子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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『古事記』 [中の巻] 07 第十一代 垂仁天皇(1)皇后・沙本毘売命の苦悩
伊玖米入日子伊沙知命(イクメイリビコイサチノミコト)が天皇に即位します。第十一代垂仁天皇(すいじんてんのう)です。垂仁天皇は二人の后と五人の妃との間に十二神の王と三人の女王を儲けました。そのうち大帯日子淤斯呂和気命(オオタラシヒコオシロワケノミコト)が第十二代景行天皇となります。



垂仁天皇は沙本毘売命(サホビメノミコト)を皇后としました。ところでサホビメノミコトの兄の沙本毘古王(サホビコノミコ)(兄妹は、第九代開化天皇の子、日子坐王(ヒコイマスノミコ)の子)は妹のサホビメノミコトに「夫と兄のどちらが愛しいか」と問います。

妹のサホビメノミコトは気後れし思わず「兄を愛しく思います」と答えるのですが、そこから悲劇が生まれます。兄のサホビコノミコははかりごとをねって、ならば二人で天下を治めようと妹のサホビメノミコトに鋭利な小刀を渡し、垂仁天皇の寝首を掻くよう命じました。



そんなことなど露知らない垂仁天皇は、皇后のサホビメノミコトの膝枕で休んでいます。そんなところを、サホビメノミコトは、三度小刀を振り上げて垂仁天皇の首を刺そうと試みました。しかしサホビメノミコトは悲しい心を抑えきれず涙が溢れ、その涙は垂仁天皇の顔に落ちました。

すると垂仁天皇は驚いて目を覚まし、皇后のサホビメノミコトに不思議な夢を見たと告げます。「沙本(奈良県佐保台あたり、サホビコノミコの居所)の方から大雨が近づいてきて急に私の顔を濡らした。また錦色の小さな蛇が私の首に巻きついた。これは何の兆しであろう」

それを聞いたサホビメノミコトは、隠すことはできないと思い、垂仁天皇にこれまでの経緯をありのままに告白しました。垂仁天皇は早速サホビコノミコの討伐の軍を起こします。サホビコノミコも戦いに備え稲城(稲を積んで作った城)を作って待ち構えていました。



ところが妹のサホビメノミコトは兄を哀れんで垂仁天皇のもとを離れ、兄のサホビコノミコのもとに向かいます。この時サホビメノミコトは垂仁天皇の子をみごもっていました。

垂仁天皇もサホビメノミコトを忍びなく思いすぐに攻め入ることはしませんでした。そうこうしているうちにサホビメノミコトは子を産みます。彼女はこの子を稲城の外において使者を立て「もし天皇の子と思し召されるなら引き取ってください」というのでした。



垂仁天皇は皇后の兄のサホビコノミコを恨んではいたものの、皇后のサホビメノミコトを愛おしく思う気持ちは変わらなかったので、兵の中から屈強なものを選んで、御子を取るとき母親のサホビメノミコトも奪ってくるよう、髪であれ手であれ服であれ掴んで引き出してくるよう命じます。

しかし、これを察知したサホビメノミコトは、そうはさせじと髪を剃り、剃った髪で頭を覆い、玉飾りを腐らせて手に三重に巻きつけ、衣服は酒で腐らせそれをまといました。

そのおかげで兵は子を引き取ることはできましたが、母親のサホビメノミコトを捕まえようにも、髪をつかめばそれはずり落ち、手をつかめば玉の緒は切れ、服をつかめばそれは破れ、ついには母親を得ることはできませんでした。



垂仁天皇は悔やみ、尚も未練を残しつつ、皇后のサホビメノミコトに聞きます。「子の名は母親がつけるものだが名をつけて欲しい」

するとサホビメノミコトは、稲城を焼くときに火の中で生まれた子だから、本牟智和気御子(ホムチワケノミコ)とするのが良いでしょうと答えました(ホは火のことを指します)。

続けて垂仁天皇は、いかに育てたらよいかとサホビメノミコトに尋ねると、彼女は子に乳を与える乳母と、子に湯を浴びさせる湯坐(ゆえ、入浴させる婦人)を定めて養育すべきでしょうと答えました。

また垂仁天皇はお前が結んだ下紐は誰が解いたら良いのかと尋ねると(当時、夫婦がお互いに下紐を結び合う習慣がありました)サホビメノミコトは、丹波比古多多須美知能宇斯王(タニハノヒコタタスミチノウシノミコ)の娘で、忠誠心の厚い兄比売(エヒメ)と弟比売(オトヒメ)を使えば良いと答えました。

そしてついに垂仁天皇は、謀反をおこしたサホビコノミコを殺してしまいます。すると皇后である妹のサホビメノミコトも自害してしまいました。



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サホビコノミコとサホビメノミコトの物語は『古事記』の説話の中でも、叙情性の豊かな文学作品として広く知れ渡っています。

サホビメノミコトが、夫である垂仁天皇と、兄であるサホビコノミコとの間で板挟みとなり、苦悩する心情や、サホビコノミコの反逆にもかかわらずサホビメノミコトを愛しく思う垂仁天皇の心情が複雑に絡み合い、人間的な苦悩が描かれます。





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