子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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日本の昔話 4 より 『なら梨取り』 末子成功譚の一類型
むかしあるところに、父親と、一郎、二郎、三郎の三人兄弟がいました。ある時父親が重い病気にかかります。医者は「なら梨の実を食べなければ助からない」と言いました。

なら梨というのは、大きな山を三つ越えていかなければ手に入らない珍しい梨の実で、今までそれを取りに行って無事戻ってきたものはいませんでした。けれども一郎が握り飯を持って、なら梨の実を取りに出かけました。

道は、行けども行けどもうす気味の悪い山道です。途中、道端で、羽を痛めたすずめが、ばたばたと苦しんでいました。けれども一郎はそのすずめには目もくれず、どんどん進んでいきました。

そのうちに、日が暮れて道がわからなくなってしまいました。そんな時、遠くに明かりがひとつ、ぽつんと見えます。

それを目当てに行くと、草葺き屋根の、壊れかけた小屋がありました。一郎は一晩の宿を頼みます。すると中から、長い髭のお爺さんが出てきて、一郎を中に入れてくれました。

一郎は囲炉裏にあたりながら爺さんに、なら梨の在り処を尋ねました。爺さんは、この裏山を登って行くと大きな梨の木が立っている、それがそうだと答えました。

しかし、紙の茶碗とわらの箸でご飯を食べたものでなくては、なら梨もぎはできないと言います。爺さんはさっそく紙の茶碗にご飯を盛って、わらの箸を添えて出しました。

一郎は爺さんに言われたことを実行しようとしますが、紙の茶碗は壊れ、わらの箸も折れてしまいました。

次の日一郎は爺さんが止めるのも聞かず、なら梨とりに裏山へ登って行きました。しかし青鬼が現れて、一郎は飲み込まれてしまいます。



一郎があんまり帰ってこないので、次は二郎がなら梨取りに出かけました。しかし一郎がたどった行く末を、二郎も同じようにたどります。そして最後は赤鬼に飲み込まれてしまいます。



兄さんたちが帰ってこないので、とうとう三郎が、父親が止めるのも聞かず出かけていきました。三郎も兄とおおむね同じ道をたどりますが、三郎は兄さんたちと違って道端で羽を痛めたすずめを、可哀想にと自分の懐に入れて保護しました。

三郎も兄たちと同じようにお爺さんと出会い、紙の茶碗とわらの箸でご飯を食べなければなりません。しかし助けた雀が紙の茶碗のご飯をわらの箸を食べることを、まじないによって可能にしてくれるのです。

次の日三郎はなら梨を取りに出かけました。なら梨はたくさんなっていました。ところが青鬼と赤鬼が飛び出してきて邪魔をします。

三郎はひるまず素早く梨の木にかけ登るとなら梨をもいで鬼に投げつけました。鬼たちはたまらず、目を白黒させながら一郎と二郎を吐き出しまして逃げて行きました。

三人兄弟はなら梨をいっぱい背負って家に帰りました。父親はそれを食べると、たちまち元気いなりました。それから三人は、病気で苦しむ村の人たちにも、なら梨を分け与えたのでたいへん喜ばれたということです。と物語は結ばれます。



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グリム童話(KHM169)『森の家』とお話の構造がそっくりです。共に動物に親切な三人兄弟の末子が物語の行く末の鍵を握っています。

三人兄弟が上から順に試練に挑みます。道中迷い、ひとつの明かりに誘われ行ってみると、そこでは、紙の茶碗とわらの箸でご飯を食べなければなりません。ここで動物に親切にした末子だけが試練をくぐり抜け無事に目的を達成します。

しかしグリム童話では、試練を超えられなかった上ふたりの兄弟には、冷たい仕打ちが待っているのに対して、この日本の昔話は、三人とも幸せを享受しています。末子成功譚のいち類型と思われます。





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