子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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『古事記』 [下の巻] 07 第二十代 安康天皇 徳のなさゆえに暗殺された天皇
允恭天皇(いんぎょうてんのう)の後の皇位は、御子の木梨之軽王(キナシノカルノミコ)と決まっていましたが、彼が即位する前に不倫で失脚したことにより、その弟の穴穂命(アナホノミコト)が皇位を継ぐことになりました。第二十代安康天皇(あんこうてんのう)です。



安康天皇は、弟の大長谷王子(オオハツセノミコ、第二十一代雄略天皇)のために、家来の根臣(ネノオミ、建内宿禰(タケシウチノスクネ)の家系)を大日下王(オオクサカノミコ、第十六代仁徳天皇の御子で允恭天皇の異母弟)の所に遣いを出して、その妹である若日下王(ワカクサカノミコ)と弟のオオハツセノミコトとの結婚を約束させようとします。

オオクサカノミコは、四度拝み、そのような大命をと、たいへん喜び引き受けます。そして安康天皇に贈り物の品までつけてネノオミを返しました。

ところが遣いに出ていたこのネノオミという男は悪者で、その贈り物を盗みとり、オオクサカノミコが「同族のものに敷物同然にくれてやるものか」と立腹したとの嘘の報告を安康天皇にします。

安康天皇は激怒しオオクサカノミコを殺して、その妃である長田大郎女(ナガタノオオイラツメ)を自身の大后としました。



ある日、安康天皇は神意を受けようと、昼寝をしていました。そしてふと大后に心配事がないかと尋ねてみます。大后はそのようなことはないと答えますが、安康天皇には常に気がかりなことがありました。

それは大后の連れ子である目弱王(マヨワノミコ)が成長して、彼の父親を殺したのが自分であることを知り、敵討ちをされるのではないかという心配です。

それを大后に話すのですが、この時マヨワノミコは近くの床下で遊んでいたため、それをすべて聞いてしまいます。

マヨワノミコは、この言葉を聞くと、すぐに安康天皇の眠っているところをを密かにうかがい、傍にあった太刀で安康天皇の首を斬りつけ殺してしまいました。そして都夫良意富美(ツブラノオオミ)という家来の家に逃げ込みます。



このことをまだ少年だったオオハツセノミコが知ると、怒りをあらわにし、兄の黒日子王(クロヒコノミコ)を訪ねます。しかしクロヒコノミコは驚きもせず気にもかけない様子です。オオハツセノミコは失望して兄のクロヒコノミコの襟首を掴んで引きずり出し、刀を抜いて撃ち殺してしまいまさた。

そして別の兄の白日子王(シラヒコノミコ)を訪ねるのですが彼も同じように他所事のように振舞っています。オオハツセノミコは、シラヒコノミコを小治田(おはりだ、奈良県明日香村)まで連れて行き、穴をほって生き埋めにすると、腰まで埋まった頃、シラヒコノミコは目の玉が飛び出して死んでしまいました。



そしてオオハツセノミコは軍を起こして、マヨワノミコが逃げ込んだツブラノオオミの屋敷を取り囲みます。この時ツブラノオオミも軍を起こして迎え撃ち、両軍の放つ矢は風に吹かれた葦の花が散るように飛び交います。

やがてオオハツセノミコは、矛を杖にしてツブラノオオミの屋敷に入ると「私が言い交わした少女は、もしやこの屋敷にいないか」と尋ねました。

するとその少女の父親であるツブラノオオミが武器を解き、八度拝んでから、それに答えて、「先日あなたが求婚なさった私の娘である韓比売(カラヒメ)はあなたの側に仕えさせましょう。また私の私有地も献ります。しかし自身が参上しないのは、昔から今に至るまで、臣下が皇族の宮殿に隠れることはあっても、皇子が臣下の家に隠れることなど聞いたことがありません。とうてい私などが盾をついてもかなわないと分かっていても、私を頼ってきた皇子を見捨てるわけには行きません」と言いました。

そして再びツブラノオオミは武器を手に戦います。しかし勝てる戦ではありません。とうとうツブラノオオミは手傷を負い矢も尽きて、マヨワノミコにどうしたらいいのかと尋ねます。

マヨワノミコは諦めてツブラノオオミに自分を殺せと命令し、ツブラノオオミはそれを果たし、自分も自害しました。



後日、オオハツセノミコは近江国の韓袋(カラフクロ)という者に、近江の久多綿(くたわた、所在不明)には多くの猪や鹿がいるからと狩りを勧められます。

そして狩りに出かけますが、この時オオハツセノミコは従兄弟にあたる忍歯王(オシハノミコ)を一緒に誘います。安康天皇が次期の天皇にと考えていた人物です。二人は狩場に着くと別々に仮宮を作って泊まりました。

翌朝早く、オシハノミコが、オオハツセノミコの家来に催促するように告げ、先に出掛けます。これを家来は怪しみ、オオハツセノミコにいらぬ警戒を与えてしまいます。

そしてオオハツセノミコがこうするつもりであったかは定かではありませんが、追いつくとなんとオシハノミコを矢で射て剣で斬り殺してしまいました。そしてオシハノミコは地面の中に粗末に葬られます。



それを知ったオシハノミコの子である意祁命(オケノミコ、第二十四代仁賢天皇(にんけんてんのう))と袁祁王(ヲケノミコ、第二十三代顕宗天皇(けんぞうてんのう))は、自らの身の危険を感じて逃げ去りました。

そして二人の王子が山城(京都府南部)の刈羽井で弁当を食べていると、目尻に刺青をした老人が来て、その弁当を奪って行くではないですか。二人の王子は弁当は惜しくはないものの、老人の素性を聞きます。老人は猪飼いでした。

二人の王子はいつか仇を取ろうと心に誓い、淀川の渡し場である久須婆(大阪府枚方市楠葉)で川を逃げ渡り、播磨国(兵庫県南部)に着くと、志自牟(シジム)という名の人物のもとで、身分を隠して馬飼い、牛飼いに仕えて働きます。



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安康天皇の臣下の度量を見る目のなさが事の発端ですが、仇の家に嫁いだ大后を始めとし、そのせいで義理ではありますが、父親である天皇が自分の仇でる皇子が登場し、天皇の暗殺を果たします。

そのために天皇の弟のオオハツセノミコは戦を起こし、その皇子を死に追いやりますが、何の因果か、この戦は、オオハツセノミコが婚約した娘の父親との戦でもあったりします。

もうドロドロの人間関係が描かれます。要約を見ていただけたら分かるように、更にオオハツセノミコを軸とした怨恨の物語は続いてゆきます。

オシハノミコがオオハツセノミコに殺されて無造作に葬られる下りは後の天皇が決まる伏線にもなっています。

古事記では、安康天皇は自らの愚かさゆえに、暗殺された天皇として語られます。暗殺された天皇として日本書紀には、後もう一人、第三十二代崇峻天皇(すしゅんてんのう)が記録されています。天皇たるもの、人を見る目がなければならないということなのでしょう。



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