子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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『古事記』 [上の巻] 11 因幡の白兎
大主国神(オオクニヌシノカミ)には八十神(ヤソガミ)と呼ばれる大勢の兄弟神がいました。オオクニヌシノカミは、その一番末の身分と思われます。

なぜなら、その頃、八十神たちは、稲羽(因幡、鳥取東部)に住む八上比売(ヤガミヒメ)に惚れ込み自分の妻にしたいと考えていました。

彼らが求婚のため稲羽に出かけた際、オオクニヌシノカミは従者として同行し、荷物背負わされて行列の一番最後を歩いていたからです。「袋担ぎ」は、かつて一番身分の低い者の仕事とされていました。



ところで、八十神一行が稲羽に向かい、気多の岬(けたのみさき)のあたりに至ると、毛をむしられて皮膚が真っ赤になった一匹の兎が横たわっているのに出会います。

その哀れな兎に対して八十神たちは、海水を浴び、風に当たってから山の峰の上でうつ伏せになりなさいと言いました。

そんなことをすれば兎の皮膚はますます酷いことに成るのは分かりきっています。しかし兎は真に受けてその通りにしてしまうのでした。

案の定、兎は、浴びた海水が乾くとその身は風に吹き裂かれ皮膚はヒビだらけになってしまいます。

そして兎が痛みに苦しんで泣いているところに、行列の最後のオオクニヌシノカミが通りかかるのです。



オオクニヌシノカミが兎に泣いている理由を聞くと兎は答えました。

「わたしは隠岐の島にいてこの地に渡ろうとしましたが、そのすべがありませんでした。そこで海に住む一匹の鮫に、わたしとあなたを比べて、どちらの一族の数が多いか数えてあげようと言い、鮫の一族を率いさせて、隠岐の島から気多の岬まで伏して並べさせ、その上を踏んで走りながら数を数えるふりをしてまんまと渡ってきたのです」

「ところが、渡り終えようとしたその時に、うっかり君たちはわたしに騙されたのだと言ってしまったため、一番端に伏していた鮫に捕らえられて、毛をことごとく剥ぎ取られてしまったのです。そこを先に通り過ぎた八十神たちにひどい嘘をつかれて、わたしはこのような姿になりました」と言います。



オオクニヌシノカミは痛みに苦しむ兎に次のように答えます。

「今すぐ河口に行き淡水で身を洗い河口に生えるカマの穂の花粉を取って敷き散らしその上に寝返りを打って転がればあなたの肌は元通り癒えるでしょう」と言いました。

古くからガマの花粉は、治血、治痛作用があるとされて用いられてきました。オオクニヌシノカミの教えは適切なものでした。この逸話によってオオクニヌシノカミは医療神としても祀られています。

そして助けられた兎はオオクニヌシノカミに八十神はヤガミヒメを得られず、ヤガミヒメは必ずやオオクニヌシノカミと結ばれるでしょうと予言します。そして後にそのとおりになります。兎は神通力の持ち主でした。



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ここで古事記によく使われる八という数字について述べます。ご存じの方が多いかと思われますが、実際の数を表すのではなく数が多いことを表しています。また日本では偶数が重んじられ偶数の最大値である八が縁起の良い数字とされています。

このお話でも、八十神、八上比売、が登場します。これまでも八百万、大八島国、八尺鏡、八尺勾玉などがあり、神名にも多用されています。



この物語で出てくる和邇(ワニ)ですが、日本にはワニが生息しないため、たいていの現代語訳では鮫としているのを断っておきます。

またこのお話のように知恵のある陸の動物が、愚かな水中のワニをだまして川を渡るというお話はインドネシアや、東インド諸島にもあるそうです。そちらのお話が伝わって用いられているのかも知れません。



また、オオクニヌシノカミの名はこの時点では大穴牟遅神(オオナムヂノカミ)となっています。神としてのポジションが変わるに連れ、名が変わります。このブログでは分かりやすく大国主神(オオクニヌシノカミ)として要約します。登場時の大穴牟遅神(オオナムヂノカミ)に始まり、葦原色許男神(アシハラシコオノカミ)、八千矛神(ヤチホコノカミ)、宇志国玉神(ウツシクニタマノカミ)の呼び名があります。

その オオクニヌシノカミことオオナムヂノカミですが、ここでは医療神としての姿が描かれています。古代から医療神というものは大変尊敬を集めていました。

後の物語で国作りをしていく重要な神様としての器が描かれているのだと思います。反対に、八十神の兎に対する仕打ちは、とてもひどく、冷たいものでした。





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