子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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『古事記』 [下の巻] 04 第十七代 履中天皇 皇位継承は御子から兄弟へ
仁徳天皇と大后である石之日売命(イシノヒメノミコト)の間には、上から伊邪本和気命(イザホワケノミコト、第十七代履中天皇(りちゅてんのう))、次に墨江之中津王(スミエノナカツミコ)、次に水歯別命(ミズハワケノミコト、第十八代反正天皇(はんぜいてんのう))、次に男浅津間若子宿禰命(オアサツマワクコノスクネノミコト、第十九代允恭天皇(いんぎょうてんのう))の四神の御子がいました。そして、長子であるイザホワケノミコトが第十七代履中天皇と呼ばれます。

履中天皇には忍歯王(オシハノミコ、第二十一代雄略天皇によって殺される。その御子には、意祁命(オケノミコ、第二十四代仁賢天皇(にんけんてんのう)と、袁祁王(ヲケノミコ、第二十三代顕宗天皇(けんぞうてんのう)がいます)、次に御馬王(ミマノミコ)、次に妹の飯豊王(イイトヨノミコ、第二十二代清寧天皇崩御後の空位の時代を天皇に変わって統治した天皇に準じる中天皇(なかつすめらみこ))の三神の御子がおりました。



履中天皇が難波宮(なにわのみや)にいた頃、新嘗祭(宮中祭祀のひとつ、その年の収穫に感謝する、11/23)の後の豊明(とよのあかり、宮中での御酒宴)で履中天皇は大御酒(おおみき、神や天皇などに奉る酒)を召して、気持よく眠りにつきました。すると弟のスミエノナカツミコは、自分が皇位につきたいがため履中天皇を殺そうと御殿に火を放ちます。

そこで阿知直(アチノアタイ、帰化氏族)が履中天皇を連れ出して御馬に乗せて大和へ逃れました。履中天皇は多遅比野(たじひの、大阪市羽曳野市)着いたところで目覚めて、アチノアタイに事情を聞きます。そこで履中天皇は野宿するならカーテンくらい持ってきたのにとユーモアあふれる歌を詠んでいます。改めて難波宮の方を眺めると、なお火は燃え盛り空を赤く染めています。そんな情景と共に妻を心配して履中天皇は歌に詠んでいます。

履中天皇は大阪山の麓(河内と大和の境)まで来た時、一人の女人と出会います。そして彼女からこの先の道には武器を持った大勢の人たちが塞いでいるから、当岐麻道(たぎまち、奈良県葛城市當麻を経て竹内峠に至る竹内街道)から回って進むと良いでしょう、との助言を受けます。履中天皇はその様子も歌に詠んでいます。



履中天皇は当岐麻道を登り進み石上神宮(いそのかみのかみのみや、奈良県天理市石神神宮)に着くと、同じく弟のミズハワケノミコトが履中天皇に拝謁を求めてきます。しかし履中天皇はこの弟もスミエノナカツミコと同様に反逆を企てているのではないかと疑って会おうとしません。履中天皇は、もしミズハワケノミコトに反逆の心がないなら、証拠にスミエノナカツミコを打ち取りなさい。それならば会おうと伝令を出しました。

ミズハワケノミコトはそれに従い難波を下りスミエノナカツミコに仕えている曾婆訶理(ソバカリ)に「もし私の言葉に従うなら、私が天皇となりお前を大臣にして天下を治めよう」とそれに加えたくさんの品物まで与えて騙し、スミエノナカツミコを殺させようとします。ソバカリは主君を裏切りスミエノナカツミコが厠に入るのを密かにうかがい矛で刺して殺してしまいました。

ミズハワケノミコトはソバカリを率いて大和に上りますが大阪山の麓に着いた時、ソバカリの功績を讃えたものの、自分の主君を殺したことは忠義に反する、いつか自分も殺されるかもしれないとして、祝の豊明を催すふりをして、その最中に、やはりソバカリを殺してしまうのでした。



そしてミズハワケノミコトは次の日、履中天皇の待つ大和に上り進みます。ミズハワケノミコトは大和に着くと、一旦留まり御祓(水で身体を清める儀式)を行い明日にでも履中天皇のいる石上神宮に参上しようと備えました。

そしてミズハワケノミコトは石上神宮に参上し、取次のものを通じて履中天皇に約束の伝令を果たしたことを告げると召し入られて兄弟仲良く語り合うのでした。

アチノアタイは履中天皇を焼き討ちから救った功績が認められ蔵官(くらつかさ、物の出納を司る役)に任命されます。



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履中天皇は同母の弟に焼き討ちにされそうになるというショッキングな事件が語られます。仁徳天皇以降皇位の継承が御子へから兄弟へと変遷し、このような相続争いも描かれるようになるのです。

ちなみに、これまで一例だけ親子継承がなされなかった例があります。それは第十三代成務天皇から第十四代仲哀天皇の時で、叔父から甥への継承でした。

なお、この章ではアチノアタイなどの渡来人の系譜を持った人物が役につくなどのことが注目されます。



履中天皇が焼き討ちを逃れ逃げていく際に、予言をする女人が登場しますが、このタイプの女人、以前にも崇神天皇の章にも登場しました。([中の巻] 06 第十代 崇神天皇 「初国知らしし御真木天皇」を参照)

物語に於いて何かある一定の役割を演じているのですが気になります。現代小説などには、リアリズムの観点から登場させづらい人物ですが、この預言者と呼べるこのような人物は世界の物語にもよく登場します。



またソバカリに対しては、複雑な心境になりました。彼はミズハワケノミコトに陰謀を持ちかけられた時点で、もうすでに自分の命がないも同然でした。従わなければ殺されるし、従っても忠義の心がないとされ、結局殺されています。

この件でスミエノナカツミコは殺されますが殺された場所が厠です。このような場面は以前にも描かれました。ヤマトタケルノミコトが熊曾征伐をする時です([中の巻] 09 第十二代 景行天皇(1)倭建命(ヤマトタケルノミコト)の西征を参照)。厠は、剣を外して使うという習慣があることから、相手の隙を付く場所となるようです。





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