子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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宮沢賢治童話全集 9 風の又三郎 リンク
北守将軍と三人兄弟の医者』 宮沢賢治童話全集 9 より - 賢治が物語る理想的な人の生き死に
税務署長の冒険』 宮沢賢治童話全集 9 より - 探偵ものへの興味、複雑な人間観
種山ヶ原』 宮沢賢治童話全集 9 より - 続、村童スケッチ
風の又三郎』 宮沢賢治童話全集 9 より - 数々の村童スケッチの集大成





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『風の又三郎』 宮沢賢治童話全集 9 より - 数々の村童スケッチの集大成
九月一日

谷川の岸に小さな学校がありました。ふたりの一年生の子が、一番に登校したと、はしゃいでいると、そうではありあませんでした。すでに赤毛の子どもが、ひとり教室にしゃんと座っているのです。

じき生徒たちは集まってきました。赤毛の子どもは皆をきょろきょろ見ているばかり、その時、どっと強い風が起こります。その様子から、五年生の嘉助は、あいつは風の又三郎だとはやしたてました。

やがて先生が来て、赤毛の子を紹介しました。彼は、五年生で、父親の転勤に伴って、北海道から転校してきた、高田三郎と言いました。嘉助はその名を聞いて、やはり風の又三郎だと合点します。



九月二日

始業前、三郎が運動場の広さを歩測していると、風がざあっと吹きます。嘉助はそれを見て「やっぱりあいづ又三郎だぞ。あいつが何かするときっと風が吹いてくる。」 と言いました。

授業中、四年生の佐太郎が、三年生の妹のかよの鉛筆を取り上げたことを知った三郎は、自分の鉛筆を佐太郎に与え、佐太郎にさよの鉛筆を返させ、自分は消し炭を使いました。



九月四日、日曜

六年生の一郎は、嘉助、佐太郎、悦治、三郎を連れて、祖父と兄の働く上の野原に出かけます。彼らは、牧場の馬と遊ぶうちに、一頭の馬に逃げられ、それを追った嘉助は、ついに道に迷い、天候も悪化し、悪いことは重なると思いながら倒れてしまいます。

すると嘉助を異様な幻覚が襲いました。終いには、風の又三郎が空に飛び立つのを見たりします。しかしその幻覚から覚めると、目の前には逃げた馬と三郎がいました。一郎の兄や一郎の声がします。嘉助は助かったのです。

帰途、三郎と別れた嘉助は、一郎に「あいづやっぱり風の神だぞ。」と言いますが、一郎は本気にせず取り合いませんでした。



九月五日

雨のあがった放課後に、耕助は自らの誘いで、彼が見つけたという蒲萄の藪に、一郎、嘉助、佐太郎、悦治、三郎と一緒に、蒲萄取りに出かけました。

途中、専売局に管理されているたばこの葉を、知らずに一枚むしってしまった三郎は、皆にそれを咎められます。耕助に至っては、しつこく三郎をからかいました。

あちこちに栗の木の生えた蒲萄の藪につくと、栗を取るという三郎をのぞき、皆は蒲萄取りに夢中になりました。蒲萄取りの最中耕助は、二度、雨で濡れた栗の木の雫をざっと浴びます。

耕助は藪の中から上を見ると、三郎が栗の木に見えます。耕助は、降りかかった雫を、栗の木を揺らした三郎の仕業と思いますが、三郎は風の仕業だといいました。

耕助は三郎に「うなみだいな風など世界中になくてもいい」と迫りますが、三郎はその訳を箇条を立てて答えよと反論しました。

耕助は三郎に言う通りにしますが、ついに返答に困ると三郎の笑いものになりました。耕助もあんまり困ったので、怒りも忘れて三郎と一緒に笑い出します。ふたりは和解しました。



九月七日

蒸し暑い放課後、一郎、嘉助、耕助、三郎たちは川下の方へ水浴びに出かけます。みなは河原につくと、早速泳ぎ始めました。三郎も後に続きます。

三郎は一郎たちの泳ぎ方がおかしいと笑い、決まりの悪くなった一郎は、石取り遊びをしようと、さいかちの木に登り、白い石を淵に落としました。皆は水に潜って白い石を探し、遊びに興じます。

すると向こうの河原のねむの木のところに、大人が四人現れて、川に発破を仕掛けようとしています。一郎の命令で皆は川下へ泳ぎました。発破が爆発すると、浮き上がった魚を、川下にいた皆は取り始めました。

三郎は鮒を二匹さらい、発破を爆発させた庄助に返しました。庄助は「きたいなやつだな」と言いながらじろじろ三郎を見ました。

他の子供らは石で囲ったいけすを作り、魚が息を吹き返しても逃げないようにして、再び川上のさいかちの木に登りました。

すると、ひとりの変に鼻の尖った洋服にわらじの男がステッキのようなものでいけすをかき回しています。佐太郎は、彼を専売局の人間で三郎を連れに来たのだと言いました。皆は木の上で三郎を隠すように囲います。

ところがどうやら心配はないとわかると、一郎の先導で、皆は木の上で、その男に、川を濁すなと囃し立てます。男は慌てました。そしてそれをごまかすようにたばこ畑の方へ去って行きました。



九月八日

佐太郎は、何かを入れたざるを抱えてやってきます。一郎はそれを覗くと、思わず顔色を変えました。それは魚の毒もみに使うさんしょうの粉で、発破と同じように使えば巡査に取り押さえられます。

授業が終わると皆は、さいかち渕へ向かい、佐太郎は早速毒もみを行いました。その間、一郎と三郎は、他所事をしていました。

さて、しかし、佐太郎の毒もみは失敗したようです。魚は一匹も浮かびませんでした。決まりの悪くなった佐太郎は皆に鬼ごっこをしようと持ちかけました。そして皆は何べんも鬼ごっこに興じます。

ところがそのうちに黒雲が垂れ込め、あたりは雷雨となります。風もひゅうひゅう吹きだしました。みなは着物を抱えて、ねむの木の下に集まります。

すると誰ともなく「雨はざっこざっこ雨三郎」「風はどっこどっこ又三郎」と叫んだものがいます。

すると三郎は、何かに足を引っ張られたようで、淵から飛び上がって、一目散に皆のところに走ってきて、がたがたと震えました。そして三郎は、今叫んだのはお前らかと問いました。皆はそうではないと答えます。そして雨の晴れ間を待ってめいめいうちにかえったのです。




九月十二日

嵐の朝、一郎は、嘉助を誘って朝早く登校します。そして、モリブデン鋼脈を掘らぬことになって、高田三郎の父は会社から呼ばれ、三郎が父に伴われて転校したことを、ふたりは先生から聞かされます。

「やっぱりあいづは風の又三郎だったな」と嘉助は言いました。風はまだやまず、窓ガラスは雨にうたれ、がたがたなっている、と物語は結ばれます。



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「風の又三郎」とは賢治の造語で、東北、越後方面の、伝承で「風の三郎」と呼ばれた、風の神に由来するものと思われます。

登場人物の嘉助に代表されるような、村の子どもたちの、主人公「高田三郎」を通して描き出される「風の又三郎」への親しみと恐れが、巧みな心理描写で描かれていきます。

その描写は、平板ではなく、現実と超現実を激しく行き来し、せめぎ合います。よって優れたファンタジーとしても読めます。

そう、村童たちの、リアルでいきいきとした息吹が、まのあたりに感じられ、まるで自らも、自身の子ども時代に時をさかのぼったような感覚を持つことが可能です。

この物語は、江刺郡種山あたりの山村を舞台にしている『馬の頭巾』『種山ヶ原』から、『十月の末』『』『さいかち淵』『短い木ペン』などの村童スケッチを中心に組み込んだ、種山ものと呼ばれる一連の村童スケッチの集大成とも言えます。

広くとらえるなら、世界各国にある、いわゆる少年ものと同じにジャンル分けがされるでしょう。

創作過程での事情により、ある意味未完ですが、集大成だけに、優れた作品になっています。



生前未発表
初期形『風野又三郎』。大正13年2月12日に当時の花巻農学校生徒が賢治に頼まれ筆写。よって初稿はそれ以前。筆写稿に加筆して初期形となる。初期形は風の精の又三郎が村童に風の気象学を語る内容。教訓調
最終形『風の又三郎』は昭和6年から8年頃初期型を全面的に改変。さらに『種山ヶ原』『さいかち淵』を改作して組み入れ成立。しかし一部、登場人物名その他が未整理。佐藤一英編「児童文学」三号が発行されたならそこに発表の予定でしたが、雑誌は刊行されず



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『種山ヶ原』 宮沢賢治童話全集 9 より - 続、村童スケッチ
種山ヶ原というのは北上山地の真ん中の高原で、そこは東からの風と西からの風がぶつかるところで、すぐに雲、雨、雷、霧が起こります。人があまり通らないところで、主人公達二はそこで暮らしていました。

達二は夏休みが終わりに近づき、明後日から、二つの谷を超えたところにある、学校に通う予定です。宿題もすませたし、遊ぶにしても、もうやり尽くしてみんな飽きてしまい、家の前の檜に寄りかかって、夏休みで一番楽しかったことを思い浮かべていました。



すると達二は母親に、上の原で草を刈っているおじいさんと兄に、弁当を届けるように、ついでに牛も連れて行って、草を食べさせるようにいいつかりました。そして上の原では兄から離れるなと釘を刺されます。

上の原に着くと、どうしたことか牛が逃げ出します。達二は、背の高い草をかき分けて、それを追いますが、天候は悪くなり、その雲や霧のため道に迷ってしまいます。悪いことは続くものだと思いながら、いつしか草に倒れてしまいました。



達二は夢をみます。夢では、夏休みで一番楽しかったことの一つである剣舞、また九月の教室での情景が出てきたりします。

夢では、先生に宿題をしてきたかと問われますが、やってきたのは達治と友達の楢夫だけでした。一旦、目を覚ましますが、再び達二はうとうとしてしまいました。

すると、とある女の子が夢に登場し不思議なやり取りがなされます。また目覚めてはうとうとすると、今度は山男が夢に出てきて、ひと悶着おこります。さらに再び目が覚めると、逃げた牛はすぐそばにいました。



そこへ兄が、達二を探しに来てくれました。そして兄は、おじいさんが焚き火をしているところまで達二を連れて行きました。

天候は回復し、遥か北上の青い野原は、今泣き止んだようにまぶしく笑い、向こうの栗の木は青い後光を放ちました、と物語は結ばれます。





夏休み終わり頃の、主人公、達二の、生活と心情を描いた、村童スケッチ風の作品です。背景に山村の生活が色濃く描写されます。

働き者の兄をはじめとする家族、先生や友達とともにある村童の日常が、優しく恐ろしい自然を舞台に展開されます。

また、物語終盤の夢の描写が、とてもファンタジックです。

さらに、舞台、夢、楢夫の名など『さるのこしかけ』と共通です。



生前未発表
現存草稿の執筆は大正10年頃、内容的に帰郷後の作品と思われます。
初題は「霧穂ヶ原」と架空の地名になっています。手入れ時に変更。さらに手を加え『風の又三郎』の「九月四日、日曜」の部分に転用されます





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『税務署長の冒険』 宮沢賢治童話全集 9 より - 探偵ものへの興味、複雑な人間観
一、濁密(だくみつ)防止講演会

酒は人間エネルギーの根源です。大いに飲んでください。そして酒を作る際は濁密(密造酒であるにごり酒の製造)などせず、大仕掛けに設備を整えて、共同で正当な手段で作り税金を収めてほしい、と税務署長は講演しました。

税務署長の講演には、巧妙に罠が仕掛けられ、聴衆の顔色をうかがうためのものでした。しかし、村人はただ笑うばかり。税務署長は、ただ憎まれ口を叩いただけの講演になってしまったことに、しくじリの念をいだきます。



二、税務署長歓迎会

講演会の後、名誉村長の申し出で、税務署長は歓迎会に誘われました。税務署長は講演の失敗に気が引けましたが、ついていくことになりました。そこは立派な村会議員の家でした。

税務署長は弱気になっていたので、先ほどの講演の失礼を詫ますが、かえって国家に対する献身的な態度を持ち上げられる始末。歓迎会の座は盛り上がっていきます。

しかし税務署長は酔いはしましたが、決して自分の職務を忘れませんでした。すると宴の途中で出回り始めた酒の匂いが変わってきたことに気づきます。

これはおかしいと、にわかに勇気づけられた税務署長は、村会議員に言葉の鎌をかけました。村会議員は少し慌てて台所に引き下がります。そして、きょうはもうこれで失礼しようと、忍者のように税務署長は座を後にしました。



三、所長室の策戦

ハーナムキヤ(花巻?)に戻った署長は部下のデンドウイ、さらにはシラトリをユグチュユモト村に派遣し、密造酒の有無を探らせます。しかし手がかりはつかめませんでした。

しかしあれだけ密造酒を飲んでいた村人が、検挙が厳しくなって密造が減るならば、清酒の売れゆきが増えなければならない。現状を見るならば、まるで、皆、酒を飲まなくなったようです。

どうもおかしいと思った署長は、椎茸買いに変装して、自らが村に出向くことにしました。



四、署長の探偵

署長は、村の組合事務所に行くと、トケイ(東京?)から来たと、乾物商の名刺を差し出し、そこにひとりでいた若者を丸め込み、会話から手がかりをつかみます。そして、道で会った少年から、椎茸山とは違う山に会社があることをかぎつけます。

会社があるであろう山に近づくと、喧嘩をしても勝ち目のないような、ひとりのりっぱな男に咎められました。しかし署長は、椎茸山に行くところだといってごまかし、回り道をするふりをしてその山を登り、岩を切り崩して作ったらしい小屋を見つけます。

署長は小屋の様子を見ていると、先ほどのりっぱな男が別の男と出てきて、荷馬車に樽を積んで、それを上から木の枝をかけて隠し、樽をどこかへ向けて運び出しました。

小屋に誰もいなくなったのを確かめると、署長はどうにかして小屋に潜りこもうと入り口を探し、窓から小屋に侵入しました。

すると小屋の中は、酒造に必要なものが揃った工場でした。しかしまもなく工場関係者に署長は見つかり、縛り上げられてしまいます。彼らは社長と監査役を呼びました。

署長の尋問が始まります。あくまで署長はトケイの乾物屋だと言いはりました。組合に名刺も出してあるともっともらしいことをいうのです。

やがて社長と監査役が来てみると、どうもその声はどこかで聞き覚えのあるものでした。見るとなんと社長は名誉村長で監査役は村会議員でした。そう彼らは村ぐるみで、大掛かりな密造をしていたのです。



五、署長のかん禁

名誉村長は、かん禁した署長に、あなた方の取り締まりが厳しいので、つい会社組織にしてしまったと言い訳をし、なんとか示談を持ちかけます。しかし署長は応じません。

そこへ警察を連れてシラトリが乱入します。署長は救われ、社長以下は警察官に逮捕されました。

署長が自ら村に出向いてから、四日が経っていました。ちょっと木の芽が大きくなっています。春の空気にいい匂いだという署長に、縄を掛けられて並んで歩く名誉村長は、いい匂いですなと返しました、と物語は結ばれます。



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ぶどう水』や『毒もみのすきな署長さん』などとともに郷土生活の一端に目を向けた作品です。

また賢治の作品には、よく役人が登場しますが、『ふたりの役人』『ねこの事務所』などとは違った目で、否定的でもなく肯定的でもなく役人を見ています。そのへんは一般的な童話と違って、物語に厚みがあります。悪を行う村民たちも一概に否定されてはいません。

これは賢治が、仏教思想でつちかった、いつも善悪正邪のどちらかを、肯定したり否定したりすることをしない態度に通じています。安直な結論には導かれません。賢治の思考の奥深さがそのまま表現されています。

作品的には、賢治の探偵ものへの興味が感じとれるものになっています。これらの興味が、よりいっそう、複雑な筋書きを導いたとも言えます。物語末尾の名誉村長の言葉は、賢治の人間観を端的に示しています。



生前未発表
大正12年頃の下書き
原稿冒頭数枚欠落



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『北守将軍と三人兄弟の医者』 宮沢賢治童話全集 9 より - 賢治が物語る理想的な人の生き死に
一、三人兄弟の医者

むかしラユーという首都に、兄弟三人の医者がいました。一番上のリンパーは普通の人の医者でした。その弟のリンプーは馬や羊の医者でした。一番末のリンボーは草だの木だのの医者でした。

三人は医術もよくでき、仁心もあったので名医であったのですが、まだ良い機会に恵まれず、位も名声もありませんでした。



二、北守将軍ソンバーユー

ところで、ある日のこと、塞外の砂漠で転戦していた、北守(ほくしゅ)将軍ソンバーユーと九万の兵隊たちが、敵が脚気で全滅したため、三十年ぶりに凱旋します。民衆は涙を流してこれを迎えました。

ところがソン将軍は、馬から下りようもののできません。三十年もの間、一度も馬からおりなかったので、とうとう将軍と馬は一体化してしまったのです。

また草木も生えない砂漠にいたので、ある植物が将軍を見つけて根を張ったのでしょう、灰色をした不思議な毛が、顔から手から一面に生えていました。

ソン将軍は仕方なく医者によってから王様に参内することにしました。馬を走らせ医者を探すと、ひとりの大工がリンパー先生を紹介します。



三、リンパー先生
四、馬医リンプー先生
五、リンポー先生

兄弟三人の医者のおかげで、将軍は無事馬から降りることができ、体に生えた灰色の毛も、綺麗サッパリ落とすことができました。



六、北守将軍仙人となる

さっぱりとした将軍を迎え、王はたいへん喜び、将軍に大将の大将になるように命じます。ところが将軍は辞退するので、王様はその代わりに五人の大将をあげよと再び命じました。

すると将軍は、五人ではなく四人の大将の名をあげ、あとひとりの代わりに、自分を治してくれた三人兄弟の医者の名をあげました。王はそれを許しました。

将軍は故郷に戻り隠遁します。粟などを作っていましたが、やがてそれさえ食べなくなって、水ばかり飲んでいました。そのうちに、水さえ飲まなくなり、いつしか姿を消します。人々は将軍が仙人になったと思い、小さなお堂をこしらえて祀りました。

けれども国主となったリンパー先生は、会う人ごとに、医者の立場からこう言いました。将軍の体を紛れもなく人間のもので、きっとどこかの林にお骨があるに違いない。なるほどそうかも知れない、と思った人もたくさんあった、と物語は結ばれます。





順に、散文形、韻文形、散文形と形を変えて発表形に至っています。韻文形では面白いお話を作ることが目的であったようですが、発表形に至ると、一人の人間の生き方を描くことを目的とします。この間およそ十年の歳月が流れています。

タイトルから北守将軍と三人の兄弟の医者が主要登場人物なのは分かりますが、読み終わってみると、圧倒的に、ひとりの将軍の一生になぞらえた、理想的な人間の、生きて消え去るさまが、クローズアップされています。よって、物語ではユーモアに富んだ三人の医者の活躍が楽しく描写されますが、記事冒頭でのあらすじでは端折りました。



初出、佐藤一英編『児童文学』第一冊 昭和6年7月
発表形の清書原稿は存在せず
下書稿とその創作メモと考えられるものが現存手帳の一冊に存在





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