まりません。

誰かお棺をお墓に納めてくれる人がいないものかというときに、近所のばあさまが「もう一人頼んでねえ和尚さまがいる。ほれ居眠り寺の和尚さまだ」いいました。

偉い和尚さまができないことを、あの居眠りでらの和尚さまができるわけがないと皆はいいましたが、ものは試しと使いのものを呼びにやりました。



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使いのものが頼みに行ってみると、和尚さんは囲炉裏にあたって、がくらー、がくらーと居眠りをしていました。それでも使いの話を聞くと和尚さんはボロボロの衣を着てお墓に出かけていきました。

見ると本当にお棺が宙吊りになっていました。和尚さんは夢でとらがいっていた通りに「とらやー、とらや、なむとらや。なむとらやー、とらや、とらや」ととらの名を唱えました。するとお棺は、するするとおりてきて、お墓にぴたりと納まりました。

「なんともありがたい、ありがたい」長者は何編もお礼をいって、早速和尚さんを屋敷に招き、たいへんなごちそうを振る舞いました。それから朱塗りの籠で、居眠り寺まで送り届けてくれました。



そして長者は「こんなに立派な和尚さまを、あんなぶっ壊れた寺においておくのは申し訳がない」といって、間もなく立派なお寺に建て替えてくれました。

それからというもの村の人は、われもわれもと、この和尚さんのお寺の檀家になりました。こうして和尚さんは猫のおかげで一生楽に暮らしました、と物語は結ばれます。



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動物報恩譚のひとつに数えることができるでしょう。現実世界でも、猫に恩返しのようなことをされたというような話をよく聞くので、世界の民話にも、この手のお話が、もっとあって然るべきものではないかと思いました。

今のところ、猫が恩を返すお話、もしくわそれに類するお話は少数です。ありそうであまりないお話です。

和尚さんが、命を全うしたあとのことを思うと、和尚さんが、猫のとらと一緒に、天国でひっそりと慎ましく過ごしている様子が目に浮かびます。こんな人生もいいかもと感じています。



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