子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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『古事記』 [下の巻] 02 第十六代仁徳天皇(2)影を潜める神話性、人間味あふれる物語
大后の石之日売命(イシノヒメノミコト)は仁徳天皇(にんとくてんのう)の女性関係によく嫉妬をしました。そのため仁徳天皇がそばに置こうとした妃たちは、宮中に入ることもできず、もし目立ったことなどすれば、イシノヒメノミコトは、じたんだをふんで、妬みの心を隠そうとしませんでした。



それでも、仁徳天皇は、吉備国(岡山県と広島県東部)の海部をを統率していた海部直(あまべのあたい)の娘、黒日売(クロヒメ)が、容姿麗しいと聞いて、召し上げて側で使うことにします。しかしクロヒメは、大后の妬みを恐れて、船で本国へ逃げ帰ってしまうのでした。

仁徳天皇は、それを嘆いて歌を詠むと、それを聞いたイシノヒメノミコトはひどく怒って、人を大浦(大阪湾)に遣わして、クロヒメを船から追い下ろしてしまう有様です。クロヒメは仕方なく、陸路を帰らねばなりませんでした。

そんなクロヒメを、哀れに思った仁徳天皇は、大后であるイシノヒメノミコトを騙して、淡路島に向かうといい、淡路島から島伝いに吉備国に入り、クロヒメを追います。

そんな仁徳天皇をクロヒメは山畑に案内して大御食(おおみけ、天皇に献上する食事)を献ります。そして歌など詠み合い、心を通わせるのでした。



また、その後、大后であるイシノヒメノミコトが、豊楽(とよのあかり、宮中での御酒宴)を催そうとして、御綱柏(みつながしわ、酒を盛るための柏の葉)を得るため、木の国(紀伊国、和歌山県)に船で出掛けている間に、仁徳天皇は、こっそり、八田若郎女(ヤタノワキイラツメ、第十五代、応神天皇の皇女)と結婚します。

ところで、そんなことなど知らないイシノヒメノミコトは、御綱柏を船に載せた帰り道、「仁徳天皇はヤタノワキイラツメと結婚して、昼に夜になく遊んでいらっしゃる。大后はそれを知らないから静かに出掛けていらっしゃるのだろう」との人夫の話を聞きつけます。

イシノヒメノミコトは、大いに恨み、怒って、船に乗せていた御綱柏をことごとく海に投げ捨ててしまいます。そして宮には入らず、宮を避けるように堀江(旧淀川)を遡り、川に沿って山城(山城国、京都府南部)へ向かいました。



しかし大后としてとるべき振る舞いを歌にして詠み、心を落ち着けてから、改めて宮に向かおうとしますが、それでもしばらくは筒木(つつき、京都府京田辺市)の韓人(からびと、百済からの渡来人)奴理能美(ヌリノミ)の家にとどまり、帰る決心をしかねていました。

そんなイシノヒメノミコトの様子を知った仁徳天皇は筒木に人を使わして歌を贈って、大后であるイシノヒメノミコトをなだめようとします。

遣わした人の中には口子臣(クチコオミ)という人物がいましたが、大后に会ってもらえず難儀していたところ、ちょうどその時に、大后に仕えていた妹の口日売(クチヒメ)が、兄の姿を哀れに思って歌を詠みました。

とおに宮に帰る時期を逸してしまっていたイシノヒメノミコトが、その歌を聞いて、自らに転機が訪れるのを知ります。



クチコオミは家に入れてもらい、彼と妹のクチヒメ、そして家主のヌリノミの三人の相談が始まります。

そして仁徳天皇に次のことを伝えます。「大后がヌリノミの屋敷にお出かけになったのはヌリノミが飼っている虫が、一度は這う虫になり、一度は鼓(繭)になり、一度は飛ぶ虫になる三種類に変化する虫(蚕)なのですが、この虫をご覧になるためだったのです。他に意図はございません」と。

仁徳天皇はそれを聞いて私も見に行きたいと言い出し、ヌリノミの屋敷を訪れます。そして蚕を見て、自分の心を蚕になぞらえて、また歌を詠みます。これによって仁徳天皇と大后であるイシノヒメノミコトは仲直りをしました。

これによりヤタノワキイラツメとの結婚は解消してしまいますが、仁徳天皇は彼女への思いが捨てきれず、彼女を気遣い、ここでまた歌を詠んでいます。それに対してヤタノワキイラツメも殊勝な歌を詠み返しました。



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古事記、下の巻では、多く歌物語を差し挟んで綴られるのが特色です。しかし歌謡は人それぞれ解釈が異なることが予想されるので、いたって簡単な散文で置き換えました。歌の内容が知りたい方は他をあたってください。



仁徳天皇がクロヒメを追って淡路島で詠んだ歌には、オノゴロ島([上の巻] 02 国生みを参照)がでてきます。詳細な場所は不明ですが、この淡路島あたりということでしょうか。

仁徳天皇が青葉を摘むクロヒメに近づき、歌を詠む情景などは、ことの良し悪しとは別に、嫉妬に狂うイシノヒメノミコトとは対象の、のどかで平和な気分を感じてしまいました。下の巻では、こうした人間性が多く描かれ、神話性は影を潜めます。



ヤタノワキイラツメと仁徳天皇の恋物語は最終的に、二人の結婚の解消で幕を閉じています。

大后のイシノヒメノミコトがヌリノミの屋敷に行ったのは、大后がヤタノワキイラツメへの嫉妬のためではなく、めずらしい蚕という虫を見るためであると、話のつじつま合わせて、ことの成り行きを終息に向かわせています。

これで大后の面目は保たれ、同じく英雄としての仁徳天皇の体面も損なうことを防いでいるのでしょう。





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