子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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グリム童話(KHM181) 『池の中の水の精』 改めて約束という道徳的なテーマ
お話の構造としては、(KHM88)『さえずり、おどるひばり』や、(KHM92)『金の山の王さま』が類似としてあげられます。共に主人公が父親のした、異界の者との約束によって、主人公が異界に連れ去られることを物語の発端とします。

グリム童話で、約束をテーマとする物語は多数ありますが、主人公が、異界の者にさらわれるといった設定は、これらの物語に限られます。この三話を比べたりしながら、物語を追ってみます。



むかし、あるところに、粉屋がいました。粉屋は、妻とふたりで満足に暮らしていました。財産は年を追うごとに増えました。しかし不幸は一夜にして訪れるもので、財産はみるみる失われます。財産が失われるくだりは『金の山の王さま』と同様ですね。

粉屋は、ある明け方前、水車小屋の池の辺りを歩いていると、池の中から美しい娘が現れて、彼女は、困っている様子の粉屋に事情を尋ねました。粉屋が事情を話すと、池の娘は約束を守るなら、また豊かに暮らしていけるようにしてやるというのです。

その約束とはちょうど今あなたの家で生まれたものを譲りなさいというものです。この譲らなければならないものがこの時点では伏せられていることも三話共通です。そしていずれの話でも、主人公の父親は、約束をかわしてしまいます。

その伏せられていたものとは子ども、すなわち主人公でした。そしていずれの話でも主人公が連れ去られてしまいます。

池から現れた娘は、明らかに異界の存在でしょう。この異界の存在が『さえずり、おどるひばり』ではライオンであり、『金の山の王さま』では小人でした。

しかし、この約束、粉屋は裕福になったものの異界の者の側の要求が、しばらく果たされません。つまり、主人公がさらわれることはありません。主人公は、やがて大人になり、妻を迎えます。そしてある日突然、不意に約束は果たされます。まるで異界の者は待ち構えていたような描写です。怖いです。

妻は悲しみました。しかし、妻の見た夢に現れるおばあさんを頼りに、夫の救出は行われていきます。そして紆余曲折の末、夫の救出に成功しました。

ただし、そのときにふたりは、てんでばらばらのところに池の水に流され、共に長い年月ひつじ飼いになったと描写されます。そして、物語最後に、再びお互いを見つけ幸せになるというものです。



この物語や、『さえずり、おどるひばり』では、最後の聖なる関係を成就させるために、不条理な約束に端を発する試練が用意されているのでしょう。

その不条理な約束ですが、それを果たせば、後の幸福につながるという、広く物語一般に見られる一大テーマは、グリム童話では、冒頭の(KHM01)『かえるの王さま』のそれが象徴的です。

この、ある意味、道徳的なテーマ(説教屋が用いる、寓意的意図のある道徳とはまったく違ったものです)は、物語一般と切っても切り離せません。これからも時代をまたぎ装いを変えて物語られるのでしょう。





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