子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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日本の昔話 4 より 『天狗のうちわ』 おごりが戒められる物語
むかし、ある村の丘に、大きな樫の木があって、天狗が舞い降りると噂されました。人々は怖がって誰も近寄らなくなりました。

この村にはとても利口な子どもがいました。この子は、ある時、天狗様を騙して、天狗のうちわを取ってやろうと思いました。

そして、丘の樫の木に、火吹き竹を持って出かけました。子どもは、火吹き竹の穴の方に目をあて、遠くを見るふりをしました。

そして大きな声で、「あ、京が見える、大阪が見える」といって、面白そうに火吹き竹をのぞいていました。するとそこへ、樫の木の葉をざわつかせて、天狗が降りてきました。



天狗は、赤い顔をして、鼻が高く、白く長い髪を、肩のあたりに振り分けていました。そして一本歯の高下駄を履き、手には鳥の羽で作ったうちわを持っていました。

天狗は地面に降り立つと、子どもの持っている火吹き竹を指して「それは何か」と聞きました。子どもは「これは遠眼鏡というものだ」と答えました。

天狗は「そうか、京や大阪が見えるとは不思議なものだ。わしにも見せてくれ」といいました。

しかし子どもは「これはだいじなものだから、只ではわたさん、天狗のうちわと交換だ」というので、天狗はしばらくの間、お互いの道具を交換することにしました。

しかし、天狗は、火吹き竹に目をあててみますが、何も見えません。天狗が「見えないぞ、見えないぞ」と騒いでる間に、子どもは村へ逃げ帰ってしまいました。

子どもは家につくとあたりを締め切って、試しに「鼻、高くなれ。鼻、高くなれ」と天狗のうちわで自分の鼻を仰いでみると、たしかに鼻は、みるみる高くなります。逆もまた然り。そしてそのうち、いいことを思いつきました。



夜になると子どもは町へ出て、長者の家に忍び込みました。そして、寝ている長者の一人娘の鼻を、天狗のうちわであおぎ、鼻を高くしてしまいました。

夜が明けてみると、長者の娘は自分の鼻を見て泣き叫びました。とても人前には出られません。長者の家では上を下への大騒ぎです。

子どもは頃合いを見計らって、長者の家の前を、「鼻直しー、鼻直しー」と大声をあげて歩きました。

長者の家では、すぐに子どもを呼び止めて、「礼はいくらでもするから娘の鼻を直してくれ」と頼みました。

そこで子どもは、娘の寝ている座敷に通されたので、もったいぶって天狗のうちわを取り出し、「鼻、低くなれ。鼻、低くなれ」と唱えながらうちわで娘の鼻をあおぎました。娘の鼻はたちまちもとに戻りました。

長者の家の人たちは大喜びして子どもにお礼のお金を山と積んで与えました。



お金はたんまり手に入ったしテングノウチワはあるしで子どもはすっかり有頂天になりました。

今度は自分の鼻が、どれだけ伸びるかやってみようと思いつきました。そこで原っぱに仰向けになって、「鼻、高くなれ。鼻、高くなれ」と唱えながら自分の鼻をパタパタあおぐと、鼻はどんどん伸びていきました。

子どもは面白くて、あおぎ続けました。そしてとうとう天にまで届いてしまいました。



さて、天では、雨降りばあさんが昼寝をしていました。そこへ雲の下から横っ腹をつつくものがあるのでびっくりして見ると、そこには人間の鼻がありました。ばあさんは、その鼻の先をしっかり捕まえて、雷さんを呼びました。

雷さんは何事かとかけつけると、なんと人間の鼻が雲を突き抜けていました。雷さんは、太鼓をを叩くバチで、思いっきりその鼻を殴りつけました。

子どもは飛び上がりました。そしてあわてて「鼻、低くなれ。鼻、低くなれ」と唱え天狗のうちわであおぎました。

ところが天では、雨降りばあさんが鼻の先をつかんでいるので、子どもの体のほうが天に吊り上げられました。

その時突然おひさまが強く照りだし、雨降りばあさんも雷さんもいきなり鼻を放り出して逃げていったので、子どもはたまりません。



子どもは天から地へとドスンと落ち、尻を嫌と言うほど打ち付けてしまいました。子どもは泣いていましたが、それがもとで魂が抜けたような腑抜けの子になりました。

子どもは皆に「天狗のつかまれもの」と呼ばれましたが、村の年寄りが、天狗の好きなお酒と油揚げを供えて、お祈りをしてくれたので、なんとか元気になりました。

さてあの天狗のうちはですが、子どもが天から落ちるときに、目を回して手放したのを、天狗が取り戻したということです、と物語は結ばれます。



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天狗という妖怪がが登場する物語をこのブログで扱うのは『鼻高扇』『なにがきらい』『かくれ蓑笠』に続いて四話目です。中でもこのお話は序盤が『なにがきらい』後半は『鼻高扇』に展開がそっくりです。

「天狗になる」という高慢な態度を表すことわざがあります。主人公の賢い子どもは、まさに天狗のうちわによって天狗になり、その高慢さが戒められるのです。



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