日本の昔話 4 より 『風の神と子ども』 気まぐれな神様と日本人の信仰観
2018.02.16 Friday
むかし、ある秋の日のこと、村の子どもたちがお堂で遊んでいました。するとそこに、見たこともないよその人が、ぶらりとやってきました。
そして、その人は、お堂で遊んでいてもなにも食べるものがないだろう、栗や柿や梨のなっているところに遊びに行きたくはないか、いくらでも食べさせてやる、と言いました。
子どもたちはそれを聞くと口々に、それが本当なら行きたいと騒ぎ立てました。男は本当だとも連れて行ってやると言って、尻からしっぽのような長いものを引っ張りだし、子どもたちを乗せました。
すると男は、たちまちごおーっとひと風吹かせ天に舞い上がり、子どもたちを約束通り栗や柿や梨の木がたくさんあるところに下ろしてくれました。子どもたちは大喜びして、お腹が一杯になるまで食べて食べて食べました。
ところが夕方になると、男は突然、ほかのところへいかなくちゃならないから、お前たちは自分でうちに帰れと言って、風に乗ってどこかへ行ってしまうではないですか。
子どもたちは驚きます。ここがどこかも分かりません。当然うちには帰れません。えんえんと泣き出しました。
そのうち辺りは真っ暗になりました。すると遠くにぽつんと明かりが見えます。子どもたちは明かりを頼りにそこへ向かうと、一軒家があって戸を叩くと、ぽたぽたと太ったおばあさんが出てきました。
子どもたちは事情を話すと、おばあさんは笑って、それはうちの息子の南風の仕業だと言います。南風は、いたずら者で気まぐれだとも言いました。
おばあさんは、自分を風の神の親だと名乗り、そしてじき、うちの息子の北風がお前たちをうちまで送るから、心配しないでいいと言いました。
おばあさんは子どもたちをうちに迎い入れ、炊きたての白いご飯と暖かい豆腐汁をごちそうしました。そして、こら起きろと息子の北風を起こし事情を話して子どもらを送らせようとします。
北風も南風同様、尻からしっぽのような長いものを引っ張りだして、子どもたちにまたがらせ、しっかりつかまっていろと言うと、すぐにごおーっと風が吹いて天まで舞い上がり、たちまち彼らは自分たちの村につきました。
村では夜遅くなっても子どもたちが帰ってこないので大騒ぎになっていました。そこへ急に北風が吹いてきて子どもたちが無事に帰ってきたのです。みんな大喜びしました、とお話は結ばれます。
短いお話です。
ユーモラスな表現が多数あって楽しいお話です。
神様の気まぐれで子どもたちは異界に連れ去られました。異界は、そこがいかに魅惑の場所だとしても留まるところではありません。異界から日常へ帰る手段を失った子どもたちは困惑します。そこで現れるのは森の中のひとつの明かりです。
「ひとつの明かり」というモチーフは洋の東西を問わず昔話によく登場します。特に日本の昔話に顕著です。困った状況にそこから逃れるみちはいつでも少なく、ひとつと表現されるのでしょう。明かりは希望を指しています。
子どもたちがその明かりの方へ向かうと、そこで出会うのもまた神さまでした。そして今度こそ子どもたちは日常に舞い戻ることができるのです。
このお話では、日本人が心に思い描く気まぐれな神様に対するイメージが語られているのではないでしょうか。こういったイメージから我々日本人の信仰観は形作られているように思います。
そして、その人は、お堂で遊んでいてもなにも食べるものがないだろう、栗や柿や梨のなっているところに遊びに行きたくはないか、いくらでも食べさせてやる、と言いました。
子どもたちはそれを聞くと口々に、それが本当なら行きたいと騒ぎ立てました。男は本当だとも連れて行ってやると言って、尻からしっぽのような長いものを引っ張りだし、子どもたちを乗せました。
すると男は、たちまちごおーっとひと風吹かせ天に舞い上がり、子どもたちを約束通り栗や柿や梨の木がたくさんあるところに下ろしてくれました。子どもたちは大喜びして、お腹が一杯になるまで食べて食べて食べました。
ところが夕方になると、男は突然、ほかのところへいかなくちゃならないから、お前たちは自分でうちに帰れと言って、風に乗ってどこかへ行ってしまうではないですか。
子どもたちは驚きます。ここがどこかも分かりません。当然うちには帰れません。えんえんと泣き出しました。
そのうち辺りは真っ暗になりました。すると遠くにぽつんと明かりが見えます。子どもたちは明かりを頼りにそこへ向かうと、一軒家があって戸を叩くと、ぽたぽたと太ったおばあさんが出てきました。
子どもたちは事情を話すと、おばあさんは笑って、それはうちの息子の南風の仕業だと言います。南風は、いたずら者で気まぐれだとも言いました。
おばあさんは、自分を風の神の親だと名乗り、そしてじき、うちの息子の北風がお前たちをうちまで送るから、心配しないでいいと言いました。
おばあさんは子どもたちをうちに迎い入れ、炊きたての白いご飯と暖かい豆腐汁をごちそうしました。そして、こら起きろと息子の北風を起こし事情を話して子どもらを送らせようとします。
北風も南風同様、尻からしっぽのような長いものを引っ張りだして、子どもたちにまたがらせ、しっかりつかまっていろと言うと、すぐにごおーっと風が吹いて天まで舞い上がり、たちまち彼らは自分たちの村につきました。
村では夜遅くなっても子どもたちが帰ってこないので大騒ぎになっていました。そこへ急に北風が吹いてきて子どもたちが無事に帰ってきたのです。みんな大喜びしました、とお話は結ばれます。
短いお話です。
ユーモラスな表現が多数あって楽しいお話です。
神様の気まぐれで子どもたちは異界に連れ去られました。異界は、そこがいかに魅惑の場所だとしても留まるところではありません。異界から日常へ帰る手段を失った子どもたちは困惑します。そこで現れるのは森の中のひとつの明かりです。
「ひとつの明かり」というモチーフは洋の東西を問わず昔話によく登場します。特に日本の昔話に顕著です。困った状況にそこから逃れるみちはいつでも少なく、ひとつと表現されるのでしょう。明かりは希望を指しています。
子どもたちがその明かりの方へ向かうと、そこで出会うのもまた神さまでした。そして今度こそ子どもたちは日常に舞い戻ることができるのです。
このお話では、日本人が心に思い描く気まぐれな神様に対するイメージが語られているのではないでしょうか。こういったイメージから我々日本人の信仰観は形作られているように思います。
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