子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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日本の昔話 4 より 『きつねと熊』 洋の東西を超えた共通のモチーフ
むかし、ある山に、狐と熊が住んでいました。ところで、お人好しの熊は、いつも狐に騙され、得をするのは狐でした。



ある時、狐は熊に言いました。「熊さん、熊さん。山のものを取って食うのもいいが、たまには二人で畑を耕して、何か作って食べようではないか」

熊は賛成し、その気になって一生懸命畑を耕しました。そこへ狐が大根と人参と長芋の種を植え付けました。

そして狐は言いました。「熊さん、熊さん。これが取れたら土から上のものは、みんなお前さんにやろう。俺は土の下のものだけでいい」

やがて大根と人参と山芋ができました。狐は約束通りそれらを収穫し、熊は大根と人参との葉っぱと長芋の茎をもらって帰りました。



二、三日して熊が狐の家に行ってみると、真っ白で太い大根と、真っ赤でうまそうな人参と、見事な山芋がありました。熊はこれをみて言いました。

「はてな、狐どん。なんだかおまえ、いい方ばかり取ったじゃないか」

狐は「熊さん熊さん、忘れたのかい。おまえが『上のほうがいい、上のほうがいい』と言うから俺は土の下の方で我慢したんじゃないか」とまくしたてました。

熊は「ああそうか、それなら今度実った時は、俺に下の方をくれ」と頼みました。狐は承諾してまた畑を作ろうと言いました。



また熊は畑を耕します。狐が今度は、瓜と、西瓜と、南瓜の種を植えました。

いよいよ実って獲り入れ時になると、熊は約束通り下の方をもらって帰りました。そして狐も約束通り上の方を取りました。

しかし熊は、いざ食べようとすると、どれもこれも、豚のしっぽのような茎や根ばかりなので、とても腹を立てました。

そして狐の家に行ってみると、美味しそうな瓜と、西瓜と、南瓜が、たくさんあるのを見て文句を言いました。

狐はすまして「熊さん、熊さん、『下の方がいい』と言ったのはお前じゃないか。俺は上の方で我慢したんだ」と言いました。熊は返す言葉もありませんでした。



熊はいくら畑を作っても、美味しいところが食べられないので、がっかりして山の中を歩きまわりました。

するとふくろうが木の上から熊に「元気がないな」と声をかけるので、事情を話しました。

ふくろうはこれを聞くと笑いだして「ほっほっほっ。熊さんや、それはお前さんが狐どんに騙されたんじゃ。ひとつわたしがいいことを教えてやろう」と言いました。

ふくろうは話します。「いや実はいま、お百姓が馬を引いていったんだが、馬には急所があって、そこを噛みつかれると、ころっといってしまうんだ。そうすればあとは食い放題。狐どんは馬の肉が好きだから、これを教えてあげなさい」

熊はその馬の急所とはどこかと聞くと、ふくろうは後ろ足の筋だと答えました。早速熊は狐に教えに行きました。



食いしん坊の狐は、話を半分も聞かないうちにすぐにかけだし、お百姓さんの馬のところへいって、いきなり馬の後ろ足に噛みつきました。

すると狐は、すぽーんと馬に蹴られて死んでしまったということです。ずるいことばかりしていると、終わりはこんなものだと物語は結ばれます。



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グリム童話に、そっくりのお話があります。(KHM189) 『お百姓と悪魔』がそれです。しかし物語の結ばれ方は対象的な印象ですね。

このお話の狐をグリム童話ではお百姓さんが担い、そして熊の役回りは悪魔がこなします。これだけで話の方向性は想像できましょう。

そう、このお話では狐のずる賢さがたしなめられるのですが、グリム童話ではお百姓さんの知恵が讃えられるのです。

どちらのお話も登場者が、畑の上か下のどちらかを収穫するかということでお話が展開していきます。洋の東西を超えた共通のモチーフといえます。



また別の切り口で読むと、西洋では、狐はずる賢いという属性をあまり示しません。賢い動物として讃えられるケースが多いのです。狐のずる賢さがクローズアップされるのは日本の昔話に顕著です。



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18:17 : 日本の昔話 4 秋 : comments(0) : trackbacks(0) : かがりん :
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