子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
<< November 2019 | 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 >>



<< 『古事記』 [下の巻] 07 第二十代 安康天皇 徳のなさゆえに暗殺された天皇 | ホーム | 『古事記』 [下の巻] 09 第二十二代 清寧天皇崩御後、空位を治める飯豊王、それ以降 >>
『古事記』 [下の巻] 08 第二十一代 雄略天皇 残虐な行為の末に得た皇位のその後
前節の残虐な行為の末、大長谷王子(オオハツセノミコ)は天皇に即位します。第二十一代雄略天皇(ゆうりゃくてんのう)です。雄略天皇は前節で兄の安康天皇が、誤って殺してしまった大日下王(オオクサカノミコ)の妹の若日下王(ワカクサカノミコ)を大后として娶っています。二人の間に御子はありませんでした。

また雄略天皇は、これも前節での都夫良意富美(ツブラノオオミ)との戦いのさなかでした約束の通り、彼の娘の韓比売(カラヒメ)を娶っています。こちらの間には白髪命(シラカノミコト)という御子がいて、後に第二十二代清寧天皇(せいねいてんのう)となります。



さて、大后のワカクサカノミコが、まだ故郷の河内の日下(大阪府東大阪市日下町)にいた頃のことです。雄略天皇がワカクサカノミコを大和から直越の道(ただごえのみち、大和と難波を結ぶ生駒山を越える道)を通って、河内に訪ねてきた時の話です。

雄略天皇は山の上に来て景色を眺めると鰹木(かつおぎ)を屋根の上に乗せている家が目に入ります。雄略天皇は誰の家かと尋ね、天皇の御殿を真似るとはと立腹します。そして人を遣わし家を焼かせに行かせました。

その家の主は大県主(オオアガタヌシ、大阪府柏原市、八尾市、藤井寺市付近の豪族)なる人物なのですが、彼は恐縮してひれ伏し、雄略天皇に非礼を詫ます。そして品物まで献上しました。品物は犬です。そこで雄略天皇は火を着けるのをやめさせ、そして珍しい、この犬なる品をワカクサカノミコへの求婚の品として送り届けます。

するとワカクサカノミコは天皇が日に背を向けておいでになるとは畏れ多いこととして、自分が直接宮中に参上することを伝えてきました。それを雄略天皇は聞くとワカクサカノミコへの愛情を歌にして使いの者に持たせています。



またある時、雄略天皇が美和河(初瀬川の下流で三輪山付近)で遊んでいた時、川辺で衣を洗っている少女がいました。容姿がとても美しかったので雄略天皇は名を聞き、赤猪子(アカイコ)という名と知ると、彼女に男へ嫁ぐのをやめさせ、もう少し大きくなったら宮中に召し抱えることを告げて宮に帰りました。

ところがアカイコが雄略天皇からお呼びがかかるのを待って、はや八十年の時が立ってしまいます。ようやくアカイコは、もうすでに遅きことは分かっていても、天皇に待っていたという気持ちを伝えなくては気が塞ぐので、宮中に献上品を持って参内します。

すると雄略天皇は、すっかり忘れていたことを告白し、アカイコに、志を守って命令を待ち続け、無駄に盛りの年を過ごさせてしまったことを詫び、歌を詠んで彼女に送りました。

アカイコは、それを聞いて涙を流します。そして彼女も雄略天皇に彼女の正直な気持ちを歌にしてを詠み返します。雄略天皇は、たくさんの品を彼女にほうびに持たせて帰しました。



次は雄略天皇が吉野の離宮に出掛けた時のことです。雄略天皇は、吉野川のほとりで一人の少女に出会いました。その少女がたいそう美しかったので大和の宮殿に連れ帰ります。

その後、雄略天皇は、また吉野に出掛けた最、以前に少女と出会った場所に足台を据え、そこに座り、琴など引きながら連れてきた少女に舞を踊らせました。少女が上手に踊ったので、雄略天皇はその感動を永遠にと歌に詠んでいます。



また同様に雄略天皇が吉野に出掛けて狩りをした時の話です。例の足台に座って、獣を待っていると、虻が飛んできて雄略天皇を刺しました。

するとそれに続いて、トンボが後に続き、虻を食って飛び去りました。雄略天皇はそれを面白がって歌に詠んでいます。



またある時雄略天皇は葛城山(奈良県と大阪府の境にある金剛山地の山)に登りました。その時、大猪が現れて、雄略天皇が、その猪を鏑矢で射ると、その猪は怒って唸りながら走り寄って来ました。

そこで雄略天皇は傍にあった榛の木(はんのき)に登って難を逃れ、その驚きを歌を詠んでいます。



またある時、雄略天皇は、同じように葛城山に多くの官人を連れて登った時のことです。官人は赤い紐を付け青染めの衣装を与えられていました。ふと見ると向かいの山の尾根から、こちらに登ってくる人々があって、それがこちらの官人の人数から着ている装束までそっくりなのでした。

そこで雄略天皇は不審に思って、その一行に、この大和国には私以外に君はいないはずだと供の者に口上を述べさせます。ところが相手の一行も同じ口上を述べてくるではないですか。

雄略天皇は怒って、弓に矢をつがえ、供の者にも弓に矢ををつがえさせると、相手も同じように弓に矢をつがえました。そこで雄略天皇は再び供の者に口上を述べさせます。お互いに名を名乗ってから矢を放とうと。すると向こうが先に名乗りました。

私は凶事も吉事も一言でお告げを下す葛城山の一言主ノ大神(ヒトコトヌシノオオカミ)だと名乗ります。

雄略天皇は相手が神様だとは恐れ入り、太刀や弓矢をはじめ多くの官人たちの衣服を脱がせ、ヒトコトヌシノオオカミを拝んでそれらの品を献上します。

するとヒトコトヌシノオオカミは喜んで受け取ります。そして雄略天皇が帰ろうとすると、ヒトコトヌシノオオカミは、山の峰から長谷山の麓まで見送ってくれるのでした。



また別の時、雄略天皇は、袁杼比売(オドヒメ)という美しい少女を后にもらおうと春日に出向きますが、その道中で目指す娘に出会います。オドヒメは恥ずかしく思い、隠れてしまいます。その時の雄略天皇の、何としても探しだしてやろうとする気持ちが歌に詠まれます。



illust3786-c



この節も歌を多く挟んだ歌物語になっています。しかし、歌謡は、人それぞれ解釈が異なることが予想されるので、前節でも述べましたが、いたって簡単な散文で置き換えています。

なお、最後に原文に書かれている三重の采女(うねめ、地方豪族出身の朝廷に仕える女子のこと)の大変長い歌物語は割愛しました。歌はそれぞれの方がそれぞれの解釈で楽しまれることをおすすめします。青空文庫でも現代語訳が読めます。

雄略天皇の后たちは、前節から読めば分かる通り、いずれも肉親の仇に当たる先に嫁いでいることになります。この辺の感覚、あるいは様式が、ひと昔前の日本人になら分かるのかもしれませんが、今の日本人に分かるかどうかは疑問です。

雄略天皇は身内を殺してまでして皇位に就いた残虐な天皇としての側面が強いのですが、自分より上位の神である一言主ノ大神を献る側面が、この節では描かれます。



JUGEMテーマ:古典文学














18:21 : 『古事記』 [下の巻] : comments(0) : trackbacks(0) : かがりん :
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://palimpsest.jugem.jp/trackback/525
トラックバック
■ホーム ▲ページトップ