子どもの本を読む試み いきがぽーんとさけた
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日本の昔話 5 より 『けちくらべ』競っても仕方のないもの
むかし、あるところに、ふたりのけちんぼの男がいました。ひとりは太郎どん、ひとりは次郎どんといいました。ふたりは隣り合わせに住んでいました。



ある日ふたりはどちらがけちんぼか、けちくらべをしてみようということになりました。

まず次郎どんが、「おまえの飯のおかずは何だ」と聞きました。すると太郎どんは「おれはいつも梅干しで飯を食う」といいました。すると次郎どんはすかさず「俺は醤油で飯を食う」といいました。

太郎どんは「梅干しをじっと見て口の中を酸っぱくして、三日飯を食い、それから梅干を少しずつかじり、七日飯を食うのだ」と自慢しました。

ところが次郎どんは「おれは醤油を箸の先につけてそれをなめて飯を食い、なめては飯を食うので、よだれが醤油に交じって減らないので、いつまでも食べられる」といいました。

このけちくらべは次郎どんの勝ちでした。



太郎どんは家に帰ると悔しくて子どもに「次郎どんに金づちを借りてこい」といいつけました。次郎どんは金づちの頭が減ってしまうからと貸しませんでした。

太郎どんは隣に聞こえる大きな声で「金づちをかさないとは次郎どんのけちんぼめ、それならうちの金づちを出して使うか」といいました。家にあるのにわざわざ人のうちに借りに来るとは何てけちだということになり、今度は太郎どんの勝ちです。



しばらくすると今度は次郎どんが太郎どんの家にきて「おれのうちにきて火にあたりに来ないか、とってもあたたまるぞ」といって帰りました。

太郎どんが次郎どんの家に行ってみると、どこにも火の気がありません。それどころか家の中は暗く、次郎どんも出てきませんでした。太郎どんは次郎どんに声を掛けました。

すると奥の部屋から「太郎どん太郎どん、おれの火はこの部屋にある。入ってこい」というではないですか。太郎どんは部屋に入ってみると、次郎どんは汗をかいてふうふう言っています。

太郎どんは「次郎どん何がそんなにあったかいんだ」と尋ねました。すると次郎どんは「おれの上を見てみろ」といいました。太郎どんが次郎どんの頭の上を見てみると、大きな石が腐りかかった縄にぶら下げてありました。

次郎どんは「あの石が落ちればおれはぺしゃんこだ。そう思うと気がはって、体があたたかくなるのだ。これが俺の火さ」といいました。太郎どんは次郎どんのけちぶりに負けました。



それから二、三日して、次郎どんの家が火事になりました。太郎どんは火事場に飛んで行って、「次郎どん飯を炊くから火をちょっとくれ」といいました。

次郎どんはかんかんになって「これはおれの火事だ。誰にも火をくれてやるものか」と怒りました。

すると負けずに太郎どんも怒って、「おまえくらいけちな奴はいない。そんならおれのうちが火事になったって火の粉もやらないから見てろ」というなり自分の家に火をつけました。

これでけちくらべも終わりになってしまったということです、と物語は結ばれます。



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けちくらべとはナンセンスですね。笑い話です。けちは日本の昔話では、ある意味悪徳です。悪徳を競うとはおかしな話ですね。そんなふたりは自然と不幸に見舞われます。



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18:25 : 日本の昔話 5 冬 : comments(0) : trackbacks(0) : かがりん :
日本の昔話 5 より 『天狗の太郎坊』 日本昔話をにぎわす異界の両義的な存在
短いお話です。



むかし、あるところに、太郎という男の子がいました。太郎の下にも子ができたので、お父とお母は、太郎にあかん坊の子守をさせていました。



ある日いつものように、太郎に子守をさせていると、太郎はあかんぼうをおぶったまま、するするとお堂の杉の木に登っていきました。

「落ちなければいいが」と周りではらはらしてみていると、太郎は赤ん坊をおぶったまま、くるりとさかさまになって、杉の木からすっすっすっとおりくるので、お父、お母は、すっかり胆をつぶしてしまいました。

この太郎はどういうわけか、かしの実が好きで、あんなかたい実を、飴だまのようにしゃぶっては、かんで吐き出していました。



そのうち太郎は十五歳になりました。すると、お父とお母の前に手をついて、改まった声でいいました。

「お父、お母、いままでえらいお世話になったが、もう山に帰らなければならない。われは、剣山(つるぎやま)の天狗じゃ」いうが早いか太郎は、お堂の杉の木めがけてぱっと飛んでいきました。太郎はそのまま山へこもってしまったようです。

村では、お父を先頭に村中の人たちが、鐘をかんかん、太鼓をどんどこ鳴らしながら、太郎を探しにいきました。太郎は池のほとりにいましたが「我は天狗の太郎坊じゃ。もう来るな来るな」といいました。みんなは仕方なく、あきらめて帰りました。



それから太郎は毎年いっぺん大みそかの日だけ、お父とお母の家に戻りました。そして床の間に備えたおせち料理を食べていきました。

太郎が、かんで吐き出した、かしの実からは目が出て、今ではお堂の周りは、かしの森になっているそうです、と物語は結ばれます。



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太郎坊とはウィキによると、全国代表四十八天狗の一とあります。彼に関する伝説として読めばいいのでしょう。

天狗とはこうした日本の伝説上の生き物ですが、神とされたり、妖怪とされたり、両義的な存在のようです。

日本の昔話にでてくる、こうした異界の存在は、ただ人に害悪をもたらすばかりではなく、善をもたらす不思議な存在としても描かれることが多く、たいへん興味深いです。この物語では、太郎坊を、かしの森を司る、神さまのような存在としているようです。



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