子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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『古事記』 [上の巻] 13 大国主神による国造りの再開
大国主神(オオクニヌシノカミ、この節ではまだ大穴牟遅神(オオナムヂノカミ)と呼ばれています)は言われた通り、須佐之男命(スサノオノミコト)のいる根之堅州国(ねのかたすくに)にゆくと、スサノオノミコトの娘である須勢理比売(スセリビメ)が出迎えます。二神はひかれ合ってすぐに結婚します。

そしてスセリビメは父親に彼を会わせました。するとスサノオノミコトはまるで彼を知っているかのようにその男は葦原色許男(アシハラシコオ、オオクニヌシノカミの二番目の名)というのだと言いました。



そしてスサノオノミコトはオオクニヌシノカミを、夜、蛇のいる室で寝かせます。この時すでにスサノオノミコトはオオクニヌシノカミが葦原中国を担う力のある男であると見抜いていたのではないでしょうか。オオクニヌシノカミを蛇のいる室で眠らせたのは、その力を見定めようとする一つの試練のようです。

スセリビメはオオクニヌシノカミに蛇から身を守るためのすべをこっそり教えます。比礼(ひれ)という古代の女性が使ったスカーフのような布を授け、蛇に襲われそうになったら、それを三回打ち振ってくださいと言いました。

比礼は振ることによって呪力を発揮するとされていたものです。おかげでオオクニヌシノカミはぐっすりと眠ることができました。

ところがスサノオノミコトが与える試練はこれに終わりません。次の日の夜には百足と蜂のいる室に寝かされます。けれども、またしてもスセリビメが百足と蜂の比礼を夫に渡したので難を逃れます。



更に、スサノオノミコトの与える試練は度を増してゆきます。今度は鳴鏑(なりかぶら)という鏑のついた矢を野原に射込み、それをオオクニヌシノカミに拾わせようというのです。

オオクニヌシノカミが野原に入ると、なんとスサノオノミコトは野に火を放ちます。火に囲まれて途方に暮れているオオクニヌシノカミを一匹の鼠が救います。

オオクニヌシノカミは、地中の鼠の巣に誘われて入り、火が治まるのを待ちました。しかも鼠の助けはそれに終わりません。鼠は鳴鏑の矢をくわえてきてオオクニヌシノカミに差し出すのでした。

焼け跡にスセリビメを連れてやってきたスサノオノミコトですが、なんと、死んだものと思っていたオオクニヌシノカミと再会します。



ところで、これでスサノオノミコトの与える試練はこれで終わりかと思いきや、さらに続くのです。スサノオノミコトはオオクニヌシノカミを家に連れてゆき自分の頭のシラミを取らせます。

ところがそれはシラミなどではなく百足なのでした。ここでも妻のスセリビメが助け舟を出します。椋の木の実と赤土を夫に差し出し、次のように指示しました。

「椋の木をかんで、プチプチと音をたてて、赤土を口に含んでから、つばと一緒に吐き出せば、父親はきっと、あなたが百足をかみ殺していると勘違いするはずです」

オオクニヌシノカミは言われたとおりにするとスサノオノミコトは案の定勘違いして、安心したのか眠ってしまいます。これを絶好の機会と思ったオオクニヌシノカミは、スサノオノミコトの髪を束ねて部屋の太い柱に縛り付け、さらには五百人で引くほどの大岩で部屋の入口を塞ぎ、スセリビメを背負って逃げ出しました。

家を出るときオオクニヌシノカミは、スサノオノミコトの生太刀(いくたち)と、生弓矢(いくゆみや)と、天の沼琴(あまのぬこと)を持って出ようと考えました。

生太刀と生弓矢は生き生きとした生命あふれる太刀と弓矢のことで、スサノオノミコトの武力を象徴するものです。また天の沼琴はお告げをするときに使う琴で、スサノオノミコトの宗教的権威を象徴するものです。

しかしオオクニヌシノカミは、うっかり天の沼琴を木の枝に引っ掛けて大きな音を立ててしましました。スサノオノミコトは驚いて目を覚まします。

しかしオオクニヌシノミコトがしておいた細工のおかげで、スサノオノミコトはすぐには走りだすことができません。二人はその間に遠くへ逃げ去っていきました。



やっとスサノオノミコトが地上世界との境である黄泉比良坂(よもつひらさか)まで来た時は、もうすでに二人は遠くに逃げおおせた後でした。スサノオノミコトはオオクニヌシノカミに向かって大声で叫びます。

「その生太刀と生弓矢で八十神を倒せ。大国主神またを宇都志国玉神(ウツシクニタマノカミ、オオクニヌシノカミの三番目の名前)と名のり我が娘、須勢理比めを正妻として出雲の山に地底の石を土台にして太い柱を立て、天空に千木を高く上げて壮大な宮殿を建てるのだ」といいました。

これはスサノオノミコトが試練を乗り越えたオオクニヌシノカミへの、はなむけの言葉でした。ちなみにここに来て、初めてオオクニヌシノカミの名を授かります。

オオクニヌシノカミは言われたとおりに八十神を倒し葦原中国に始めて国を作ります。これが長い間中断されていた葦原中国での国づくりの再開です。



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スサノオノミコトとオオクニヌシノカミは極めて対照的です。これまで語られてきたことからスサノオノミコトは、想像するに体は大きく有り余る力があり頭脳明晰です。([上の巻] 09 八俣遠呂知(ヤマタノオロチ)を参照)全体的にはやんちゃな印象です。

これと対照的にオオクニヌシノカミは体が小さく能力もぱっとしない印象でした。(二度も殺されています)しかし彼は、周りから助けてもらえる優しさと生真面目さを、人いち倍持っているのです。([上の巻] 11 因幡の白兎を参照、この章では子鼠にさえ助けられています)

それに足りていなかった能力にしても、試練をくぐり抜けてゆくうちにどんどん身につけてしまいました。国作りにふさわしい神となります。





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